真っ白なキーボードでスーパーハカーを気取る

真っ白なキーボード

プログラマのみなさんなら、きっとこだわりのキーボードをお持ちのことでしょう。最近の流行はREALFORCEだそうですが、私はここ15年ほど、ずっとHappy Hacking Keyboardを使っています。

PCを使うようになると、キーボードの掃除を覚えます。キーボードは定期的に清掃しないと、結構汚れてしまうからです。そのためにキートップを外して掃除をし、また元通りにするのですが、ときどきキーのいくつかを間違った場所に戻してしまうことがあります。普段はタッチタイプで手元を見ないで入力しているので気づかないのですが、ちょっと記号を入れる時など「あれはどこだっけな」と思ってキーボードを見ると、間違った記号が出てきて初めて入れ替わっていることに気づく、ということがよくあります。普段使わないような記号の位置も完璧に覚えてしまえばいいのですが、キートップに記号が書いてあるとどうしても手元を見てしまいます。そんな経験からいつしか、真っ白なキーボードがあったらいいのになあ、と思うようになりました。そうしたら、苦手な記号もどうしても覚えざるを得なくなるし、キーボードの掃除のあと、どこに戻しても大丈夫だし、なによりちょっとかっこいいよな、と思っていました。1990年代後半のことだったのですが、当時は市場には真っ白なキーボードはありませんでした。

ときどき、この真っ白なキーボードの話をジョークの種にしていたところ、それを真に受けて誕生日にプレゼントしてくれるという友人が現れました。それはPFUのHappy Hacking Keyboardで、キートップは全部真っ白でした。どうやって手に入れたの? と尋ねてみると、こんな話をしてくれました。

友人は方々に問い合わせて真っ白なキーボードを扱っていないか調べましたが、やはり販売しているものはありませんでした。次にキーボード・メーカーに問い合わせて、注文で作れないか交渉してみました。しかしキーボードの注文生産というのは100とか1000台のようなロット単位の注文しか受け付けません。何社も回ったのですが話に応じてくれるメーカーは見つからず、とうとう最後にPFUにたどりついたのでした。友人が「白いキーボードが欲しい」というと、PFUの担当の方は「何に使うんですか?」と尋ねたそうです。好事家の友人の誕生日プレゼント、と言えなかった友人は「社員のタッチタイプ教育用に2セットぐらい欲しい」と答えました。すると担当の方は「それはおもしろいから10セットぐらい試作してみましょう。2セットは、本体を買っていただいたらオマケでお付けします」と言ってくれたのだそうです。こうして文字の印字された通常のHHKB本体と、白いキートップをプレゼントにいただくことになりました。

2セットのうち、1セットは友人が自分で使おうとしたのですが、さすがに真っ白では使いづらいということで、結局2セットとも私の手元にやってきました。おかげさまで、職場と自宅両方で真っ白なHHKBを使うことができました。

職場で使っていた方は、日焼けして変色してしまっていますが、元々は両方とも同じ真っ白な色でした。また職場PCにつないでいたので、その識別用にシリアルナンバーが貼ってあります。

背面のシリアル番号を見ると、続き番になっているのが分かります。また製造年月日が1999年になっているのもご覧いただけるでしょう。ちなみにプレゼントでいただいたのは1999年8月の誕生日のときでした。

PFUは、2003年にHappy Hacking Keyboard Professional発売記念として、100セット限定で無刻印モデルを販売しました。それはとても人気があってすぐに売り切れたという話です。そういう理由もあって無刻印モデルは標準ラインナップとなり、今ではショップでいつでも手に入れることができます。プレゼントにいただいたキーボードは10年以上使ったこともあり、スペースキーが壊れてしまい、今はHHKB Professional 2の無刻印モデルを使っています。HHKB初代とProfessional 2は若干キータッチに差があるのですが、どちらもとてもよいキーボードだと思っています。