日本のプログラミング教育はもう始まっている!

2020年以降に施行される小学校でのプログラミング教育の必修化。「プログラム」という教科ができるわけではなく(算数や社会などの既存学科内に組み込まれる見込み)、詳細な学習内容が決定しているわけでもありませんが、社会の総意としてプログラミング教育を推進していく姿勢が明示されたことには大きなインパクトがありました。

しかし、そうした流れは何も「これから」始まるわけではありません。日本各地では、すでに有志によるプログラミング教育活動が積極的に推進されているのです。その代表例と言えるのが、各地でプログラミング教室を実施しているプログラミングクラブを束ねる「PCN(プログラミング クラブ ネットワーク)」や、さくらインターネットら、複数のIT企業が集まって主催する「KidsVenture」などといった団体。それぞれ大規模ではないものの、精力的な活動を行っています。

そして去る5月26日、福井県は鯖江市において、IoT時代を見据えたプログラミングカリキュラム開発を目的とした「PCN KidsVenture共同開催企画 IoTハッカソン」が行われました。ここでは、そのようすを密着レポートいたします。

今回の重要テーマは「IoT」

今回のハッカソンは、現在のPCNおよびKidsVentureに存在しない(そもそも世の中にまだ存在しない?)、IoT教育のカリキュラムを、2つの団体(正確には団体運営に参加・協力している企業)に所属する講師・エンジニアで作ってしまおうというもの。

なお、今回のハッカソンでは、自由な発想でカリキュラムを考えて欲しいとしつつも、以下の3つを最低限のレギュレーションとして設定しています。

【1】小型コンピューター「IchigoJam」と、さくらインターネットのIoTプラットフォーム「sakura.io」を使うこと。
【2】4時間程度のワークショップに適した内容であること。
【3】プログラムは子供が打ち込めるサイズであること。

最大のポイントは【1】のハードウェアレギュレーションにあると言えるでしょう。

「IchigoJam(イチゴジャム)」は、株式会社jig.jpが開発・販売している「こどもパソコン」。1500円と安価に購入でき、分かりやすいBASICプログラミング対応なので、プログラミング経験のない子供でも、気軽に始めることができます。

参考:こどもパソコン IchigoJam

「sakura.io」は、さくナレでも何度か紹介してきた「さくらのIoT Platform」のこと。これまではβ版として展開してきましたが、2017年4月から、「sakura.io」の名称で正式にサービス展開を開始することとなりました。IoTをより手軽なものとしてくれる「sakura.io」は、子供へのIoT教育にもぴったりです。

参考:さくらインターネット、IoTプラットフォーム「sakura.io」提供開始 〜だれもが、データを活かせる世の中へ〜

タイムスケジュールは以下のようになっています。

10時00分:開会式/ルール説明
10時30分:開発開始
16時00分:開発終了
16時10分:プレゼン開始(1人あたりの持ち時間5分)
17時30分:審査
18時15分:表彰式+懇親会

ちなみに、ハッカソンのテーマ、レギュレーションについては、およそ1ヶ月前に各自に連絡済み。この場では、IchigoJamやsakura.ioなどの機材を実際に組立て、動作確認などを行う、最終フェーズが行なわれることになります。

審査員を務めるのは、jig.jp社長にして、IchigoJamの開発者でもある福野泰介さん(イチゴの帽子がトレードマーク!)と、jig.jpと同じく福井県の地場デベロッパーである株式会社ナチュラルスタイル社長の松田(まった)優一さん、株式会社インフィニットループ社長、松井健太郎さんのお三方。現在は世界中に活動が拡大しているPCNの中核メンバーがそれぞれのカリキュラムをジャッジします!

なお、審査に際し、福野さんと松田さんら、このハッカソンの仕掛け人にこのイベントの意義や、ちょっと気になる「なぜ福井なのか」などについても語っていただきました。ぜひこちらのインタビューもご一読を!

静かに繰り広げられる熱い戦い!

開会式でのテーマ、レギュレーション再確認の後、さっそくハッカソンがスタート! ……とはいえ、スポーツや格闘技の試合ではないため、ここから約5時間30分、特に派手なエピソードはありません。皆、黙々と支給された「IchigoJam」と「sakura.io」をいじり続けます。カチャカチャ……カチャカチャ……そして時折響くビープ音。

開発中のようすについては写真でご確認くださいませ。

会場は福井県・鯖江駅近くの「めがね会館」ビル8階の株式会社jig.jp開発センター。1階には、観光名所・めがねミュージアムもあります。

今回参加したエンジニアは、PCN、KidsVenture、関連企業7社から、計13名。周到に準備してきた人もいれば、ぶっつけ本番という猛者も……?

参加者各人に支給された開発キット。写真中央やや上の亀の子モジュールは、sakura.ioをIchigoJamに直挿できる「IchigoSoda」。近日発売予定です。

もちろん昼食タイムは、みんなで一緒に。審査員の皆さんの母校でもある福井高専卒業生が経営する釜めし屋さんの名物釜めしが振る舞われました。「へしこ」味など、福井ならではのものもありました。美味!

ラストスパートタイム。想定していた通りに動かず焦り始めている人も?

そして、タイムアップ!

果たして最優秀賞に選ばれたのはどの作品!?

各人5分ずつのプレゼンタイムを経て、いよいよ今回の優勝作品が決定! 紙幅の問題から、全ての作品を紹介することは難しいので、ここでは最優秀賞などの受賞作品について、簡単に紹介しましょう。

特別賞

まずは、「特別賞」から。受賞したのは、温度センサーで、子供の体温を測って、学校の先生に送信するという装置を作った、株式会社jig.jpの浜岸さん。単純な技術の学習だけでなく、出欠の連絡を自分で行えるようにすることで、自主性を育む狙いもあるのだそうです。

今回は一般的な温度センサーを使いましたが、将来的にはより正確な体温が測れるセンサーを使ったり、症状などのメッセージも送れるように改良してきたいとのこと。楽しみですね。

【審査員講評】
「まず、子供が手にとって触れる端末(温度センサー/写真左手元参照)がある点にまず夢を感じました。今回は、IoTハッカソンということで、インターネット越しにデータを送ることが1つの大きなテーマになっているのですが、家から学校に体温のデータを送り、先生から生徒に出欠指導のメッセージが送られるという仕掛けが審査員の間で高い評価を集めました」(審査員・松井さん)

優秀賞

続いて「優秀賞」に行きましょう。最優秀賞に次ぐ、本賞を受賞したのは、株式会社ナチュラルスタイル所属の“スモーキー”こと友田さん。「IchigoJamをインターネットにつないで、ネット対戦しよう」をコンセプトに、「タイピング玉入れゲーム」を開発しました。実際にPCNで教えている経験から、みんなが一つになって楽しめることが最も大切だと考えたのだそうです。

ゲームのルールは簡単。まずは画面に表示された英単語をキーボードで入力します。正しく入力すると画面に「THROW」と表示されるので、手元のモーター(写真左手元参照)を勢いよく指で回転(これを「玉入れ」のアクションと定義)させましょう。すると「sakura.io」を通してクラウド上の採点システムに「加点」の命令が送られ……といった感じです。

【審査員講評】
「ゲームという切り口なら、子供たちは興味を持ちやすいし、モチベーションも維持させやすい。また、実際に手を動かして楽しめるところが良かった。完成させた後に、ネット対戦させたら大盛り上がりになること間違いなしでしょう!」(審査員・松田さん)

最優秀賞

そして、今回のハッカソンの頂点。「最優秀賞」に選ばれたのは、株式会社アートフルの船戸さん。船戸さんは、市販の光センサーや土壌センサーなどを使って「Plant bot(植物育成マシン)」を開発。土中の湿度を計測して水が足りない場合に水やりをできるなど、小学生にとって実用的な仕組みを開発しました。

また、船戸さんは実際のワークショックプログラムの内容も細かく設定。初級から上級まで、児童の理解度に応じてステップアップしていけるカリキュラムも披露してくれました。この完成度の高さには参加者も審査員もあぜん(実は船戸さんの発表が一番最初だったため、会場内に「このレベルの発表が求められるのか……」と戦慄が走りました)。会場中の誰もが認める最優秀賞受賞ですね!

【審査員講評】
「のっけからレベルが高くてビックリしました(笑)。植物育成というのは小学生の理科の科目でもあります。ただ、植物をどのように育てるかを学べる反面、とても面倒くさいのが難点で……。その面倒くさいところを自動化できる、その手段を見せてあげるということには意味があると感じました。ワークショップでは、よくペットのエサやりを自動化できないかなどの相談を受けるのですが、この仕組みを応用すればそれも可能になりそうですね。非常に夢が拡がるカリキュラムだと思いました! これ、実際にやりましょう!」(審査員・福野さん)


場所を会場近くのおそば屋さんに移しての表彰式にて。友田さんだけ出席できず、代理の方が受賞しました。

来年もまた、ハッカソンやります!

そして表彰式の最後、KidsVentureの髙橋さんから衝撃の発表が!!

今、第2回ハッカソンの開催が決定しました!! 場所はなんと札幌! 来年6月に株式会社インフィニットループの札幌ファクトリーで実施することとします。次回は、今回よりもさらに参加社、参加者を増やす予定。今回、思うような結果が出せなかったという人のリベンジを楽しみにしています!!」(髙橋さん)