クラウドとコミュニティで変わるもの、変わらないもの ~さく生Vol.2レポート(その3)

12月4日(金)に行われた「さく生 Vol.2『さくら田中さん、AWS小島さんとコミュニティを語ろう』」のレポートも佳境に入ってきました。すでにお届けした第1部第2部に続いて、最終回となる本記事では第3部のフリートークの模様をお伝えします。第3部の出演者はこちらの方々です。

  • 小島英揮さん(アマゾンウェブサービスジャパン株式会社)
  • 新沼貴行さん(JAWS-UG鹿児島)
  • 田中邦裕(さくらインターネット株式会社)
  • 永田司さん(さくらクラブ鹿児島)(司会)
  • まいまいさん(某IT企業)(アシスタント)

視聴者からのコメントに見入る第3部の出演者。
左から、田中、小島さん、新沼さん、永田さん、まいまいさん

コミュニティは仲間を見つける場

コミュニティは仲間を見つける場でもあります。田中からはコミュニティで仲間を見つける原体験として「電子工作が好きだが、小学校のときは周囲にそういう人がいなかった。それが中学校に入ったら同好者が見つかって意気投合した」という話がありました。つまり、大きなコミュニティに行った方がつながりは見つけやすいということです。その点では「AWSは人口が増えていて、それがいい方向に作用している」(小島さん)とのことです。しかし「地方ではそもそも母集団が小さいので仲間を見つけにくい」(永田さん)という問題があります。また、「人が入れ替わらないと閉鎖的になる」(新沼さん)ので、新しい人を入れて新陳代謝を図っていくことも今後の課題になりそうです。

これに関連して、さく生の視聴者からは「コミュニティ同士でライバル意識はあるの?」という質問が出ました。これに対しては「顧客や社員との関係は意識して構築できるが、競合他社はコントロールできないので気にしてもしかたがない」(小島さん)、「AWSは、クラウドでは一番学ぶところの多い相手だが、インターネットのインフラ事業者としてはさくらの方が先輩。敵を作るのではなく自分達がいかにがんばるかが大事」(田中)と、それほど強くは意識していないようです。

コミュニティ内のあれこれ

コミュニティの運営は会社の業務と違ってボランティアベースの部分が多いので、同じペースで活動を続けることはなかなか難しく、発足してしばらくすると活動が停滞するケースも珍しくありません。小島さんのような立場の人はコミュニティリーダーをケアするのも仕事のひとつです。「活動が停滞するのはリーダーが忙しいケースが多い。日頃からSNSを観察して、リーダーの状態が良いときに手助けすると話が前に進みやすい」(小島さん)のだそうです。これは筆者もコミュニティでイベントをするときなどによく使っている手法です。しかし、こうしてコミュニティにカンフル剤を打つことはできますが、「火をつけるのは簡単だけど燃料をずっとくべるのはしんどい」(田中)という言葉に象徴されるように、コミュニティが自立して運営されることが望ましい形です。

また、コミュニティに入ってくる人の中には、メンバーの熱量を奪うタイプの人もいます。情報を得ることだけを目的とする人や、コミュニティにフリーライド(ただ乗り)して利を得ようとする人です。「フリーライドへの対応は?」(永田さん)という質問に対しては「フリーライドとわかったら断った方がよい」(小島さん)というアドバイスがありました。ただ、フリーライドかどうかは明確な基準がないので判断が難しいのですが、「みんなのためになっている話かどうかが判断材料」(小島さん)と考えるのがひとつの方法です。

クラウドが変えたビジネス

フリートークも後半はあらかじめ用意していたお題で進行しました。そのひとつが「クラウドが変えたビジネス」です。「身近な例ではSORACOM。1年前にアイデアを聞き、それから1年間で開発もパートナー作りも全部できた。クラウドのように必要なものを必要なときに調達できる世界だからこそできた」(小島さん)のような具体例も出されたのですが、ここではビジネスを山登りに例えた話が盛り上がりました。「昔は装備満載で山に行かないといけなかったが、クラウドは途中で装備を変えられるので、最小限の装備でスタートできる」(小島さん)のが大きな違いです。よって「どこの山に登るかだけ決めて、どういうルートで登るかは走りながら考える」(田中)のが今どきのスタートアップビジネスと言えそうです。でも「ビジョンだけは先に決めないといけないのは昔と同じ。ビジョンがしっかりしていれば、お金を集めるのは以前に比べれば容易になった」(田中)というわけで、クラウド時代になっても変わらない部分もあるようです。

クラウドが変えたビジネスについて議論する小島さん(右)と田中

クラウドで変わる働き方

もうひとつ事前に用意していたお題が「クラウドで変わる働き方」です。「最初はJAWS-UGの参加者だったのが、気がついたら支部長になっていた。AWSを仕事にしたいと思ったが当時の勤務先ではそのチャンスがなく、起業も考えたが性に合わなさそうなので悩んでいたところに、リモートワークで働ける今の勤務先と巡りあって転職した」(新沼さん)という実体験の紹介からいろいろな話題に発展しました。「リアルに会うことは?」(田中)「入社する人が多く自分を知らない人が増えてくるので、2か月に1回は自分から会いに行っている。オフラインのつながりが大事なことは本を読んで知った」(新沼さん)というやりとりがあり、田中も呼応して「イベントでは情報だけでなく熱量をもらえる。オンラインでは熱量は伝わらない。仕事でもオフラインで会うのが重要なのは同じ理由。さくらでも今月から1人福岡に常駐したが、それは本人が福岡の熱い人達と仕事したいと言い出して実現したことで、これも熱量のなせる技」とコメントしました。

もっとも、このようにオフラインが重視されるのは「日本は国土が狭いので、客がリアルでの接点を期待している」(小島さん)という指摘もありました。「米国は顧客が遠く離れた所にいるのが普通なので、リモートでの対話が合理的」(小島さん)です。また、日本ではオフラインで会うことが重視されていることの裏返しとしてオンラインミーティングが普及しておらず、「日本はテレビ会議や電話会議に慣れてない人が多い。特に間の取り方や遅延に慣れていない」(田中)のが現状です。道具もさることながら人々の意識という点でもリモートワークが普及するにはもう少し時間がかかりそうですが、時代は着実に変わりつつあることも感じました。

さく生を終えて懇親会で乾杯!

放送を終えて

こんな感じでお送りしてきた「さく生Vol.2」は、予定の2時間を大幅に超えて終了しました。終了後はスタジオ観覧者でささやかな懇親会を行い、より深掘りした議論が交わされました。その後は鹿児島の街に繰り出し、果てしない激闘が…。

ところで、イベント終了後に、小島さんに感想をお聞きしました。

―― さくらハウスはいかがでしたでしょうか?また、今後に期待することなどあれば教えてください。

小島 地方でのコミュニティ活動では、実際に集まれる「場」の確保にハードルがあることが多いのですが、鹿児島にはさくらハウスという素晴らしい「場」があって恵まれているなと思いました。もっともっと鹿児島の人にこの「場」を使い倒していただいて、地方にこそ必要なコミュニティ活動を盛り上げていってほしいです。

―― さく生にご出演されてみていかがでしたでしょうか?今回、田中さんとの共演ということで来場者の方も視聴者の方からも面白い放送だったという声をいただいています。今回の出演について感想などあれば教えてください。

小島 普通の企画だとなかなかない座組だと思うので、私としてもとても楽しめました。さくらハウスという場がなければ成立しなかったと思います。また、田中社長が、コミュニティに対してきちんとした理解と支援をされている実績のある方なので、トーク中もすごく話しやすかったですし、コミュニティ特有の問題にも深く切り込めたと思います。それと、視聴いただいている方とのインタラクションもたくさんあってよかったですね。田中社長が積極的に質問を拾っていくので、ついていくのが大変でしたが(笑)

―― 鹿児島について、何かお考えのこと、期待することなどあれば教えてください。

小島 今回、JAWS-UG以外のコミュニティの皆さんにもお会いして、鹿児島への強い愛情と、ITへの情熱を感じました! 次はぜひ鹿児島の地で、大きなコミュニティの集まりが出来ればと思っています。その時は、私もまた呼んでいただけるようにいろいろ仕込んでおきますね。またお会いしましょう!

小島さんありがとうございました! また、さく生の皆さんもありがとうございました。来年早々にも次回の放送を企画しているとのことなので、今後にも期待しています!

さくらハウスの壁に押された小島さんと田中の手形