第一人者が語る「働き方改革」の最前線

去る2017年12月18日、大阪・さくらインターネット本社にて、「働き方改革」をテーマにしたセミナーイベント『成長戦略としての働き方改革』が実施されました(共催・株式会社ワーク・ライフバランス)。

ここ数年、とりわけ大きな注目を集めている「働き方改革」がテーマということで、発表直後から企業人事担当者を中心に、たくさんの参加申請をいただいた本イベント。当初の定員を大幅に超える応募を受け、急遽会場を100名収容可能なさくらインターネット大阪本社の大会議室に変更するなど、開催前から大盛り上がりとなりました。本記事では、その様子を簡単ではありますが、レポートさせていただきます。

当初の参加予定人数を大幅に超過した本イベント

今回、セミナーの講師をつとめたのは、株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役・小室淑恵さん。自身の出産3週間後に同社を立ち上げ、07年に内閣府男女共同参画局ワーク・ライフバランス調査委員に。14年には経済産業省産業構造審議会本委員、安倍内閣産業競争力会議民間議員に就任。16年には「霞が関の働き方を加速させる懇談会」の座長にも就任しています。今、働き方改革と言えば、真っ先に名前が挙がる専門家の一人です。

セミナーの冒頭では、小室さんが約40分かけて、なぜ「働き方改革」が必要なのかを分かりやすく解説。人口構造が経済の重荷になる「人口オーナス期」に突入した我が国において、かつての(人口ボーナス期の)やり方が逆効果になること、状況を打破するためには、女性や障がい者・介護者の労働参画(=短期的な労働力確保)や、少子化対策(=長期的な労働力確保)が重要なのだと訴えます。

株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役・小室淑恵さん

細かくデータを提示しながら、日本の働き方改革がもはや「待ったなし」の状況であることを、理論的に、それでいて情熱的に解説していく小室さん。来場者は皆、一言も聞き漏らすまいと真剣に耳を傾けていました。その詳しいプレゼン内容については、こちらの記事もご参照ください。

小室さんのプレゼンの後は、既に働き方改革で一定の成果を出しているという先進企業の担当者がゲストプレゼンテーターとして登壇。まずはアパレル大手・株式会社ストライプインターナショナル取締役兼CHO・神田充教さんが、仕事仲間を第2の家族と定義する「セカンドファミリー」という新しい経営理念のもと、社内コミュニケーションを改善し、残業時間を激減させたことを紹介。続いて、ヤフー株式会社大阪開発本部開発1部部長・田中真司さんが、フリーアドレス制や、それをさらに発展させた「どこでもオフィス」、週休三日制などによって、それぞれのライフスタイルに合わせた働き方を推進していることを披露しました。

株式会社ストライプインターナショナル取締役兼 CHO・神田充教さん

ヤフー株式会社大阪開発本部開発 1 部部長・田中真司さん

そして、3人目のプレゼンターとして、さくらインターネット株式会社代表取締役・田中邦裕社長が登場。「“働き方改革”への処方箋成長戦略としての働き方改革」と題した発表を行いました。

大切なのは「働きがい」と「働きやすさ」の両立

実は約半年前の2017年5月に自ら1か月の休暇を取ったという田中社長。「自分がいなくても会社が回るということにショックを受けた(笑)」と笑いつつ、それによって不要な仕事が浮き彫りになったなど、働き方改革の大きなヒントを得たと当時をふり返ります。

さくらインターネット株式会社代表取締役社長・田中邦裕さん

田中社長は、さくらインターネットの働き方改革の基本理念として、フレデリック・ハーズバーグの二要因理論を紹介。この理論では仕事に対する「満足(働きがい)」と「不満(働きにくさ)」はそれぞれ独立しており、満足度が高くなっても不満は減らず、不満が減っても、満足度は高くならないとしています。そこで、本社人事部は、これを踏まえて、働きがいを引き出すと同時に、働きやすさを高める施策を検討。まずは、人事部主催のワークショップに全役員を招集し、徹底的な対話を行ったそうです。

「我々くらいの規模の会社になると、全役員を一箇所に集めて何時間も拘束するなんてことは、かなり難しい。でも、それをやって徹底的に話し合いました。正直、私も最初は“やらされた”くらいの気持ちでいたのですが、対話を繰り返して行くうちに、人事と経営の思いが合致するところが見つかってくるんです」(田中社長)

「働きがい」と「働きやすさ」を両立させる「さぶりこ制度」の紹介

「そして、働き方改革を進めるに当たって、最も重要なのが“信頼”です。一般的に働き方を管理しようとすると、社員の働き方を厳しくチェックするところからはじめがちなのですが、我々はそこについては社員を信頼して任せることにしています。また、それと併せてこれまで厳重に管理していた社内ツールの制限を大きく緩和。社員が使いやすいツールを自由に使えるようにしました。会社が働きやすい環境を作り、社員がそこで自由にやりがいを見つけだしていく、この両輪が働き方改革に必要なのだと思っています」(田中社長)

こうした取り組みの成果の1つと言えるのが、「働きがい」と「働きやすさ」を両立させる「さぶりこ(SaBuLiCo=SakuraBusinessandLifeCo-Creation)」という制度。勤務時間、勤務場所に柔軟性を持たせる仕組みや、残業代を20時間前払いする「さぶりこタイムマネジメント」に代表される早期帰宅を促す仕組みなど、さまざまな制度が生み出されています。直近では、副業を許可・支援する「さぶりこパラレルキャリア」制度もスタートし、業界で話題になりました。

社員の新たなチャレンジの可能性を作る「さぶりこ制度」とは

その結果、この1年の全社員有給消化率は何と約70%にまで向上。もちろん、今後はさらにその数字を高めていく予定です。そして、そのために必要なのは「“余白”を作ること」という田中社長。社員の働く場所や時間に余白(=余裕)を持たせていくことで、新しいチャレンジを加速させていきたいと、さらなる働き方改革への意欲を語ってくれました。

イベントはその後、小室さんと3人のプレゼンターによる「裏話」トーク、そして来場者からの質問に答える質疑応答コーナーへ。お越しくださったそれぞれの方々が、それぞれの立場で小さくない“気付き”を得ているようでした。

イベントを終えて〜田中社長スペシャルコメント〜

−−まずは、一人の経営者として、このセミナーイベントをご覧になられた感想を聞かせてください。

田中:働き方改革が全ての企業にとって「必須」であるということを、改めて確認できました。小室さんとお会いしたのはおよそ半年前なのですが、それ以降は、とても影響を受けていると感じています。

--具体的にはどんな影響を受けていますか?

田中:いくつもありますが、例えば「機嫌良くする」というのは、意識してやるようにしています(笑)。小室さんが「皆が少しずつ不機嫌な職場は何かが上手くいっていない」とおっしゃっていたのですが、本当にそうだなあと思いますね。

--今回、具体的な企業の事例として、ストライプインターナショナルとヤフーの取り組みが紹介されました。田中社長はどういった点に興味をひかれましたか?

田中:両社に共通していたのが、トップのコミットメントが大切だと言うこと。人事が孤軍奮闘して……というのはやはり好ましくないんです。神田さんは「仲間を増やす」と表現していましたが、経営陣を上手く巻き込んで、皆で良い会社を作るんだというふうにしていければ上手くいくはず。一人だけで悩まず、会社全体で取り組んでいく環境を作っていってほしいですね。

皆で協力して良い会社にするという環境作りが大切であると語る田中社長