「すべての企業に必要となったIT」そのワケとは?

去る2018年4月17日、鹿児島市TKPガーデンシティ鹿児島中央にて、株式会社リリー株式会社シナプス株式会社現場サポート、による3社共催ITセミナー「事業成長のためのIT活用と働き方改革」が開催されました。

鹿児島市は、昨年2017年に野村総合研究所から公表された「成長可能性都市ランキング」にて、総合ランキングで見た成長可能性が高い上位都市で第5位、ポテンシャルランキングで見た成長可能性が高い上位都市で第2位に選ばれており、近年とても注目を集めている都市です。

今回のセミナーは、そんな可能性があふれる鹿児島の【産業や事業を成長させたい】というアツい思いを持った3社が主催し、「これからの企業の事業成長に必要不可欠な、ITの活用方法と働き方の改革についてみんなに知ってもらう」ということを目的として開催されました。

セミナー当日はあいにくの雨模様にも関わらず、会場には約60名ものお客様が来場しました。当初想定していた人数を大幅に超え、鹿児島の企業が持つ「事業成長への関心」の高さを強く感じることができました。本記事では、そんなITセミナーの当日の様子を簡単ではありますがご紹介いたします。

さくらインターネット田中社長による基調講演「技術が実現するイノベーションと産業革命」

基調講演として、最初にさくらインターネット株式会社の代表取締役である田中邦裕社長が登壇されました。田中社長は、これからの時代に必要な働き方とITについて、「インターネットの歴史」を背景に詳しく紹介されました。

インターネットの登場で変わった「希少性」と「価値」

まず始めに、インターネットとウェブの登場により、「希少性」や「価値」に大きな変化が起きたと田中社長はお話されます。

インターネットが開発されたのは1960年(商用開放が1990年頃)、ウェブが開発されたのは1991年、ウェブブラウザが開発されたのは1993年です。実はかなり古い時代からあるインターネットですが、ここからウェブブラウザの登場までかなりの時間がありました。ウェブブラウザは、動画や静止画やテキストが一つの画面の中で表現されている「マルチメディア」であることと、URLを辿ることによってどの情報でも取得できる「リンク」の登場によって爆発的な普及をしたとされています。

「リンクをしたその先のサーバは誰のサーバでもいい。リンクをまたがって、全然別のサーバやコンテンツ所有者にアクセスできる。そしてそれを一つのコンテンツで見ることができる。これがウェブのすばらしさです」(田中社長)

そして「一番リンクをされているページにこそ価値がある」という【ページランク】システムの登場により、リンクという新しい価値を提供したデータベースであるGoogleは世界一の企業になったと田中社長はお話します。

しかし、これにより「希少性」に変化が起きます。ウェブブラウザやリンクの登場により「コピー」できるものがとても増えてしまったのです。

有限の物理資源や人間の創造性はコピーができないので非常に希少価値が高いのですが、近年聞く卒業論文のコピーなどがいい例で、「コピペできるものは価値がない」ということになってきました。例えばソフトウェアについても今まではCDで販売していましたが、今はダウンロードで解決できてしまいます。なのでソフトの価値は今や最低限まで低下してしまったと田中社長は続けてお話されます。

「なので物販のチャンネルを持っているのが強いという時代ではなくなったし、人のクリエイティビティが重要になってきました。こういった希少性の変化をウェブが作ってきたといえます」(田中社長)

また、2007年頃からクラウドやスマホの登場によって、第3のプラットフォームと呼ばれるクラウド、ソーシャル、ビッグデータ、モビリティの時代(第四次産業革命)となり、そこからさらに約10年経った近年では、スマホからスマートスピーカーなど別の音声デバイスに入口が代わってきている部分があるとお話されます。

「スマホほど普及するかはわかりません。ウェブからアプリになり、アプリだったものがその次になる。そこからAI・IoT・ビッグデータをベースにしたビジネスが広がるといわれています」(田中社長)

「近年はすべてが<IT×〇〇>という形に時代がかわってきており、これはデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれています。クラウド・ビッグデータ・ソーシャル・モビリティと呼ばれる第3のプラットフォームというインターネットサーバークライアントの次にくるプラットフォームをベースにすべての企業がIT企業になるというものです」(田中社長)

田中社長は航空会社であるANA社(全日本空輸株式会社)が、ホームページで航空券を購入してくれるお客様を誘致するために、同社内で広告運用やアクセス解析、SEO施策を行っていることを例に挙げ、「これってECサイトと一緒ですよね」と例えました。

「ANAさんというと飛行機の会社だという認識ですが、言い方を変えるとIT企業が飛行機を持っている、飛行機を持っているIT企業という言い方もできると思います。これが『すべての産業がITをベースに構築されている』という考えである【デジタルトランスフォーメーション】の考え方です」(田中社長)

  • あると便利 ⇒ なくてはならない
  • ハードウェア重視 ⇒ ソフトウェア重視
  • コスト削減手段 ⇒ チャンスの創造(直接営業に繋がる)

ITは現在の社会にとって上記のように変化してきており、今ではITがなければならないビジネスが増えてきていると考えられています。

イノベーションとクリエイティビティが重視される時代へ

続けて、近年求められている働き方について「従来のビジネスは、いかに安くモノを作って、大量生産をして効率化するかが重要だった。しかし、今やソフトウェアとサービスが重要になってきており、クリエイティビティをいかに出していくかというような時代に変わってきている」と田中社長はお話されます。

「【労働者の数×労働時間=価値(効率性・管理)】では既になくなり、近年は【労働者の質×創造性=価値(多様性・自由)】に変化していることにみなさんも気付き始めている。誰もができるところに合わせるのではなく、その人の一番できるところにあわせて、人によってアウトプットは違うが、それイコール価値になってきていると思えばいいと思っています」と引き続きお話される田中社長。

これまでは20歳から60歳の、元気で徹夜をできる男性を家に帰さないで働かせることが一番効率的だと考えられてきましたが、実際はトータルで見ると医療費が発生したり、パフォーマンスも下がることから全体的にみると良いことが少なく逆に非効率であると社会は気付き始め、これにより【効率性を追求する社会から「多様性」を活かすことで、新しい視点で物事を見ることができる】社会に変わってきたと紹介は続きます。

そんな中「ITにより個人でできること」がすごく増えてきたため、個人の能力が最大化。これまで何をするのでもかかっていたコストが、IT化とインターネットの発展によってどんどんとコストが下がっていったとされています。組織化して大人数でやらなくても一人で何でもできるようになってきたため、地域に寛容性さえあれば達成できる時代になったとのこと。

「スタートアップも新規創業ではなくて企業の中でスタートアップを行うのも有。飛び出して背水の陣でやる必要はない」とし、社内で新しいビジネスを起こすことにより、世の中がさらに良くなっていく」という可能性を示唆。そして最後に「これから人口はどんどん減っていきます。労働力が減ったとしても、創造性が拡大されれば、当然成長性は維持できます!」とお話をされ、まとめとして下記の3つを最後に紹介して基調講演を締めました。

  1. <IT×〇〇>デジタルトランスフォーメーションによって、ITベースで世の中が変わり始めている
  2. 知識労働、クリエイティビティをいかに発揮するのか。人材が不足しているので、一人当たりのクリエイティビティが重要に
  3. スタートアップは世の中を破壊的に変える。鹿児島が持つ寛容性の中で、クリエイティビティを発揮できる起業家がでてくることが望ましい

共催3社によるLTセッション

田中社長の基調講演のあと、株式会社リリー野崎社長、株式会社シナプス中野さん、株式会社現場サポート吉田さんの3者によるLTが行われました。3社ともコミュニティを広げもっと鹿児島を盛り上げようと熱量の強い会社で、来場者も3社の取り組みに真剣に耳を傾けていました。

本記事ではLTの内容を簡単にですがご紹介いたします。LTの詳細につきましては、株式会社リリーの公式ブログにて取り上げる予定となっておりますので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。

「コミュニティーと連携した技術活用」株式会社リリー 代表取締役社長 野崎さん

株式会社リリーは鹿児島でウェブ制作業務をメインで行う制作会社です。今回登壇された野崎社長は、自社の簡単な紹介のあと、技術コミュニティについてお話をされました。

野崎社長は、エンジニアのコミュニティの特徴は「会社関係なく自発的に個人の意思で参加している」「オープンである(オープンな雰囲気で行われる)」「フラットである(会社の立場や地位など関係なく行われる)」であるという3つを挙げました。

また、野崎社長が考える「エンジニアが技術コミュニティに参加する意味(メリット)」として、以下の3つを挙げました。

  • 技術者同士でのネットワークができる
    会社間を超えた技術交流できる知人がいるということは、自分のモチベーションや向上心に影響しやすい。技術面以外でも勉強になることが多々ある!
  • 刺激になる
    コミュニティに参加する人は自発的に来る人なので「熱量」のある人が多く、良い影響・刺激を受ける。
  • 自分の立ち位置(レベル)を知れる
    社内にいると、知識や技術が偏りがちなので、他社の技術者と関わることで自分の技術やレベルを比較することができたり、自分の知らない情報を得られる。

そして最後に「エンジニア(技術者)がコミュニティに参加するメリットは多岐に渡るので、積極的に参加するべきというお話で締められました。

「ネットワークエンジニアとコミュニティ~事業とエンジニアを成長させるコミュニティ活動~」株式会社シナプス 中野さん

生まれも育ちも鹿児島という株式会社シナプスの中野さんは、社是でもある「自分たちで作る」で実際に作ってきたものの事例を紹介しながら、シナプスの事業と歴史を紹介されました。

シナプスでは自社エンジニアスタッフ成長のため、2017年から積極的にコミュニティ活動を行い、去年だけで36回のイベントに参加されたそうです。その結果として、扱ったことのない技術に触れることができ、できている事と、できていない事を客観的に知るきっかけに。同時に技術の最新動向を知ることができたとお話されました。

「エンジニアとの協働で実践する働き方改革」株式会社現場サポート 吉田さん

建設業に特化したクラウドサービスの開発、提供をしている株式会社現場サポート。吉田さんは、IT企業だけではなく地方のユーザー企業を含めた「働き方改革」のためには、ユーザー企業とIT企業との間にある大きな壁(ITに関する知識や費用感の差異)をきちんと事前に取り除く必要があるとお話をされました。

また、非エンジニアが円滑にエンジニアと協働する上で必要な心構えとして

  • 目的(目標)を共有し、手段(解決策)は託す
  • エンジニアの専門領域(自分がわからない範囲)に対して先方の意見を尊重する姿勢
  • エンジニアの責任範囲に対して自分の責任範囲を明示する(役割分担)

上記の3つを挙げ、最後にまとめとして

  1. 地元ユーザー企業もコミュニティを活用してIT人材を増やしていく必要がある
  2. 社長もエンジニアもフラットに協働するスタンスが必要

これを行うことによって「最終的に誰もがIT技術の恩恵を享受し働き方改革と事業成長を進める基盤が、これでようやくできるようになるのではないか」とお話をされました。

4社パネルディスカッション 〜エンジニアとの協働で実践する働き方改革〜

最後に、参加した4社によるパネルディスカッションが行われました。モデレーターは株式会社リリーの野崎社長で、それぞれ決められたテーマに沿って登壇者が意見を交換し合いました。また、株式会社シナプスからは中野さんに代わって、取締役会長である高橋美博さんが登壇されました。

技術(IT活用)編

吉田:会社としての力の源にもなるのでキャッチアップしていかないといけないのですが、到底一社では賄えないなと思っているので、いろんな人の力を借りなければいけないなというところです。なので、うちのエンジニアの方にもコミュニティに参加し、みなさんと繋がって深めて言ってもらえればと思っています。

高橋:これからの社会構造を大きく変えていくような技術やイノベーションについては、いかに先行して事業に活かすかが重要ではないかなと思っています。

田中:技術のキャッチアップは、昔のように誰かが決めてその通り作っていけばいいという規格競争ではなくなっている。コミュニティと一緒に実際使う人と知ってる人と作る人が同時に進行させていかないといけない。今はコミュニティから最新情報を得たり、自社のエンジニアがそのコミュニティにいることでその業界でイニシアティブをとれたりすることがあるので、コミュニティは必要不可欠だと思います。

これからの働き方編

高橋:実は、昨年から10年間で毎年1社ずつ会社を作っていくという目標を持っています(既に2社が分社済み)。これは私が社長になるのではなくて、従業員からそれにチャレンジしてもらっています。社長という立場で、最大限の力を発揮できるチャンスを、若い従業員に挑戦してもらっています。個人の能力をいかに発揮してもらうかという環境作りが大切だと考えています。

田中:働き方を変えるためにはツールを変える必要もあると思っています。電話やメールって生産性を落としていると思いませんか?そもそも何故メールアドレスが必要なのかと思いませんか。個人間のやりとりは知っている人同士であればメッセンジャーやLINEでできちゃうので、メールを送る必要がないですよね。私はメールを見なくなったら(メッセンジャーに切り替えたら)生産性があがりました。そもそも働き方を変えるためにツールを変えるということも必要だと思っています。

田中:また、以前は長時間労働をするべきだと思っていました。私の今があるのは長時間労働のおかげだ! とつい1年前まで思っていたんです。しかし、1年前に1か月程休んだのですが、そこで「まぁ働くもんじゃないな」と思いました(笑)。2つ気付いたことがあるのですが、1つは自分が休んでも回る会社を見て寂しくなりました。「なんかあったらメッセージ送れよ!」と伝えていたのですが、ついには一度も来ませんでした。僕がいない間、マニュアル化されてない僕の仕事を苦労してサポートしてくれた社員がいたんですね。いない間僕の仕事をフォローしてくれた社内のみんなに感謝しました。もう1つは、そもそも若い時に仕事をしすぎずちゃんと寝ていたらもうちょっといいサービスを作れたのではないか?と思うんですよ。寝ないでサービスも作れるんですが、もっといいサービスを作るためには寝たほうがいいと思います!働く時間が長くなることによって得られるものは個人の快感ですが、マクロで言うと組織にとってよくないし、自分の生産性やクリエイティビティにもよくないと今は思っています。

成長戦略編

高橋:今までは自前(自社内の技術)主義で解決をしようとしてきましたが、それでは今のスピードに追いつかない。なので、自分の中で技術を培っていくのはこれからの時代のニーズに合っていると感じています。

吉田:既存の事業にもまだまだ伸びる余地があると思いますので、それに対して営業的な投資をしたりして、ニッチな世界ではあるのですが、日本一になるぞという目標を社内で掲げています。一方で、それだけじゃ厳しくなってくるタイミングがあると思うので、違う切り口で新しいサービスをお客様に提供していこうと動きを行っています。新しいことをやろうとするにも余白を頑張って作っておかないと新しいことも取り組めないので、そこに関しては「意識的に新しいこと常にしないとね」と毎年戦力検討会で新案を拾い続けています。ただそこで必ず新しいことのスペースといったものを設け続けており、そういったことを意識してもらえるように枠を作ってもらっています。

おわりに ~ますますの盛り上がりを感じさせる鹿児島~

パネルディスカッションの最後には2018年7月14日(土)に鹿児島の桜島にて開催されるエンジニア向けイベント「さくらじまハウス2018」の開催も告知され、ますます会場の熱量が上がりました! また、セミナー後には懇親会も開催され、登壇者来場者が入り乱れ「みんなで鹿児島をもっと盛り上げよう!」と団結することもできました。

さくらじまハウスとは?

「さくらじまハウス2018」は、「IT技術の可能性を信じるすべての方々」のためのイベントです。たえず最前線でご活躍されているゲストの刺激的なお話を体感し、チャレンジのきっかけを得ることができます。「IT技術の未来」そして「IT技術×産業」をテーマとしたパネルディスカッションやLTを通じて、エンジニアはもちろん、経営者や学生にも楽しんでいただけます。”西郷どん”でも注目される鹿児島を熱量で満たし、IT技術の可能性を爆発させましょう!

引用:さくらじまハウス2018特設サイトより

近年、様々な理由で盛り上がりを見せ注目される鹿児島。今回来場された方、登壇した企業を中心に、鹿児島の更なる盛り上がりを予感させるイベントとなりました。次回は、「さくらじまハウス2018」の様子をお届けいたします。お楽しみに!