今のものづくりの枠組みのまま、IoT化を実現できる?

昨年2月に「さくらのIoT Platform」が発表されて約1年。昨年10月にβ版(さくらのIoT Platform β)の提供が始まり、いよいよ実用化に向けた取り組みが本格的なものになりつつあります。

「さくらのIoT Platform」とは、通信環境とデータの保存、処理システムを一体型で提供するIoTのプラットフォーム。ハードウェアに組み込むコンパクトな「さくらのIoT通信モジュール」と、さくらインターネット上のバックエンド、そしてそれを接続する閉域網(キャリアネットワークを利用しL2接続)や、外部クラウドやアプリケーションサービスと連携するためのAPIまでをまとめてパッケージ化したものです。

なぜこのような取り組みを始めたのか、さくらインターネット株式会社IoT事業推進室室長の山口亮介は次のように説明します。

「ものづくりの現場において、今、IoTが抱えている最大の問題は、これまでのつくりかたを大きく変えなければならないこと。現在発売されているIoTデバイスのほとんどにはLinuxなどが動作する高度な汎用プロセッサが内蔵されているのですが、実際問題、世の中に存在する電化製品のほとんどは、それよりも遙かに低性能なマイコンを載せているんです。そのため、IoT化するためにはそこから全て改めねばならず、現場にとって大きな負担になっていました」

だったら単純に高性能なプロセッサを搭載すれば良いじゃないかと考える人がいるかもしれません。しかし、実際にはそんなに簡単なことではないそうです。費用面や開発難易度の問題はもちろんのこと、セキュリティの問題など、中小メーカーでは太刀打ちできないような(大手メーカーでも尻込みするような)問題が山積しているのです。

「そこで用意したのが、さくらインターネットのデータセンターとセキュアな閉域網で接続できるようにした『さくらのIoT通信モジュール』。その最大のポイントは、これが、電化製品のマイコンから発せられた電気信号をJSONに変換する機能を備えていること。つまり、従来の電化製品などを、高度な汎用プロセッサを使うことなくそのままIoTデバイス化できるのです」(山口)

「さくらのIoT通信モジュール」を使えば、機器側の組込系エンジニアも、Web側のエンジニアも、これまでの技術やノウハウをそのままに、つくりかたを変えることなくIoTデバイスを開発できるようなります。

なお、「さくらのIoT通信モジュール」は組み込まれる機器の形態に合わせて、LTEモデムを内蔵したものから、LoRaを使ってゲートウェイ経由でデータを送受信するものなど、複数の選択肢を用意。製品ごとに最適なものを選べるようにしています。

「そして、さらにこの通信モジュールと、SIMカード、バックエンド、外部サービスとの連携機能(API)、全てを丸ごと提供していることが『さくらのIoT Platform』の大きなアドバンテージです。モノからネットワークの外側にまでを1つにつないだ仕組みを提供したのは我々が初めてではないかと思います。もちろん価格面でも使いやすいものにしています。本来であれば数万円する通信モジュールを1万円以下の価格で提供(月額通信費も100円~)するなど、かなりがんばりました。弊社代表の田中はこれを980円で売ればすごいことになると言っているのですが、さすがにそれは難しい(笑)。でも、いつかは達成したいですね」(山口)

実用化に向けた取り組みが水面下で進行中

昨年10月に「さくらのIoT Platform β」がスタートするなど、いよいよ実際の製品開発に向けて加速しつつある「さくらのIoT Platform」。たとえば沖縄のマングースの捕獲現場において、早くも実用に向けた取り組みが始まっています。

「近年、沖縄ではハブ退治のために持ち込まれたマングースの大増殖が社会問題になっており(編集部注:70年代に放たれた数十匹のマングースが、最大3万匹にまで繁殖。家畜被害などが深刻になっているそうです)、その捕獲が急務となっていました。しかし、法律の関係上、罠を毎日見回らねばならず、それが大きな負荷となっていたのです。そこで、今回、設置される罠に『さくらのIoT通信モジュール』を内蔵。罠の位置や状態を通信で取得できるようにすることで、手間の軽減とデータの即時性向上を目指しています」(山口)

この取り組みでは、通信機能を内蔵しないゲートウェイ型のモジュールを採用。電波状態が不安定なジャングルでもゲートウェイ型ならば通信環境を構築しやすく、特に電波状態が劣悪な奥地でも安定して設置できたとのこと。

「沖縄の案件は商用ベースというわけではありませんが、こうした検証を踏まえ、“次”に繋げていきたいと考えています。それ以外にも、まだ名前は出せないが、大きな案件も動き始めているんですよ」(山口)

そして早くも「さくらのIoT Platform」は世界へ!

そして「さくらのIoT Platform」は、今年1月に開催された世界最大の家電見本市「CES 2017」にも参加。2017年秋予定で、グローバル版の「さくらのIoT通信モジュール」をリリースすると発表しました。

これによって、「さくらのIoT Platform」の売りである、通信モジュールから外部サービスとの連携までを丸ごと提供するという強みに、通信ローカライズや認証取得の手間を代行するという新たなメリットが加わることに。IoTビジネスの敷居を大きく下げたいと意気込みます。

「設定なんかしなくても、どこでも使えるようにすることが理想ですね。“海外展開”とぶち上げましたが、そもそもそんなことを意識しないでいい世界を作りたいと考えています。CESは最終的な製品を発表するイベントであるため、ブースではあくまで実際の製品が主役だったのですが、それでも何人ものエンジニアが“中身”に気がついてくれました。ある外国のエンジニアから『クールな製品だね』と言ってもらえたのはうれしかったですね」(山口)

CES会場ではパートナー企業tsumug(ツムグ)が、高級マンションや一般住宅向けのスマートロック『TiNK』を発表したほか、不動産業者向けのスマートロック『Sharing Key』を展示。後者は、インターネット回線のない空き部屋でも使えるようにするため通信機能の内蔵が必須となっており、そこで開発/通信コストに優れた「さくらのIoT Platform」が選ばれたということです。

「このプロジェクトに携わるようになってから、世の中はまだまだIT化されていないと強く実感するようになりました。そうした状況を変えるのがIoT。『さくらのIoT Platform』の役割は、Webエンジニアにとっても、組込系エンジニアにとってもやりやすい環境を両立させること。そういうかたちでIoTの未来に貢献できればいいなと思っています」(山口)

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