地域ポイントや地域通貨のソリューションを提供するフェリカポケットマーケティングが、FeliCaと仮想通貨ビットコインを連携させる手法を開発しました(発表資料)。FeliCaは、Suicaや楽天Edyなど電子マネーに使われている技術で、専用の半導体チップに暗号の秘密鍵のように秘匿する必要があるデータを安全に格納する機能を備えています。これを応用してビットコインの所有権を示す秘密鍵を半導体チップに格納し、FeliCaチップ搭載カードを「かざす」だけで、Suicaなどと同様の操作感で決済できる手法を開発したとのことです。

図1 FeliCaチップの「鍵あり領域」に、ビットコインの秘密鍵を格納する。

図1 FeliCaチップの「鍵あり領域」に、ビットコインの秘密鍵を格納する。
フェリカポケットマーケティング 発表資料より)

ブロックチェーン技術を「ポイント」や「地域通貨」に使うというアイデアは以前からありました。同社のもとにも、ブロックチェーン技術や仮想通貨の応用に関する相談が増えてきたということです。そこで、ブロックチェーン技術の代表といえるビットコインを対象に手法を開発しました。他の種類のブロックチェーン技術にこの手法を応用すれば、暗号鍵をFeliCaチップ搭載カードのタッチにより、なんらかの所有権を示すデジタルデータを制御することが可能となります。

スマホのビットコイン決済よりも、迅速で手軽

従来は、最も手軽なビットコイン決済の手段は、スマートフォン上で動くウォレットアプリでQRコードを読み取って送金するやり方でした。今回開発したFeliCa搭載カードを「かざす」使い方はより手軽です。

図2 FeliCaチップ搭載カードを専用リーダーに「かざす」ことで、支払いやチャージが可能となる。

図2 FeliCaチップ搭載カードを専用リーダーに「かざす」ことで、支払いやチャージが可能となる。
フェリカポケットマーケティング 発表資料より)

スマートフォンのウォレットを使う場合、スマートフォン上でアプリを立ち上げ、スマートフォンのカメラにQRコードを収める手間が発生します。このさい、インターネット接続が確保されている必要があります。またトランザクション開始の確認まで若干のタイムラグが発生します。

この2017年4月5日から、量販店であるビックカメラの2店舗の店頭でビットコイン決済が可能となっています。筆者もビットコインで買い物をしてみました。スマートフォンだけで決済できることは面白い体験で、クレジットカード端末の承認待ちに較べるとずっと短い時間で決済が完了します。とはいえ、FeliCaチップ搭載のSuicaカードなどに較べると、若干時間がかかります。「数呼吸分」といったところでしょうか。FeliCaとビットコインの連携は、ビットコインの使い勝手をよくする試みといえるでしょう。

セキュリティも確保、幅広い応用の可能性が

スマートフォン上のウォレットは、セキュリティ面では万全とはいえません。ウイルスのような悪意のあるプログラムがスマートフォン上で動いている場合、秘密鍵を盗み出されてしまう可能性が否定できないからです(そのため、スマートフォン上のウォレットにはあまり多額の仮想通貨は置かない方がいいといえます)。今回開発した手法では、FeliCaチップが備えるハードウェア的なセキュリティ機構により秘密鍵を格納する(図1)ので、より安全といえます。秘密鍵を安全に格納するための「ハードウェアウォレット」が製品化されていますが、FeliCaでビットコインを扱うことはそれと似た位置づけのソリューションといえるでしょう。

この手法では秘密鍵をFeliCaチップが管理するので、「対応するウォレットアプリケーションを限定する」といったコントロールが可能です。これにより、トランザクション(ビットコインの決済情報)をビットコインのネットワークにブロードキャストする前に内容をチェックする(図2)ことで二重支払いの可能性を抑えることが可能になるとしています。

FeliCaを使って、ビットコインや他の仮想通貨での決済が可能になると、利用範囲は今までよりも広がる可能性があるでしょう。今回の手法の開発元であるフェリカポケットマーケティングは、FeliCaを応用した「地域ポイント」を提供しています。仮想通貨やポイントをFeliCa搭載カードの形で配布して使ってもらうやり方は、スマートフォン上のウォレットアプリよりも広いユーザー層に受け入れられるかもしれません。

また、FeliCaチップ搭載の「ICタグ」とブロックチェーン技術を連携させるソリューションには大きな可能性があります。物流の管理、カーシェアリングのシステムのように、現実世界の「もの」とブロックチェーン上の情報を信頼できる形で連携する技術として発展できるかもしれません。

懸念点は、コストと、ビットコイン所有権の所在

この手法の懸念点は、1番目に専用リーダーのコストです。FeliCaのソリューションは、FeliCaチップ搭載のカードと耐タンパ性を備えた専用リーダーと組み合わせるのが普通の使い方です。ビットコイン決済のアプリケーションを搭載した専用リーダーのコストが、地域ポイントや地域通貨やその他の応用分野で使うのに妥当な範囲内に収まるのかどうか、そこは気になるところです。

2番目の懸念点は、ビットコインを特定の運営会社に預けることと等価になるのではないかという点です。ビットコインの魅力の一つは暗号鍵(ビットコインの所有権を示す秘密鍵)を完全に個人のコントロール下で管理できることです。しかし、FeliCaチップに暗号鍵を格納する場合、アクセスできるのはFeliCaの運営会社が認めた専用リーダーだけです。暗号鍵を自分で管理することに慣れ親しんだビットコインユーザーにとっては、リーダーを管理する運営会社に自分のビットコインを支配されてしまうように感じるかもしれません。もっとも、運営会社に資産価値を預けることは、銀行、証券会社、仮想通貨取引所、他の電子マネーでも行われていることなので、多数派のユーザーにとっては違和感はないかもしれません。

今回開発した手法はまだ実証実験の段階です。本格的な活用のためには、アプリケーションの作り込みと、より本格的な実証実験も欠かせないでしょう。

ビットコインを筆頭とする仮想通貨の技術には大きな可能性があります。そこにFeliCa連携の可能性が加わったことは注目したいと思います。