カスタマーサポートの価値は顧客満足度の向上 ~ 年収1000万円を目指すCS担当者に求められる仕事とは?~

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「会社の人格」といっても過言ではない現在のCS

9月21日、ヌーラボおよびBASEが主催する「CS Night – ネット企業のカスタマーサポート戦略を考えよう!」というイベントが開催されました。カスタマーサポート(CS)は電話やメール、ウェブサイト、SNSなどを通じて、企業とお客様をつなぐ窓口であり、「会社の人格」といっても過言ではないほど重要な位置づけとなっています。

今回のイベントでは、BASE、ヌーラボ、トレタ、さくらインターネットのCS担当者が登壇し、各社のCS活動、現状の課題とその解決策、そして今後の目標や推進する取り組みなどを事例も交えながら紹介しました。このイベントをレポートします。

OKRで「BASEのCSが良いから使っています!」を目指す

まず登場したのは、BASEのCOOとして、ファンを増やすために渋谷で日々奮闘している進浩人さんです。進さんは「CSチームの目標設定 ~OKR~」をテーマに、「お母さんでも使える」をコンセプトに開発された無料かつ簡単にネットショップを開業できるサービス「BASE」とそのCS活動について紹介しました。

BASE株式会社 進浩人さん

BASEは、20万を超える店舗がスマートフォン上に商品を出店されている国内最大級のショッピングモールアプリです。BASEは「OKR(Objective&Key Result:目標と主要な結果)」という手法に基づいて、お店をつくる人とモノを買う人の両方からの問い合わせに対応するCS活動に取り組んでいます。

OKRに基づいて目標の達成や組織内のコミュニケーションの効率化を推進しています。進さんは「CSチームのObjectiveは“すべてのお客様にBASEのファンになってもらい、永続的にその関係を維持するサービスを提供する”ことです」と話しています。

そのために、「問い合わせメールを○時間以内に返信」「当日に割り振られた問い合わせは当日中に返信。調査が必要なものは関係各所に迅速に連絡」「問い合わせ発生率を○%以内に」という目標を立て、この目標に対する進捗情報などをCSチームの終礼で発表したり、定例の会議で全社に共有したりしています。

進さんは「OKRを導入した結果として、同じ方向を見るようになってきました。また、取捨選択がしやすい、数値は客観的で共有しやすい、Objectiveに基づく会話が生まれるといった効果がありました。今後は目標の立て方や粒度を見直し、満足度を指標にするかも考慮しながら、“BASEのCSが良いから使っています!”という利用者をどんどん増やしていきたい」と話しています。

「新婚旅行で1週間休める」CSをBacklogで実現

次に登場したのは、ヌーラボのサポートエンジニアで、クラウドサービスとして提供されるプロジェクト管理ツール「Backlog」に関する社内外のテクニカルな問い合わせに対応している漢円教さんです。漢さんは「より良いサポートのためのチームづくり」をテーマに、ワークフローを中心としたCSの取り組みを紹介しました。

株式会社ヌーラボ 漢円教さん

クラウドサービスとして提供されるプロジェクト管理ツール「Backlog」

クラウドサービスとして提供されるプロジェクト管理ツール「Backlog」

現在の問い合わせ対応における問題は、ほかの人が何をしているのか分からない、問い合わせ完了の定義が明確でない、対応方針が決まらない、などです。特に契約や技術的な問題など、対応する人により、その対応精度にバラツキが出ることが課題でした。そこで、「ワークフローを作ることにしました」と漢さんは話します。

問い合わせの粒度をそろえるよりも、全体的な作業の流れを明確にするワークフローを作る方が効果的

問い合わせの粒度をそろえるよりも、全体的な作業の流れを明確にするワークフローを作る方が効果的

「問い合わせを1つずつ詳しく調べ、問い合わせの粒度をそろえるよりも、全体的な作業の流れを明確にするワークフローを作る方が効果的だと考えました。そこで、まずは問い合わせを作業単位に書き出し(タスク化)、自発的にタスクの担当者を決めました。このときBacklogを利用しました」

Backlogを導入することが目的ではなく、Backlogを使って、いかに問題を解決するかを考えることが最大の目的です。まずはBacklogにすべてのタスクを自動登録する仕組みを構築し、大まかなワークフローを決め、チームで計画、振り返り、修正を何度も繰り返しました。ワークフローの基本は「ToDo」「Doing」「Done」の3つです。

ワークフローを作ったことで、問題に対して未然に対策ができる、流れを意識できる、問題に気づける、そして改善できます。これにより、チームで協力してタスクをさばくことができ、「自分にしかできない仕事」をなくすことができます。漢さんは「これで“新婚旅行で1週間、休みをもらってもいいですか?”と言えます(笑)」と話しています。

トレタにとって「先回りのサポート」は当たり前

3社目に登場したのは、トレタのサポートグループ CSマネージャー、関根響さんです。関根さんは「お客様にはもっと近づける 先回りするCSの話」をテーマに、大手オークションサイト、SNSサービス、ECサイト構築ASP、CMSツールなどのネット系CS業務を約10年経験したことから得たノウハウを紹介しました。

株式会社トレタ 関根響さん

トレタは紙ベースだった飲食店の予約管理をiPadで可能にするサービスです。関根さんは「トレタをリリースすると、導入検討、契約内容、料金、操作、不具合、要望、クレームなど、さまざまなボール(問い合わせ)が飛んできました。これまではキャッチするだけで精いっぱいでした。この課題を解決するためにCSを立ち上げました」と話します。

CSの立ち上げにあたり、お客様とCSの双方にかかる時間(問い合わせ)を減らすことが重要だと考えました。そのための施策として、CSと開発の連携を強化。不具合や対応漏れなどの報告や対応の迅速化を実現したことで、2016年に2回、トレタのメジャーアップデートを行っていますが、使い方に対する問い合わせはほぼゼロでした。

また改善フローを確立することで、問い合わせを減少させ、顧客満足度の向上を目指しています。さらにアクティブサポートにより、アプリのクラッシュログをSlackでモニタリングして、不具合が発生した店舗特定と原因調査を行ったり、利用開始から一定のタイミングでフォローコールをしたり、先回りした情報の発信や報告を実現しています。

関根さんは「取り組みの効果として、問い合わせが減少しています。一般的には契約数が増えると問い合わせも増えますが、トレタは契約数が増加しているにもかかわらず、問い合わせは減少しています。先回りのサポートという話をしましたが、トレタにとっては当たり前のサポートなのです」と話しています。

CS業界全体の存在価値の向上に取り組む

最後に登場したのは、さくらインターネット カスタマーリレーション部部長の榎本秀行さんです。榎本さんは「カスタマーサポートだからこそ提供できる価値とは?」をテーマに、本人いわく「CSの“ど素人”」が感じたCSの現場の違和感と、それを払拭するための取り組みについて紹介しました。

さくらインターネット 榎本秀行さん

実は法人利用も多いさくらインターネットのサービス

実は法人利用も多いさくらインターネットのサービス

さくらインターネットは、インターネットを介して、ITインフラをサービスとして提供しています。現在、法人ユーザーと個人ユーザーを合わせて44万2000ユーザーがサービスを利用しています。1日平均で電話700件、メール200件の問い合わせに、54名のCS担当者が大阪本社でインハウスのサポートを提供しています。

「企業萌えキャラグランプリ2016」にエントリーしているCSサポートセンター公式キャラの「佐倉まりな」もお手伝い

「企業萌えキャラグランプリ2016(https://moechar.jp/c_biz.php)」にエントリーしているCSサポートセンター公式キャラの「佐倉まりな」もお手伝い

榎本さんは「CSに異動する前後に気になったのが“CS職種の平均年収はどれくらい?”ということでした。調べてみると200万円台後半から300万円台前半で全職種の平均からすると低いと感じ、さらに“そもそもCS職種で管理職ではない年収1000万円以上のプレイヤーはいるのか?”が気になりました」と話します。

CS業界は効率化やコスト削減が行き過ぎて低額化傾向になり始めているのではないかとの思いから、榎本さんは「逆にCS職種のプレイヤーが年収1000万円以上をもらうとした場合、その人はどのような仕事をして、どのような価値を生み出しているべきかを考えてみました」と話します。

CS担当者が年収1000万円以上をもらう場合、どのような仕事をして、どのような価値を生み出しているべきでしょうか?

CS担当者が年収1000万円以上をもらう場合、どのような仕事をして、どのような価値を生み出しているべきでしょうか?

「CSの生み出す価値を考えた結果、お客様に対してという視点では“お客様ご自身の成長”と“感動体験の伝播”という2つの結論に達しました。お客様が“満足”と言っても、お客様の成長や感動体験の伝播につながらなければ本当の満足とは言えません」と話します。
次に自社内に対してという視点では「過去・現在・未来の視点で社内の“Change”の起点となる」という結論に達しました。

この取り組みの1つとして、「Change発表会」を実施しています。Change発表会では、サービスに関する改善要望からヒューマンスキルに関する意識改革、就労環境に関する改善、直接的にはCSに関係のない「コミックマーケットにブースを出展したい」というものまで、さまざまな「やってみたいChange」が集まりました。

すでに「やってみたいChange」で実現したサービス改善もあります。来年はコミケ出展があるかも……(笑)

すでに「やってみたいChange」で実現したサービス改善もあります。来年はコミケ出展があるかも……(笑)

榎本さんは「今後は自社だけでなく、CS業界全体のChange(存在価値の向上)にも、微力ながら取り組んでいきたいと思っています」と話しています。

登壇者のスライドをいくつかご紹介します。

よりよいサポートのためのチームづくり(ヌーラボ 漢円教さん)

カスタマーサポートだから提供できる価値とは? (さくらインターネット 榎本秀行さん)