NaniwaNOG 2ミーティングで会場ネットワークをゼロから構築してみた

はじめに

2024年10月、兵庫県姫路市でNaniwaNOG 2ミーティングが開催されました。主に関西のネットワーク技術者が集うこのイベントで、新たに発足したNOCチーム "Team Shirankedo" が会場ネットワークの構築・運用を担当しました。本記事では、さくらのクラウドを活用したTeam Shirankedoの活動を、チームメンバーである近畿大学丸岡、中田、温井がご紹介します。

NaniwaNOGについて

NaniwaNOG(Naniwa Network Operators Group)は、インターネットにおける技術的事項や運用に関する事項を議論、検討、紹介することで、関西地域の技術者および利用者に貢献することを目的としたグループです。議論や情報提供の場として、年1回程度一堂に会する場としてのミーティングを開催しています。

Team Shirankedoについて

学生がネットワーク構築を体験する機会は現状限られており、大学などの教育機関でそのような環境が整っているところは多くありません。また、イベントネットワーク構築においても、JANOGのように大規模なものでは、最初の一歩を踏み出すにはハードルが高く感じられます。そこでTeam Shirankedoは「失敗してもOK。なんか上手く行ったわ、知らんけど。」の考え方で、ネットワーク構築に興味を持つ初心者が気軽に取り組める環境を目指してスタートしました。

Team Shirankedoは、Webチーム、ネットワークチーム、配信チームの3つのチームで構成されています。 WebチームはNext.jsとmicroCMSを使用してNaniwaNOGのホームページを作成し、ネットワークチームは会場ネットワークの構築および監視を担当しました。また配信チームは、当日の会場の様子をYouTubeで配信する作業を行いました。 約1ヶ月の準備期間中、毎週対面およびオンラインの両方で行われたハンズオン演習を通じて、基本的な設定確認から本番前日のホットステージまで、段階的に理解を深めていきました。経験の浅いメンバーでも気軽に質問や相談ができる環境の中で、試行錯誤を重ねながら本番に向けた準備を進めました。

図1: ハンズオン演習会の様子
図2: ホットステージの様子

今回で2回目となるNaniwaNOGと、初めてとなるNOC活動。この活動でネットワーク技術に興味を持つ学生・若手が増えることも期待し、関西のネットワーク業界の発展に積極的に関わっていきたいと考えています。

ネットワーク構築

今回、Team Shirankedoの学生を中心にネットワーク構築に挑戦しました。ネットワークチームのミッションは「来場者が最低限インターネットにアクセスできる環境を提供すること」です。「快適さは重視しないのか?」と思われるかもしれませんが、初回からJANOGのような高度なネットワーク構築を目指すのではなく、「最低限接続できれば良い」という現実的な目標を設定しました。この方針により、学生たちが「今回はこれができた」「これが課題だった」「次回はこう改善しよう」といった経験を積めることを重視しました。

ネットワーク構成

今回構築したネットワークの構成図を図3に示します。

図3: ネットワーク構成図

ネットワークを構築するにあたり、各ネットワーク機器に投入した設定、ベンダ特有の機能やさくらのクラウドの使用方法について、以下で説明します。

ルータ・スイッチの設定

ルータ(YAMAHA RTX1210)・スイッチ(Buffalo BS-G2108M)に対しての設定は以下の通りです。

基本設定

  • ホスト名
  • ユーザー名/パスワード設定

IP設定

  • IPアドレス設定
  • DHCP設定
  • トンネル設定(IPIP)

フィルタ設定

  • ゲストネットワークおよび管理用ネットワークのアクセス制限

VLAN設定

  • デフォルトVLANの設定
  • タグ付きVLANの設定

SNMP設定

  • コミュニティ名の設定
  • SNMPホスト(Zabbix)の設定

Wi-Fi環境の設計

AP(Aironet 1815i)の設定内容は以下の通りです。

Cisco Mobility Express

  • 仮想WLCによるAPの効率管理

SSID設定

  • 管理用SSID:Shitterukedo
  • ゲスト用SSID:Shirankedo

さくらのクラウド

今回は、さくらのクラウド上でDNSフルリゾルバ、監視用のZabbixサーバ、ネットワーク機器管理用のNetboxなどを構築しました。また、さくらのクラウドのスイッチやVPCルータといったネットワークを構成するサービスも利用し、会場との拠点間VPN通信を実現しました。図4は、RTX1210のインターフェースごとのトラフィック量をSNMPで監視している様子です。

図4: インターネットとの境界ルータ(RTX1210)のトラフィック量監視

NaniwaNOG 2ミーティングでの発表

NaniwaNOG 2ミーティング当日には、「BAKUCHIKU とTeam Shirankedo イベントネットワーク徒然」というタイトルでJANOGなどのNOCチームであるBAKUCHIKUと今回のTeam Shirankedoの活動について発表しました。

発表では、BAKUCHIKUやTeam ShirankedoなどのNOC活動に学生が参加する意義や、Team Shirankedoのネットワーク構築における準備から本番までの道のりについて共有しました。活動全体を通して手探りな部分は多くありましたが、チームで協力した経験を紹介することができました。

図5:発表前の様子

課題と今後の展望

本番に向けたハンズオン演習を通じて基本的な知識を習得しましたが、やはりイベントが近づくにつれて次々とトラブルが発生しました。例えば、Web構築ではスケジュール管理が不十分だったために、期限内にリッチなWebページを完成させることができませんでした。また、ネットワーク構築の場面では、設定ミスや配線作業の手順違いによる断線など、基本的なミスが重なり、問題解決に多くの時間を要しました。これらの経験を通じて、プロジェクト全体を見据えた計画や適切な時間配分の重要性を改めて痛感しました。進行中の状況を適切に把握し、タスクを細分化して段取りを整えることの大切さを身をもって学ぶ機会となりました。また、予期せぬトラブルへの対応力だけでなく、事前準備の精度が本番の成功に大きく影響することも強く実感しました。次回のNaniwaNOG 3ミーティングでは、この経験を活かし、ネットワーク構築およびWeb構築を行う予定です。この経験を糧に、さらにスムーズで質の高いイベント運営を目指し、参加者にとっても運営側にとってもより良い場を作り上げたいと考えています。

会社設備見学

Team Shirankedoのメンバーは、さくらインターネット様のデータセンターと本社を見学させていただきました。データセンターでは、普段見ることの出来ない実際の設備や運用の様子を間近で見ることができ、大規模なITインフラ設備について理解を深めることができました。また、グラングリーン大阪に在る本社では、とてもおしゃれなイノベーション施設であるBlooming Camp内を一通り案内していただいた後、社員の方に働き方についてお聞きするなど交流を行い、非常に有意義な時間を過ごすことが出来ました。

まとめ

NaniwaNOG 2ミーティング当日では、色々ありながらも会場の皆様にネットワークを提供できたことを感慨深く思います。社会人の方々のサポートを受けながら、我々学生が試行錯誤できる環境があったからこそ、大きな学びを得ることができたと感じています。 私たちの活動をサポートしてくださったさくらインターネット様をはじめ、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。また次のNaniwaNOG 3ミーティングでお会いしましょう!