去る5月10日(水)~12日(金)、幕張メッセにおいて開催されたクラウドコンピューティングEXPO【春】。もちろんさくらインターネットも入口近くにブースを構え、皆さんをお迎えさせていただきました。

会期中は常設展示としてさくらインターネットの誇る最新サービス群を紹介させていただいたほか、ここだけの限定イベントとして、さくらインターネットをご利用いただいている、各界トップランナーの皆さんを招いたトピックセッション&スペシャルセッションを実施。

さくらインターネットが20周年記念スローガンとして掲げている「『やりたいこと』を『できる』に変える」をメインテーマに、要注目の先進企業がどのようにさくらインターネットのサービスを活用されているかを語っていただきました。

ここではそうしたセッションの中から、2日目と3日目に行われたセッションのようすをご紹介したいと思います。

まずは、2日目のトピックセッション&スペシャルセッションのようすから!

トピックセッション:株式会社白組
IT式年遷宮はもう僕らの仕事じゃない

株式会社白組 システム部部長・鈴木勝さん

映画『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)や、『STAND BY ME ドラえもん』(2014年)など、暖かみのある映像で多くのファンを虜にした映像制作集団・株式会社白組。実はその創業は1970年代と古く、3DCGに行き着く以前から、さまざまな先端技術で魅力的な映像を作りあげてきました。

そんな同社の目下の悩みが3DCG/VFX制作において必須となるハードウェアの管理と投資。時代に合わせて社内最適化を繰り返してきたものの、膨れあがっていくデータサイズにリソースが追いつかず、近年は社内がほとんどデータセンターのように。「一般的なビルでできる限界に到達してしまいました。これはもう僕らの仕事ではないな、と(笑)」(鈴木さん)。

そこで白組は現在、以下の3つを「今後の課題」と定義。

  • 社内と社外のハイブリッド化
  • GPUパワーの活用
  • IT式年遷宮を減らす

これによって、“コスト”の低減と、何より“質”の向上を目指すと宣言します。

「年々、コンテンツの数が増えてきていますが、それを観る人の時間は変わっていません。そこで選んでもらうためにはやはり何より“質”が大事。“コスト”の低減も大切なのですが、白組が何より重視しているのは“質”なんですよ」(鈴木さん)

【セッションハイライト!!】

--3つの「今後の課題」について、もう少し詳しく教えてください。まずは「社内や社外のハイブリッド化」について。これは具体的にどういうことをやっているんでしょう。

鈴木さん:例えば4K映像の制作をクラウドだけでやろうとすると、今度は通信がパンクしてしまいます。もちろん、通信のインフラ部分を物理的に拡げていくということはやっていますが、現時点ではある部分はデータセンターに、ある部分は社内にという棲み分けが必要。また、データの流し方、どのようにデータセンターとやり取りすると効率的なのかについてもさくらインターネットさんと相談しながら模索しています。

--GPUパワーの活用について、これまではGPUの搭載メモリのサイズがネックになっていたということですが、それが解決した今、これからは加速度的に利用が進んでいくことになるのでしょうか?

鈴木さん:実際に試したことのある方ならわかっていただけると思うのですが、複数枚のGPUを同時稼働させると、発熱がとんでもないことになるんです。それこそマシンの上で目玉焼きが焼けてしまうんじゃないかってくらい(苦笑)。さすがにこれはもう、我々だけの力ではどうにもならない。これもまた、社外にお願いしたい部分の1つです。

--IT式年遷宮も大きな課題ですよね。でも、さくらインターネットはひたすら式年遷宮していくのが仕事なんですよ。

鈴木さん:何度もさくらインターネットのデータセンターに見学に行っているんですが、そのたびに工夫がすごいなと感心しています。データセンターというと、言わば“設備のコピペ”で巨大化していく印象があるんですが、さくらインターネットのデータセンターは常に「工夫」や「改善」が盛りこまれていて、どんどん進化している。いつも、すごくカッコイイなって感心しています。

--データセンターのスタッフが聞いたら喜びます!

鈴木さん:我々がさくらインターネットと一緒にやっていこうと思える理由の1つです。私たちは日々チャレンジしている会社が好きなんです。映像の仕事も、毎回同じものを提供していたら飽きられてしまいますから「チャレンジ」が大切。挑戦心のあるパートナーを増やしていって日本を盛り上げていきたいという気持ちがあるんです。

トピックセッション:株式会社ABEJA
AIを活用してデータから新たな価値を生み出す

株式会社ABEJA プラットフォーム事業部 開発チームリードエンジニア・河崎敏弥さん

株式会社ABEJAは2012年の創業当初からディープラーニングに注目し、研究開発・事業開発を行ってきたITスタートアップ。現在は、人工知能を活用した「ABEJA Platform」というPaaS技術を開発しており、それを小売・流通に特化させたSaaS事業「ABEJA Platform for Retail」を国内200店舗以上(2016年10月末時点)に展開するなどしています。

「生活空間、商空間の至る所に設置されたカメラや各種センサーなどのIoTデバイスが日々生み出し続けているデータを、効果的に蓄積・活用していくことが、ABEJAの狙い。『ABEJA Platform』では、人工知能を活用することで、ため込んだデータに新しい価値を生み出そうとしているんです」(河崎さん)

たとえば「ABEJA Platform for Retail」では、これまでPOSなどで限定的にしか取得できなかった顧客情報を、店内カメラなどを使ってより細かく分析可能に。顧客属性の分析から、滞在時間、その動線などを可視化することができます(さくらインターネットはそのストレージやデータの解析に活用されています)。

そして、昨年末にはこのプラットフォームをパートナー向けに開放する「ABEJA Platform Open」も開始。製造、エネルギー業界なども巻き込み、さらなる可能性の模索を始めているそうです。

【セッションハイライト!!】

--ABEJAさんとさくらインターネットのお付き合いは、約3年前にスタートしましたが、数あるクラウドサービスの中から、さくらインターネットを選ばれた理由を教えていただけますか?

河崎さん:おっしゃる通り、クラウドサービス導入時は多くのサービスを検討しています。その中で、さくらインターネットのサーバーがCPUコアあたりの処理性能が一番高かったんです。最大で2倍くらい差が付くケースもありましたね。そのパフォーマンスの高さがさくらインターネットを選んだ理由です。

また、その上で、導入に当たってのサポートが手篤かったことも好印象でした。当初は我々もよく分かっていないところがあったのですが、試行錯誤の段階からお付き合いいただき、本当に助かりました。その節は大変お世話になりました。

--当時は月次ミーティングとかもしてましたよね。今でも当時の皆さんの前向きな姿勢をよく覚えていますよ。資本提携してくれませんかと言われた時には驚きましたが(編集部注:2014年7月に資本・業務提携契約を締結)、新入社員にはそんなABEJAさんのアグレッシブな姿勢を見ならえなんて言っています(笑)。

河崎さん:その後、事業が大きくなっていく中でも、システムの増強や、ボリュームディスカウントの提案をしていただいたりしましたよね。親身になってくれる会社だというイメージがとても強いです。

--ABEJAさんの“強み”を教えてください。

河崎さん:End to Endで、データの収集から活用まで一貫して自社で行えることが最大の強みだと思っています。これまで多くの事例を経て積み上げてきたノウハウがあるので、課題がどこにあるのかがあらかじめ特定でき、スピーディにAI活用を始めていただけます。お客さまは何をやりたいのかを考えるだけで良いんです。

--AI活用に興味はあるんだけど、自社の業務のどこに使えるのか分からないという、ぼんやりとした依頼でも大丈夫ですか?

河崎さん:はい。そういったケースでも過去のノウハウからさまざまなご提案ができると思っています。そういった企業様からのご連絡もお待ちしております。

スペシャルセッション:株式会社アストロ数理ホールディングス
最先端のコンピューティング技術を手軽に使えるサービスとして提供する

株式会社アストロ数理ホールディングス 代表取締役社長・日下康幸さん(下写真右)/さくらインターネット株式会社 フェロー・小笠原治さん(下写真左)

「アストロラボと数理技研という会社が一緒になったので、こんな仰々しい名前になりました(笑)」(日下さん)と言うアストロ数理ホールディングス(2015年10月に企画のアストロラボ株式会社、開発の株式会社数理技研、運用のINDEX株式会社を統合するかたちで誕生)。200人を越えるメンバーによる、企画から開発、保守、運用までの一気通貫体制で、多くの大規模業務系システムを展開してきました。

そんな同社とさくらインターネットが、この4月にリリースしたのが「さくらのセールスアナリシス powered by アストロ数理ホールディングス」。これは、アストロ数理ホールディングスが提供している超高速な分析ツール「AstroBlaster for Sales Analysis」を、小売店向けの売上分析に特化させ、さくらのクラウド上で動作するようにしたSaaS版サービスです。

「1970年代のハレー彗星の軌道計算から始まり、その後、金融分析や、自動車の衝突シミュレーション、工場ラインのパフォーマンス検証など、40年以上に渡ってひたすら、高速度な計算を追求してきた数理技研のノウハウをつぎ込んだ、さくらインターネットさん流に言うと“高火力”なBIサービスです」(日下さん)

「さくらインターネットのアカウントを持っている方なら、コンパネからワンクリックでデプロイでき、約5分で使用可能に。そこに売上情報を流し込むだけで、超高速に売上分析ができるようになります。利用料金は1000万レコードまでで月額2万円。これは一般的な小売店で言うと約10店舗分の年間売上件数くらい。最大、1億レコード(月額10万円)まで対応可能です」(小笠原さん)

なお、日下さん曰く、1000万レコードのデータを分析するのにかかる時間は、約0.1秒。この圧倒的な“高火力”によって、経営チームの働き方が劇的に変わると二人は言います。これまで月曜日の会議にレポートを提出するためには日曜の夜から分析を始めなければ間に合わなかったのが、月曜の朝から始めても余裕で間に合う「時短」的な側面はもちろん、サッと結果が表示されることから、これまでは試さなかったような分析を行うことで、新たな「気付き」に到達できるメリットもあるのだとか。

会場では実際に「さくらのセールスアナリシス powered by アストロ数理ホールディングス」を動かしているシーンも披露。大量のデータを一瞬で処理してしまうようすを観た聴衆からは驚きの声が上がっていました。

【セッションハイライト!!】

小笠原さん:アストロ数理ホールディングスさんが面白いのは、数理技研時代から40年以上かけたデータベースをとても綺麗に作りあげているということ。でも、それだけの期間をかけているということは、もう作られている方はかなりのお年になっていますよね。

日下さん:65歳くらいのエンジニアも在席していますよ(笑)。

小笠原さん:その世代の方が最先端で活躍できているというのは本当にすごいことです!

日下さん:コンピューターの世界って変化が激しいとよく言われますが、実はコアな部分ってあんまり変わっていないんです。そうした基礎のコンピューターサイエンス的な要素をきちんと押さえているのが弊社の特長。実は日本のエンジニアって、そういうところを避けてしまいがちなんですよね。

小笠原さん:すごく分かります。だからこそ、その部分をクラウド化して提供していくということを一緒にやりたいなと思ったんです。

日下さん:難しいことは僕らが隠してしまって、簡単に使えるようにしたいですよね。

小笠原さん:サーバーがオンプレからレンタルサーバーになり、やがて仮想化されて、いまやっと普及期に到達したよう、サービスもそんな風に提供してきたいと考えています。

日下さん:今回は最初ということで、まずBIツールを提供させていただきましたが、今後はそれを情報の見える化に活用したり、在庫管理や人材管理など、さまざまな方面に拡げていきたいですね。

そして、ここからは、3日目のトピックセッション&スペシャルセッションです!

トピックセッション:株式会社Preferred Networks
深層学習を始めるために必要なこと

株式会社Preferred Networks サポートエンジニア・坂田雅雄さん

株式会社Preferred Networksは、機械学習・ディープラーニングのエキスパート集団(約80名の社員のほとんどが研究者、エンジニア)。「最先端の技術を最短路で実用化する」ことを目標に掲げるベンチャー企業「Preferred Infrastructure」からスピンオフするかたちで生まれた機械学習・深層学習に特化した研究・開発企業です。さくらインターネットは2016年以降、同社に計算資源の提供を行なうかたちで交流を開始しています。

「現在は、深層学習技術をベースに、それをさらに分散協調的に活用していくことで新しいプラットフォームを生み出していこうとしています。より具体的には、流行りのIoTなども意識しつつ、交通システムや産業用ロボット、バイオヘルスケア分野などに進出しています」(坂田さん)

世界的にAIが盛り上がって行く中、Google、マイクロソフト、Facebookのようなビッグベンダーらと戦っていくため、Preferred Networksは、特にデバイス埋込型のAI分野に注力。車載カメラや産業用ロボットなど、クラウドに常時接続することが難しいデバイスでAIの力を活用すべく技術開発を行っているそうです。

また、オープンソースの国産深層学習フレームワーク「Chainer」の開発・公開でも有名。先日公開された追加パッケージ「Chainer MN(マルチノード)」では、膨大な計算を分散処理させることで、これまで20日以上かかっていた学習時間を、最短約4.4時間にまで短縮することができたそうです。また、最近では、イラスト着色AI「Paints Chainer」もSNSを中心に大いに話題となりました。

【セッションハイライト!!】

--最近、さくらインターネットには、AIのことはよく分からないけれど興味がある、ちょっと試してみたいという方からの問い合わせが増えています。ここではそれらについて、その第一人者であるPreferred Networksにお答えいただければと思います。まず最初の質問は、AIを始めるために、まず何が必要なのか。いかがでしょうか?

坂田さん:一言で言うのはとても難しいのですが、あえて1つ挙げるのであれば「人」ですね。機械学習を正しく使いこなすにはやっぱり知識と経験が必要なんです。弊社代表もそこを重視しており、優秀な人材の確保には積極的に取り組んでいます。

--なるほど。でも、全ての会社が御社のように優秀な人材を確保できるわけではありませんよね。そうした場合、外部にリソースを求めるのが正しいのでしょうか、それとも地道に社内で育成していくべきなのでしょうか?

坂田さん:時間的、資金的余裕があり、そういう素養のある人材を確保できているのなら時前で育成していくのも良いと思いますが、それが難しい、あるいは自分たちの強みはそこではないと考えているのであれば、ぜひ、Preferred Networksにお声がけください。

--自分たちで機械学習をやっていこうとした時、手元にワークステーションを用意してオンプレでやった方が良いのか、クラウドを活用した方が良いのか、どちらでしょうか?

坂田さん:弊社も当初は自前でやっていたのですが、リソースを拡大していく段階で必ず限界に到達してしまいます。これは我々の実体験なのですが、GPUの発熱や消費電力、設置スペースなどが「壁」として立ちはだかってくるんです。結果として、我々は現在、さくらインターネットを利用しています。

--数あるサービスの中から、Preferred Networksがさくらインターネットを選んだ理由を教えていただけますか?

坂田さん:大きく2つあります。1つが「さくらの専用サーバ 高火力シリーズ」の存在。さくらインターネットは、計算能力あたりのコストパフォーマンスが最も高いんです。また、占有型とスポット型、双方の利用スタイルに対応しているのもポイント。こうした小回りの効く国内ベンダーというと、もうさくらインターネットくらいしかないんですよね。これからも、その点を強化していっていただきたいですね。期待しています。

トピックセッション:プライム・ストラテジー株式会社
WordPressに関することなら何でもできる!

プライム・ストラテジー株式会社 経営企画部 マーケティング課 課長・楠木大三郎さん

現在、ニューヨーク、アジアを中心に、クラウドインテグレーション事業を推進しているプライム・ストラテジー株式会社。自他共に認めるWordPressのリーディングカンパニーとしてもその名を知られているほか、「WordPressの教科書」シリーズ(SBクリエイティブ刊)や「詳解 WordPress」(オライリー・ジャパン刊)など、国内で定番とされるWordPress解説書でも有名です。楠木さん曰く「WordPressに関することなら、どんなことでもできるという自負があります」。

そんな同社が誇る、超高速WordPress仮想マシン「KUSANAGI」は、世界最高速クラスを謳うWordPressの実行環境。同じサイズのインスタンスを立ち上げた場合、ノーマルなLAMP環境と比べて、約10~15倍もの高速化を実現していると言います。そして、これをさくらのクラウド上で動作させる「KUSANAGI for さくらのクラウド」も好評。直近では、株式会社不動産流通システムに導入され、そのレスポンスを劇的に改善し、同社が期内の目標としていた問い合わせ目標数(前年比200%増)をわずか1ヶ月で達成してしまうというミラクルを成し遂げました。

「不動産流通システム様のような情報サービスのほか、メディアサイトなど、レスポンスそのものが収益に大きな影響を及ぼすお客さまに、特に導入していただきたいと考えております」(楠木さん)

さらに、「KUSANAGI」はスピードアップ以外の面でも業務に貢献。WordPress導入・運用時に問題になりがちなセキュリティ性についても、独自の工夫や設定によってこれを大きく改善することに成功しました。また、その構造上、WordPressだけでなく、concrete5や、Drupal 8などといった最新CMSなどにも対応しています。

【セッションハイライト!!】

--不動産流通システム様の案件では、発注からわずか2週間で移行を完了させたとのこと。どうすればそんなことができるのでしょうか?

楠木さん:プライム・ストラテジーには、オライリーから本を出せるほど、WordPressに精通したエンジニアや、自らKUSANAGIを開発できるほどの力を持ったエンジニアが所属しています。そして、彼らが直接お客さまの元に赴き、間違いのないようにお客さまとしっかり話し合って、移行をスムーズに進めて行きます。

具体的には、お客さまが現在運用されているWordPressの環境を、弊社のテスト環境に再現し、まずはそこで問題を洗い出します。そしてそこからのチューニングも重要。単にKUSANAGIに移すだけで充分に速くなるのですが、そこからさらに高速化する手間も惜しみません。不動産流通システム様の案件ではそこまでやって約2週間でした。

--他にはどういった企業からの引き合いが多いのでしょうか?

楠木さん:最近はエンタープライズ企業のお客さまが増えています。世界の4分の1のサイトがWordPressで構築されていることもあって、導入を検討し始めたものの、その保守・運用をどうしたら良いのか悩まれているんですね。「KUSANAGI」であれば、セキュリティ対策もしっかりしていますから、そうしたお客さまにも満足していただけます。

--プライム・ストラテジーさんの、「KUSANAGI」の今後の展望についても教えてください。

楠木さん:まさに今、弊社代表がニューヨークに飛んでおりまして、海外での事業をこれまで以上に拡大していこうとしています。ですので、これから世界に飛び出していこうという国内企業のお力にもなれるのではないかと思っているんですよ。

もちろん「KUSANAGI」についてもさらに注力していくつもりです。現在、「KUSANAGI」はオープンソースのプロジェクトとして公開させていただいておりますが、これはまさにWordPressコミュニティへの貢献。今後も定期的なバージョンアップ、機能強化を検討していますので、ご期待ください。

また、さくらインターネットとの協力関係もさらに深めていきたいですね。さくらインターネットさんは今、「『やりたいこと』を『できる』に変える」というスローガンを掲げていますが、むしろ、さくらインターネットの『やりたいこと』を、我々が『できる』に変えていきたいなと思っています(笑)。

トピックセッション:株式会社ネットイン
今年で“2年目”のVRは、これからさらに加速していく

株式会社ネットイン 代表取締役・小玉明正さん

株式会社ネットインは、パノラマVR写真という新しいカルチャーに注目した企業。この技術を利用したアプリや業務システム開発から、独自のパノラマVR写真生成・配信ツール「PanoCreator」をオンラインで提供するなど、パノラマVR写真にまつわるさまざまなサービスを提供しています。

事業の主軸の1つである「PanoCreator」は、ユーザーが撮影した複数画像を画像処理(スティッチング)によって合成し、360度全方向を自在に表示できるパノラマVR写真を作成してくれるというクラウド型サービス。近年は、1度のシャッターでパノラマVR写真が撮影できるカメラも人気ですが、PanoCreatorでは、それよりも遙かに高画質な一眼レフ画質でパノラマVR写真を作れることが高く評価されています。

「パノラマVR写真を含めたVR技術は昨年が“元年”と言われていますが、実はすでにいろいろなところで使われています。身近なところでは、不動産賃貸や観光業などで活用され始めていますし、最近では報道でも活躍中です(下写真は朝日新聞DITIGALにおけるパノラマVR情報配信のようす)。ほか、工場の点検などにもVRを利用しようという動きが始まっているんですよ」(小玉さん)

【セッションハイライト!!】

--「PanoCreator」では、「さくらのクラウド」をご利用いただいていますが、さくらインターネットを選んでいただけた理由を教えていただけますか?

小玉さん:さくらインターネットに行き着くまでに、国内サービスを前提にさまざまなクラウドプラットフォームを試してみたのですが、中でも最も安定性とパワーのバランスで優れていたというのがさくらのクラウドでした。

また、これはしばらく使ってみてから分かったのですが、さくらインターネットはメンテナンスがとても少ないんです。他社サービスでは突然、真っ昼間に緊急メンテナンスが始まってしまうこともあったのですが、御社は、2012年に使い始めて以降、ほとんど障害らしい障害がありませんでした。どうしてそんなことができるのか教えてほしいくらいですよ(笑)。

--国内事業者にこだわられた理由についても教えてください。

小玉さん:そもそも会社として国内サービスを活用していこうというマインドがあったことと、サービスを提供しているお客さまの側から国内サーバーを利用するよう支持されていたことが理由ですね。別に海外サービスを拒絶しているわけではないのですが、政情の影響を受けかねないこともリスクだろう、と。

--「PanoCreator」には、生成したパノラマVR写真を配信する機能も搭載されています。そして、そこで我々のCDNサービス「コンテンツ配信サービス」をご利用いただいているとのことですね。

小玉さん:はい。「PanoCreator」など、我々のサービスはお客さまの利用の度合いが日によって大きく異なるケースが多いので、コストを削減するために導入させてもらいました。昨年スタートした、もう1つのCDNサービス「ウェブアクセラレータ」もスタートとほぼ同時に利用開始させていただいています。

先ほども触れたよう、VRは昨年に“元年”を迎え、今年さらに活用の場が増えていくと思っています。そうなったとき、我々のサービスを支えてくれる、強力なサーバーが必要です。実はそのあたり、具体的な部分はまだノーアイデアなので(笑)、ぜひ今後も相談にのってやってください。

スペシャルセッション:株式会社メルカリ
猛烈なトラフィックを高性能インフラでさばく

株式会社メルカリ プリンシパルエンジニア・長野雅広さん(下写真右)/さくらインターネット株式会社 副社長・舘野正明さん(下写真左)

今や、国内では知らない人はいないのではないかというほど認知されるようになった、日本最大級のスマホフリマサービス「メルカリ」。2013年2月の設立(アプリのローンチは同年7月)からわずか約4年で従業員数400名を越える規模にまで急成長した、超花形スタートアップです。現在はサービスエリアを北米、イギリス(今年3月サービスイン)にまで拡大しており、アプリダウンロード数は合計6500万本、出品されるアイテム数は100万件/日、取引金額は月間100億円以上にもなっているとのこと。その成長は今後も続くと予想されています。

ピークタイムには1分あたり1200アイテムもの出品があるというメルカリが必要としているのは、その大量のトランザクションを超高速にさばく高性能インフラ。実は、国内においては、そこにさくらインターネットの提供する「さくらの専用サーバ」サービスが利用されています。

「さくらの専用サーバ」は、今どきの言葉で言うと「ベアメタルクラウド」と呼ばれるもの。ただし、一般的なそれと異なり、サーバーの利用者が1人だけということではなく、ハードウェアレベルでのコントロール権限が与えられていることが特徴となっています(例えば、手元のローカルドライブをインターネット経由でマウントしたりといったことから、果ては電源を殺してしまったりといったことまで可能)。また、こうしたサービスでは注文から利用開始まで数日以上かかるのが普通ですが、「さくらの専用サーバ」はなんと最速で10分後の納品に対応。物理なのにアジリティがあることも評価されています。

「今、さくらインターネットが売り出し中の『高火力コンピューティング』も、実はこの『さくらの専用サーバ』上で構築されています。」(舘野さん)

「なお、メルカリは北米ではAWS(Amazon Web Service)を、イギリスではGCP(Google Cloud Platform)を利用しています。つまり、マルチクラウド&ハイブリッドという形で利用しているのですが、それらと比べても、『さくらの専用サーバ』はパフォーマンスが優れていると感じています。もちろん、クラウドにもサーバーの起動が速いなど大きなメリットがあるので、一長一短ではあるのですが」(長野さん)

ほか、インフラ以外の面でも、昨年末にリリースされた画像変換・配信サービス「imageFlux」をメルカリに提供。出品されたアイテムのオリジン画像データから、高速にサムネイル作成・配信可能にしたそうです。

【セッションハイライト!!】

舘野さん:長野さんは、社内で「SRE」というチームを率いているそうですが、これはいったいどういうものなのでしょうか?

長野さん:SRE(Site Reliability Engineering)とは、日本語に訳すと「サイト信頼エンジニアリング」の意味。元々は、GoogleのBen Treynor氏が提唱したもので、Googleのさまざまなサービスを全部横断して、ソフトウェアエンジニアリングの力でサイトの信頼性を担保しようという取り組みなんです。

その詳細については、オライリーから出ている「Google SRE」という書籍を読んでいただきたいのですが、そこで注目すべきなのが「エラーバジェット」という考え方。バグを解決するのがSREの使命ではあるのですが、それを完璧にやろうとするとサービスのリリースが遅れて、機会を逃してしまいます。そこで、GoogleのSREでは、これくらいのエラーは許容しましょうと定めて(障害が発生するたびに「エラーバジェット」のポイントが減っていき、ゼロになったらデプロイを停止する)、安定性と開発速度を両立させることに成功したのです。

舘野さん:それをメルカリにも採り入れたということなんですね?

長野さん:2015年11月に「何時でも、快適に、安全に運用できるサービスを実現すること」を目標に、それまでインフラチームと呼ばれていた部隊をSREチームに名称変更しました。そもそも6人のチームメンバーの専門分野が異なっていて「インフラチーム」という言葉で括りにくかったことも理由の一つです。そして、その上で、何よりそのサービス指向の名称が気に入ってしまったのが名称変更の最大の理由です(笑)。

舘野さん:この話をさくらインターネットのインフラ担当にしたところ、「エラーバジェット」という考え方がかなり響いたようです。運用の品質を妥当なKPIで確保できるのではないかとチーム内でも話題になり始めています。ぜひ、我々もやってみたいですね。