皆さんは「高専」ってご存じでしょうか?

最近はロボコンやプロコンなどのイベントでも注目されることが多くなっているので、さくナレ読者なら当然ご存じですよね? 高専、即ち「高等専門学校」は、一般的な高校→大学(短大)という進学コースとは異なり、中学卒業後、5年間に渡ってみっちり特定分野(主に工学・技術系)の専門教育を受けられるという高等教育機関(卒業後は短大卒と同等の準学士の学位を取得)。即戦力となる優秀な人材を排出してきたことから、産業界の信頼が篤いことでも知られています。

実は、さくらインターネットの創業社長である田中邦裕も高専出身。京都の舞鶴工業高等専門学校(以下、舞鶴高専)在学中にさくらインターネットを立ち上げ、当時はけっこうな話題となりました。

そんな経緯もあり、さくらインターネットでは、高専生を積極的にサポート。これまでもインターン生の積極受け入れなど、高専生が社会に出て行く橋渡しを微力ながらお手伝いさせていただいております。

【参考】さくらに高専生インターンがやってきた!

田中社長の母校・舞鶴高専へのVPS無償提供もそんな高専応援活動の一環。制限の多い学内サーバーよりも自由なサーバー環境を求める声に応え、2016年度に「さくらのVPS」を実験的に4台提供することとなりました。

今回はそのVPSが舞鶴高専の学びにどう役立ったのかを、同校で電気・情報系の授業を受け持っている古林達哉先生と、その優秀な教え子たちに聞いてきました!

テクノロジーの力で地域に貢献

――まずは、舞鶴高専についてもう少し詳しく教えてください。この学校ではどういったことを学ぶことができるのでしょうか?

古林先生:舞鶴高専は高専制度が誕生した初期に設立された50年以上の歴史を誇る国立高等専門学校です。全国には51の国立高等専門学校があるのですが、その中でもいち早く「情報」の重要性・将来性に着目し、2004年に「電気工学科」を「電気情報工学科」に改称するなど、「電気」と「情報」を両方こなせる技術者を育成することに注力してきました。

――舞鶴高専では教育の一環として、文部科学省が推進している「COC」という取り組みに協力していると聞きました。これは一体どういうものなんですか?

古林先生:COC(Center of Community)とは、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」のこと。もう少し分かりやすく言うと、現地の大学や高専が、学問の力で地域の課題を解決してきましょうというプロジェクトです。舞鶴高専は2013年に、京都工芸繊維大学と共にその推進校に選ばれ、授業のカリキュラムに「地域志向科目」を採り入れるなど、全校一丸となってこの事業に取り組んできました。また、2015年からはそれをさらに拡大・発展させたCOC+も始まっています。

――COC+では具体的にはどんなことをやってきたのでしょうか?

古林先生:京都府から舞鶴高専に提示された「地域の課題」は、言うなれば京都府北部の活性化。京都は観光地として栄えているように思われているのですが、実は多くの人が訪れるのは京都市内や府南部地域だけ。舞鶴や福知山など、京都府北部の周辺エリアはあまり認知度が高くないというのが現状なんです。また、府内に学生さんが多い割に、就職(特に北部へ)が少ないのです。それを知の力で何とかできないかということに、特にこの2年間取り組んでいます。

今回お話させていただく内容はそのCOC+の中でも電気情報工学科第4学年にて実施している「創造工学」という地域志向科目です。2年目となる2016年度は、学生を4つのチームに分けて、地元支援学校の電動車椅子の改良、LEDイルミネーションによる駅前のライトアップ、舞鶴市内のアクティビティ充実、舞鶴観光情報の提供にチャレンジしています。

――その中で、さくらインターネットはどんなお役に立てましたか?

古林先生:それら4つの取り組みのうち、「情報」技術が特に重要だった、舞鶴市内のアクティビティ充実、舞鶴観光情報の提供において、さくらのVPSを活用させていただきました。

前者は、学生がUnityを駆使して作ったアクティビティを楽しんでいただいているようすをWebカメラで中継したり、あそび方のレクチャーを紹介するWebサイトの設置などに使っています。

後者は、舞鶴周辺の美味しいお店や観光スポットを紹介するWebサイトやアプリを運用するために使わせていただきました。アバターを使ったかわいらしいものから、閉店時間情報も踏まえて、今、やっている近所のお店を紹介してくれるもの、ルート検索機能付きのものまで、さまざまな切り口の情報提供を行っています。

――こうしたことは学内サーバーでは難しかったんですか?

古林先生:はい。学内サーバーはセキュリティの問題もあって、学校のホームページなど一部を除き、外部からのアクセスを遮断しており、こうした学外との連携には使えないんです。さりとて、教材として外部のVPSを導入することもシステム的に厳しく……。どうしても契約が年度をまたいでしまうため、予算を付けることが難しかったんです。

——では、無償提供には金額だけでないメリットもあったということですね。

古林先生:とても助かりました。無償提供は今年だけだったので、来年以降どうしようかと思ってしまうほど(笑)。ただ、後ほど学生からお話させていただく「身体活動データ収集・解析支援システムの構築」プロジェクトについては、卒業研究の予算を付けることができたので、1台だけですが、来年度もさくらのVPSの利用を続けることになっています。

舞鶴高専で学ぶ、若きエンジニアの卵たち

COCという活動を通して、地域貢献という実学で技術を学ぶ舞鶴高専生。続いては、電気情報工学科5学年約200名(1学年約40名)の中から、特に優秀と古林先生がお墨付きを与えた3名の学生さんにご登場いただき、舞鶴での学びについて語っていただきます。

舞鶴高専 電気情報工学科 3年生 山本謙太さん

「僕が現在学んでいるのは電気系では回路の過渡解析、情報系では数値解析などといった基礎的な範囲です。その上で、課外活動として、プロコン部に所属しているほか、個人の趣味としてUSBデバイスをPIC(ペリフェラル・インターフェイス・コントローラー)で開発するなどといったこともやっています。とにかく今はいろいろなことがやってみたい。舞鶴高専を選んだのも、ここなら電気から情報までまんべんなく学べそうだと思ったからなんですよ。結論としては舞鶴高専を選んで大正解。学生生活を楽しく満喫しています」(山本さん)

舞鶴高専 電気情報工学科 4年生 森本健太さん

「私も山本君と同じく、いろいろなことをやりたくて舞鶴高専を選びました。現在は部活で創造技術研究会に所属し、電気、情報のほか、機械の設計などにも手を出しています。授業では、先ほど古林先生がお話ししたCOC事業の一環としてイルミネーションの製作に参加。ここで課題となったのが、それぞれのチームが制作したイルミネーションを連携させるということ。実は昨年もイルミネーション作りをやったのですが、横の連携がなかったため、ただ好き勝手に光っている状態になってしまっていたんですよね。そこで今年はそれぞれのイルミネーションを無線技術で連携させて統一感を持たせることに成功しました。また、後期は5年生の谷先輩と組んで、『身体活動データ収集・解析支援システムの構築』という研究にも挑戦しています」(森本さん)

舞鶴高専 電気情報工学科 5年生 谷健太郎さん

「私の卒業研究となった『身体活動データ収集・解析支援システムの構築』は、舞鶴市民の健康作りのためにウォーキングを推奨しようというプロジェクト。市役所や地元信金の社員の皆さんにご協力いただいて、ウェアラブル端末とスマホの組みあわせで運動を奨励された人と、そうでない人の運動習慣と成果を収集・解析する仕組み作りを行いました。この際、吸い上げたデータを保管しておく場所としてさくらのVPSを活用。データのレシーバー作りからシステム構築までひたすら試行錯誤を繰り返したのが大変でしたが、結果として、そうした『情報』の取り扱いに強い興味を持つことができました。今後はこの方面をもっと極めていきたいですね」(谷さん)

ちなみに谷さんは、こうした経験を経て、某国立大学工学部の機械システム系学科への進学が決定。この春から、人工知能の専門家としての道を歩み始めることになりました。なお、さくらのVPSも活用した『身体活動データ収集・解析支援システムの構築』の研究はこれまでも一緒にやってきた後輩・森本さんが継続。学びの成果はこうして先輩から後輩へ引き継がれていくのです。

日本のテクノロジーの未来を担う高専生たち。さくらインターネットはこれからも、そんな彼らを全力でバックアップしていきたいと考えています!!

■関連リンク
舞鶴工業高等専門学校

(※上記学生の皆様の学年は取材当時(2017年2月)のものです。)

おまけ

繰り返しますが、舞鶴高専はさくらインターネット創業の地(?)。せっかくなので、その“当時”を知る恩師・仲川力先生に若き日の創業者・田中社長がどんな学生だったのかを聞いてみました。

——高専生時代の田中社長ってどんな学生だったんでしょうか?

仲川先生:彼は私が赴任して2年目の学生だったのですが、PC関連に明るいと言うことで、出来たばかりの電子制御工学科棟の機材設置などを手伝ってもらっていました。そうしたらいつの間にかそこの主のような存在になってしまい、平日は10時ごろまで、土日はオールナイトで入り浸るようになっていましたね。え? 成績ですか? うーん、留年はしませんでしたよ、少なくとも(笑)。

——高専生時代の田中社長のエピソードで何か面白いものがありましたらぜひ。

仲川先生:ある日、出張から帰ってきて研究所のPCを立ち上げたら、何もしていないはずなのに動作が不安定になっているということがありました。おかしいなと思ってPC内部を見てみると当時はまだものすごく高価だったメモリモジュールが1枚焼け焦げているんです。すぐにピンときて田中君を問い詰めてみたら、自分用のPCに何かのソフトをインストールするために拝借し、その際、規格が合わなかったとかで燃やしてしまったと白状しました(笑)。

——そんな彼が、さくらインターネットを立ち上げるきっかけは何だったのか、ご存じだったりするのでしょうか?

仲川先生:それがよく分からないんです。彼の在学中、1年だけ内地留学のため舞鶴高専を離れていたのですが、戻ってきたらもう“化けて”いました。古いインターネットユーザーならご存じかもしれませんが、かつてはここにwww.apache.or.jp(現・www.apache.jp)があり、田中君がMLを運営し、自らモジュールを作り、マニュアルを翻訳したりしていたんですよ。在学中にベンチャー企業を立ち上げると言い出したときには驚きましたが、これからのインターネットを支えていくのは彼らのような若い力だと考え、なるべく応援するようにしました。

——舞鶴高専には田中社長のほかに、そうした学生はいたのでしょうか?

仲川先生:いや、後にも先にもそんな学生は彼だけです(笑)。それだけに彼の存在はとても印象的でした。不在だった1年を除き、在学中はみっちりつき合いましたね。僕の所で卒研もやりましたし、逆に僕の論文を手伝ってもらったり……絶対に忘れられない学生の1人です。ただ、最近、その当時の記憶と比べてちょっと太ってきたように見えるのが気になっています(笑)。忙しいとは思うのですが、健康には気をつけるようにしてくださいね。