新型コロナウイルス(COVID-19)に対するデータセンタ各社の対応まとめ
2020年4月現在、全世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大にともない、データセンタにも影響が出ています。新型コロナウイルスの感染の拡大を抑えるためには、 他人と一定の距離を保つ社会的距離(ソーシャル・ディスタンシング)をとることが有効とされています。そのため、一部の国や地域では、ロックダウンと呼ばれる外出禁止や生活必需品以外の店舗閉鎖などの措置がとられています。
そのような状況の中、インターネットは社会的距離をとりつつも、リモートワークなどを実現する極めて重要なツールとなっており、インターネットの一部であるデータセンタは社会を支えるインフラとして重要な役割を果たしています。そのような状況の中で、データセンタ事業者各社は、データセンタの運用を継続するよう努力をしています。今回の記事では各社がWebで公開している取り組みについて2020年4月3日現在の状況をまとめます(4/9 18:20更新)。
日本では、いくつかのデータセンタ事業者では入館者の体温チェックが行われていますが、海外においては顧客の入館禁止にまで踏み込む事例が出てきています。
外資系データセンタ事業者
SuperNAP
Italy’s coronavirus lockdown: The view from SuperNAP (2019/3/12)
イタリアのコロナ封鎖、SuperNAPの動き (日本語訳)
イタリア最大のデータセンタ事業者であるSuperNAP Italiaでの取り組みを紹介した記事です。イタリアではロックダウンが行われる中、スタッフが勤務する際には、移動制限措置を許可する説明書類を携帯しているとのこと。また、勤務者の間での交差感染リスクを軽減するため、「3グループのうちの1グループが1週間勤務した後に、別のグループがもう1週間働くといった形で、相互汚染を回避している」としています。また、完全な封鎖が行われた場合に備えて、食料を備蓄しており、「睡眠、食事、衛生と彼らが必要とするあらゆる面においての準備を整えている」としています。また「ここ数週間で、消費電力とインターネットトラフィックが約15%増加した」とのこと。
Equinix
COVID-19流行に対するエクイニクスの対応 (2020/3/26)
COVID-19: Protecting our Critical IBX Data Center Infrastructure (2020/3/26)
Equinix bans contractors and customers from data centers in France, Germany, Italy, and Spain (2020/3/23)
Equinix、仏、独、伊、スペインのDCへの入館制限を実施 (日本語訳)
大手データセンタ事業者のEquinixでは、フランス、ドイツ、イタリア、スペインでは3月23日から、またイギリスでは3月31日から訪問者、顧客、顧客の請負業者、そしてEquinixの緊急性の低い従業員、請負業者および協力ベンダーの入館を緊急かつ必須の業務を除き禁止しました。特別な許可を有し、政府から重要インフラの指定を示された顧客のみ、緊急作業のためにのみ入館できます。
アメリカ大陸など、アジア太平洋地域を除く地域のデータセンタへの入館は、審査の上、完全予約制としています。また同社は、当該地域においては顧客の作業については重要な業務に限定するよう求め、通常、顧客の入館が伴う事業上重要な作業については、同社のスマートハンズ・サービスで対応するとのこと。なお、日本を含むアジア太平洋地域のデータセンタについては予約制の対象となっていません。
Digital Reality Trust
Statement to Customers and Partners Regarding COVID-19
大手データセンタ事業者のDigital Realty社の取り組みに関するステートメント。同社の感染症対策フレームワークなど、BCP(事業継続計画)についても詳しく説明されており、非常に参考になります。
なお、DCD(Data Centre Dynamics)の報道(下記URL)によれば、新型コロナウイルスの陽性者がニューヨークのデータセンタにおいて訪問したことなどから、施設の消毒作業を行ったとのこと。消毒に伴う停止や障害はないとのことです。
Digital Realty disinfects data centers after individuals with Covid-19 visit sites; no shutdowns or outages (2019/3/25)
Digital Realty、コロナ感染者を確認後施設を消毒し稼働を維持 (日本語訳)
Colt
Colt DCSの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)取り組みについて
Coltは、欧州とアジア各国でデータセンタサービスを展開していますが、日本とイタリアでかなり対応が異なります。
Coltの日本のデータセンタ
4月9日には日本を含む世界各地での対策が大幅に更新されました。顧客に対しては、
- 訪問は必要不可欠なデータセンター館内作業のみに限定し、スタッフおよび請負業者の来館者数を最小限に抑える
- 物品の配送手配などについては延期、もしくは配送数を最小にするなど、あくまで「必要不可欠な当社データセンター館内作業」に伴う物品の手配で、かつ5日以内に受け取れる配送に限る
よう求めています。また、新型コロナウィルスの感染拡散を最小限に抑えるため、以下の対策を講じているとのことです:
- 全共有エリアの閉鎖、自動販売機類の電源停止。来館者との接触の極力排除、かつ来館者との接触の場合は常時ソーシャルディスタンス2メートルの保持。顧客に対しても協力を求めています
- 対人接触を極力回避する方法でリモートハンズサービスを遂行。ただし依頼数の増加傾向に伴い、遅延が発生する可能性があるとしている
- 不特定多数のデータセンター来館による接触感染のリスクを軽減するため、必要不可欠なデータセンターの計画予防点検を除き、不要不急の点検の延期。
- 顧客の来館依頼に対し、同社が来館目的から緊急性及び必要性を鑑みて、都度可否を判断するとしています。場合によっては来館の延期をお願いすることもあるとのこと。
- 特別に許可された部門を除き、在宅勤務の義務付け
来館者に対しては、以下の点を確認するよう求めています。
- インフルエンザにかかっていないこと、もしくは体温が37.5度を超えている、深刻な呼吸障害のある咳が出る、などの似たような症状を発症していないこと
- COVID-19の感染者と知ってか知らずとも濃厚接触をしていないこと
- COVID-19の感染者との濃厚接触について、当局から連絡を受けていないこと
さらに、FAQにおいて、日本の全サイトでは入館時に体温測定を実施し、手の消毒液の用意があることを明記している。マスクは「多くのサイトで入手可能」で、調達できない場合には国外からの供給を目指しているとのことです。ただしマスクは、一般の予防用ではなく、あくまでもサイトで具合が悪くなった人、ウイルスを感染させる可能性がある症状のある人への応急処置としてのみ提供との位置づけとしています。(4/9追記)
Coltのイタリアのデータセンタ
- 最新の首相令で発表された措置に従って、Coltイタリアでは当社サイトへのアクセスを制限し、リモートワークを導入しました。従業員は、重要なビジネス要件が発生した時のみ出張(国内)を可とします。
- 当社施設、ノード、データセンターへのご来館要求の緊急性と必要性をケースバイケースで判断させていただきます。場合によっては、ご来館の延期にご同意をお願いします。
- ネットワーク、データセンター運用への今後の影響を管理するため、十分にテストされた事業継続計画を実施しています。出張をビジネス上の重要な理由によるもののみとするため、ネットワークエンジニアリングと新しいサービスリクエストはケースバイケースでの対応とさせていただきます。
- Coltイタリアの施設への全ての来館者に、以下を提示、および確認するよう依頼しています。
- 過去30日間に、当局によって特定された国、高リスク地域のいずれかに旅行していないこと
- 高リスク国、または高リスク地域のいずれかに旅行したことがある同居者がいないこと
- 体温が37.5度を超えている、または深刻な呼吸障害のある咳が出るなどの、インフルエンザにかかっていないこと、もしくは似た症状が発症していないこと
- 過去30日間に、高リスク国や地域から訪問者でそのような症状があるものと接していないこと
- COVID-19の感染者と知らずとも濃厚接触していないこと
- COVID-19の感染者との濃厚接触について、当局から連絡を受けていないこと
イタリアなどの欧州ではデータセンタへの入館を制限するケースが一般的になってきています。
日系データセンタ各社
次に日本のデータセンタ各社の来館者への対応状況についてまとめました。
さくらインターネット (4/9 17:30更新)
弊社データセンターに来館される方へのお願い(2020年4月7日15:30更新)
- 以下の対象者にデータセンターへの来館自粛をお願い
- 風邪症状や37.5度以上の発熱がある方
- 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある方
- 新型コロナウイルス(COVID-19)に関する14日間の自宅等での待機要請を受けている方
- 新型コロナウイルス感染症罹患者の方
- 新型コロナウイルス感染症罹患者との接触がある方
- データセンターへ来館者に対して、以下の点をお願いしている
- 可能な限りマスク着用
- 風邪や季節性インフルエンザ対策と同様に、咳エチケット等の感染症対策実施
- データセンター内に配備した手指消毒液で、入退室時には手指消毒
- 複数人での休憩室・喫煙室の利用を控えること
また、データセンタ側での対策として
- 複数の方の接触機会が多いドアノブや生体認証装置等は、アルコール消毒
を随時実施している。
さらに、入館を緊急且つ業務上必須な場合に限定するよう呼びかけており、複数の入館申請が同時間帯に重複している場合、入館時刻の調整・変更などのお願いするとのこと。
NTTPCコミュニケーションズ (4/9 17:30更新)
新型コロナウイルス感染症に関する弊社の対応について (2020年4月8日)
NTTPCコミュニケーションズにおける対応としては、次の予防策を実施しているとのこと。
- 消毒液の常設
- ドアノブ等の除菌清掃
- マスクの着用
- スタッフの体温確認
また、データセンタへの入館に際しては、手指の消毒、可能な限りのマスク着用等を実施と、高熱、咳等の体調不良の症状がみられる際の入室を見合わせを求めています。
緊急事態宣言の発令後もデータセンター設備運用及び監視、入館及びリモートハンド作業については、現時点では運用を継続する方針。 ただし、感染拡大防止を図るため、データセンター内会議室の利用、見学を停止するとのこと。一部サービスにおいては通常より納期が長くなる場合があるとしています。(4/9追記)
NEC
NECのデータセンタでは新型コロナウイルス感染症への対策として、以下の対応を実施している。
- データセンターの受付にて体温を検温、37.5℃以上の方には、入館をお断り
- 共用設備の利用自粛
- 手指用消毒液の設置
SCSK
新型コロナウイルスの発生に伴うデータセンターでの対応について (2020/3/25)
SCSKのデータセンタ「netXDC」では以下の対応を講じている。
- 入館日から14日以内の海外渡航者、海外渡航者と濃厚接触の可能性がある方の入館をお断り
- 検温を実施し、37.5℃以上の発熱が認められた場合は、入館をお断り
- 顧客は 「入館にあたっての確認書」を事前に提出し、同社で確認後に入館可能
- データセンター見学は、5月10日(日)まで中止
IDCフロンティア(4/9 17:30追記)
相談窓口の対応時間、サービス提供の開始時期、作業依頼の納期について通常と異なる場合があるとしている。
詳細については契約者用ポータルページについて記載しているとのこと。
SINET5 (4/9 17:50追記)
新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言時のSINET5データセンタ入館対応について
日本の学術系ネットワークであるSINET5においては、緊急事態宣言発効時には、地域別にデータセンタへの入館対応が異なるとしている。
- 緊急事態宣言対象地域内にあるデータセンタ
- すでに申請が受理されている入館申請については、緊急事態宣言後であっても申請通りに入館が可能
- 緊急事態宣言後に提出された入館申請については、緊急入館申請(障害対応) については通常通り申請を受付けるものの、通常入館申請(接続対応) については、 地域によっては受理までに時間を要する場合がある
- 緊急事態宣言対象地域外にあるデータセンタ
- 通常通りの対応
まとめ
このように、各者ごとの対応は異なりますが、概して新型コロナウイルスの感染が広がっている欧州地域のデータセンタは事業者が強制力を持った対応をしているのに対し、現時点では日本では、入館者の自主的な判断を促すケースが多いようです。
なお、さくらインターネットでは新型コロナ情報まとめサイト向けのサーバーを無料提供しています。今回の新型コロナウイルスの対応にあたってITインフラにお困りの際は、以下のURLのお問い合わせ先までご相談ください。
https://www.sakura.ad.jp/information/pressreleases/2020/03/23/1968203129/