データセンター運用管理のお仕事
さくらのナレッジをご覧の皆様、はじめまして。
私は、さくらインターネット 運用部 IDCチームの朝倉と申します。
今回は、私が担当しているデータセンター運用管理のお仕事内容や、今この職場で自分の経験をどう生かしているか…ということについて、ご紹介させていただきます。
私がさくらインターネットに入社した訳
まずは、手前味噌ですが、私がなぜさくらインターネットに入社したか…ということをご紹介します。
実は、さくらインターネットにはいろいろな経歴をお持ちの方が集まっているのですが、私も、初めからITの世界に身を投じていた訳ではありません。
初めは幼稚園教諭でした
私は学校を卒業すると、その後はかなり長い間幼稚園の先生や保育士の仕事をしていました。
幼稚園教諭からIT業界、それもインフラの世界への転身は、とても珍しがられます。(女性…というだけでかなり珍しいレベルです…)
話せば長くなるので、あまり詳しくここではお話ししませんが、幼稚園の先生から転職しようと思った時、実は「何でもいいからPC関係の仕事したいな」程度のざっくりさでした。(^_^;)
たまたま、子どもたちと話していて「先生は大きくなったら何になるの?」と聞かれた時、目の前に広がる大きな夢を語る子供たちと比べて、自分はこの先何があるんだろう…と深く考えたのが転職のきっかけなのですが、実際のところ「ざっくりIT系」以外自分が何をしたいのかよくわからないまま、地元北海道を離れ、仕事も決まっていないのに東京に出て一人暮らしを始めました。
サーバとの運命の出会い
初めは「まだなにもできませんが、気力と体力だけは誰にも負けません!お給料も最低限でいいですから入れてください!」と訴えたらあっさり内定が出た、小さな印刷会社でWebデザインの仕事からスタートしました。
そこでしばらく修行し、その後別の会社でプログラマーとなるのですが、なんと会社の経営不振という危機に見舞われ、当時所属していた開発部が自分を残して全員退職(^_^;)
残された200台ほどのサーバを、全くサーバの知識がなかった当時の私が管理することになったのですが、ここがターニングポイントでした。
今でも師と仰ぐ素晴らしいエンジニアの方や、助けてくれる仲間に出会うことができ、毎日障害対応で地獄のはずが、いつの間にかとても楽しくやりがいを感じていたのです。
また、当時お世話になっていたデータセンターの方にも、大変良くしていただきましたし、色々と勉強させていただきました。
技術的な相談にも親身に乗っていただいて、ずいぶん助けていただきました。
私は自然に、データセンターの仕事に憧れを持つようになりましたが、経営不振だった前々職の会社をついに辞めることになった時、経験が少なかったこともあり、その時はデータセンターへの転職が叶いませんでした。
そしてさくらインターネットへ
憧れだったデータセンターの仕事。
そして、いつか叶えたいと思っていた地元での就職。
さくらインターネットが石狩データセンターを竣工し、その2つの願いがいっぺんに叶えられるチャンスが巡ってきました。
実家から車で5分ほどの距離にデータセンターができる…なんて、もう運命としか思えませんでした。
いろいろなご縁と周りの方の温かい協力に導かれ、2012年6月にさくらインターネットの社員として働くことになりました。
前置きが長くなりましたが、ここからは私が担当している、データセンター運用管理のお仕事についてご紹介いたします。
データセンター運用管理のお仕事
データセンター運用管理と一口に言っても、様々な仕事があります。
ここでは、私の所属する運用部IDCチームの仕事内容について、ご紹介します。
データセンターを守る
まず、データセンターとしてお客様へ提供する大切な4つの条件を保ち続けなければなりません。
- 堅牢でセキュアな建物
- 安定した電源供給
- 高速で大容量の回線
- 適切な空調管理
これらの条件が一つでも、少し途切れただけでも、お客様にご迷惑をかけてしまいます。
この条件を守り続けるのが私たちの仕事です。
設備に関しては、専門の保守業者にお任せする部分も多いですが、日常的な点検や、サーバ室の環境監視などを24時間365日のシフトを組んで対応しています。
また、緊急時には迅速に社内に情報展開したり、テナントのお客様へお知らせしたりできるよう、体制を整えています。
サーバ室内のちょっとした変化や異常も見逃さないためには経験が必要ですが、他の拠点のノウハウも取り入れながら、品質を向上すべく日々取り組んでいます。
ホスティングサービスの構築
そのため、ホスティングサービスの構築も、私たちの仕事です。
開発部などで設計した通りの構成で構築を行いますが、構築と一口に言ってもいろいろな作業があります。
- ラック構築
- 使用機器の開梱、在庫のシステム処理
- OSインストール、パッケージ適用、BIOS設定、IPMI設定
- ラッキング
- 配線
IDCチームでは、構築の中でも主に物理的な作業を担当しており、特にラッキングや配線などはお任せいただくことが多くなっています。
ラック内の機器配置や、配線されたケーブルの整線の仕方によっては、構築後の運用に支障をきたしたり、機器に障害を発生させたりする可能性があるため、日頃から訓練を積んだり、勉強したりしています。
他の部署の方が構築したラックをチェックし、ルールに沿った構築ができていない場合は、やり直しをすることも…。
力仕事も多く、多数のタスクを漏れなく効率的にこなす必要があるため、大変です。
IDCチームだけで作業が完結しないものも多いため、納期までに確実に作業を行うためには他部署との連携もとても大切です。
ホスティングサービスの保守
また、仮想サーバサービス(さくらのVPS、さくらのクラウド)では社内からのメンテナンスの依頼が頻繁にあり、特に物理的な作業についてはIDCチームが対応しています。
サーバの保守では、まず障害を取り除いて復旧させることを最優先とするため、リブートで状態が復旧しなければ、障害が発生していると思われる機器を、センターで保管している保守用機器と交換します。
その後、障害被疑機の保守をベンダーに依頼し、不良部品の交換が終わったものを保守用として倉庫に戻すまでがIDCチームの仕事です。
保守対応をいかに効率的に素早く行うか…というところで、工夫を積み重ねています。
また、多数のサーバの中から保守が必要なサーバを間違いなく特定するために、ダブルチェックで確認するなど、確実な作業のための施策を日々追及しています。
在庫管理
資材や機器によっては、納期が長いものもあるため、新規構築のスケジュールに対応できるよう、納入時期を計算し、資材管理の部門や、構築依頼を出している部門と調整を行います。
また、サービスによっては短納期の構築へも対応するため、あらかじめある程度の在庫を保持しています。
提供中の機材についても、保守が必要になった時にすぐ対応ができるよう、保守用の機材を準備しています。
これらの在庫を正確に管理するために、納入時のシステム入力や識別用のQRコードの貼り付け、保管場所移動時のシステム処理、定期的な棚卸などを行っています。
保管する倉庫についても、整理整頓して置き場所をきちんと決めることはもちろん、倉庫の空き状況や倉庫保管物の利用状況などに応じて、定期的なレイアウトの見直しも行っています。
石狩データセンターでは、データセンター棟が増えるにつれて物量が増えたり、倉庫が増えたり、新しいサービスが増えたりしていきますが、広いセンター内で物や人の移動に無駄がないようにすることが、作業の効率化には欠かせません。
お客様対応
気持ちよくサービスをご利用いただけるように、お客様対応についての教育や訓練も行っています。
入局の対応については、館内のセキュリティを保持するためにも、間違いが許されない業務となりますので、ミスが起きないよう手順に様々な工夫を取り入れています。
その他
「データセンター運用管理のお仕事」として、5つの要素について説明させていただきましたが、それ以外にも細かい仕事が多数あります。
ごみの処理や清掃、石狩特有ですがセンター場内の除雪、つらら落とし…。
他にも、データセンターの維持管理にかかわることは、雑用でも何でもこなさなければなりません。
たくさんのタスクを、漏れなく確実に効率的にこなしていけるよう、各拠点が独自の工夫を重ねています。
また、どのオペレーターも同等の作業品質で業務にあたることができるよう、教育や訓練を行ったり、手順を整備したりすることについても、力を入れて取り組んでいます。
大公開!私のとある一日
ほんの一例ですが、私のとある一日をご紹介させていただきます。
私は主にオペレーターの管理や、データセンターにテナントとして入居されているお客様の窓口担当、拠点の管理補佐などを行っておりますが、比較的ミーティングへの出席や、オペレーターに共有するドキュメント作成などが多くなっています。
午前中はシフトの引継ぎや作業進捗の確認、メールチェックなど、毎日決まって行う作業がメインです。
この日の午後は、継続教育と言って、オペレーターが頻繁に行う作業のロールプレイングを行ってもらい、正しく手順通りに対応ができているかどうかをチェック・指導していました。
また、教育資料作成の締め切りが近かったので、2時間ほどその作業に当たり、テナントのお客様とのミーティングにも出席しました。
ミーティングを含めて日時指定のある作業、納期がある作業、手が空いたら行う作業にタスクを分類し、優先順位を決めて1日で行う作業の計画を立てています。
また、残業にならないよう、タスクの進捗管理を自分自身でしっかり行うように心がけています。
私だからできる!男ばかりの職場で生かせること
私がこの職場で、自分ならではの能力を生かせる分野として意識して取り組んでいることについてご紹介させていただきます。
気持ちの良い環境づくり
そういった環境では、そこで働く人への心理的な影響もさることながら、作業が非効率になったり、ミスを誘発したり、セキュリティに問題を発生させる可能性があるなど、作業品質の低下を招きます。
男性だから片付けることが苦手、女性だから得意…ということもないとは思うのですが、私は率先して気持ちの良い職場環境づくりに取り組むようにしています。
教育・指導
多数のオペレーターが働くデータセンターでは、教育や指導によって個々のばらつきをなくし、作業品質を一定以上の水準に保つようにしなければなりません。
私の「幼稚園教諭だった経験」は、こういった業務への取り組みに生かせるヒントをたくさん与えてくれました。
オペレーターは子どもではありませんが(^_^;)教育プログラムの作り方や、目標設定の仕方、個人の特徴をとらえた指導の仕方、意欲を引き出す方法など、教育の仕事を通して学んできた知識がとても役に立っています。
「あきらめずに教育・指導を続ける」という姿勢を崩さずにいられるのも、幼稚園教諭として働いた経験が生きているのではないかと思います。
入職時は経験が乏しく、なかなかたくさんの仕事を正確にこなせなかったオペレーターが、ある程度の期間を経て着実に成長していく姿を目の当たりにし、自分の取り組みに対して自信を深めるとともに、改めて教育・指導の重要性を再認識しています。
お客様の立場に立って考えること
私がIT関連への転職を目指して東京に出た時、初めて借りたサーバが「さくらのレンタルサーバ」でした。
当時はサーバの知識が全くなかったので、自分で少しずつ勉強しながら、レンタルサーバの中でWebサービスの構築ができるようになり、今でもお金を払って使い続けています。
また、前職の会社はさくらインターネットの大口ユーザであり、私はサーバ管理者としてさくらインターネットとの窓口を務めていました。
今でも「お客様目線」を持ち続け、自社のサービスを外から眺めることで、更なる品質向上につなげる動きをしていきたいと考えています。
個人的な友人にも、エンジニアがたくさんいますので、そういった方からの批評なども積極的に聞き、大切にしたいと考えています。
自分の力を生かすこと
データセンターは男性が9割以上(全員男性の拠点も…)を占めるまさに「男の職場」なのですが、だからこそ私が生かせる能力があります。
まずは自分をよく知ること、自分に何ができるのか、今までどんな経験をしてきたのか…ということとしっかり向き合うことが、重要なことなのではないかと思っています。
そして、担当する仕事を「深く理解する」ということが必要です。
オペレーターの主な業務であるデータセンター内の作業においては、力仕事や高所作業など、一見女性に不向きな業務が多いのですが、私はデータセンターの仕事はそれだけではないということを強く自覚していたので、自分の力を生かせる場所をうまく見つけることができたのだと思います。
おわりに
私は、まだ社歴も短く、まだまだ学ばなければならないことがたくさんあると考えています。
仕事の面で、周りの方に助けていただきながらこなしている業務もたくさんあります。
ですが、幼稚園教諭の経験も含めて、無駄になった経験というのはないと実感しており、社歴の長い方、インフラの道が長い方にも負けない発想・アイディアを持っていると自負しています。
何より、私は現在の仕事や、さくらインターネットが「大好き」です。
幼稚園教諭が天職だと思っていた時期もありましたが、いろいろな経験を経てこの職場にたどり着き、今ではこの仕事が実は天職だったのではないか…と思っています。
一生懸命に取り組んだ仕事が結果的に「好きな仕事」になった一つの事例として、読者の皆様に何かが伝われば幸いです。
私はこれからも、大好きな仕事に取り組めることへの感謝の気持ちを持ちながら、データセンター運用管理のお仕事にしっかり取り組んでいこうと思います。
長い記事になってしまいましたが、最後までご覧いただき、ありがとうございました!
>>参照:現役JD(女子大生)が、さくらのデータセンター見学にやってきた!