JADOG16 ミーティング レポート ~クラウド型ネットワークサービスが目指す未来と挑戦~

こんにちは、さくらインターネットの大喜多です。本記事では、2025/2/7に開催された「JADOG16 ミーティング」についてレポートいたします。

JADOGとは?

JADOGとはJapan Datacenter Operators' Groupの略で、データセンターの最新動向や技術・運用等について取り扱っており、ミーティングではこれらの内容に沿ったセッションが行われ、質疑応答の時間も設けられています。司会はさくらインターネット株式会社の三谷が務めました。

司会を務めたさくらインターネット株式会社の三谷

セッションの傾向としては、やはり生成AI向けのサーバーをデータセンターにいかに配置するか、データセンターとクラウドとの接続性などの話題が多かったように感じられました。その中でも今回は、BBSakura Networks株式会社の川畑が発表した「クラウド型ネットワークサービスが目指す未来と挑戦」のレポートをお届けいたします。

クラウド型ネットワークサービスが目指す未来と挑戦

セッションに登壇したBBSakura Networks株式会社の川畑

川畑からは、OCXというIaaS感覚で利用できるネットワークサービスを開発していることについてのセッションが行われました。

BBSakura Networks株式会社はBBIXとさくらインターネット双方が出資するジョイントベンチャーで、SDNを活用したネットワークサービスの開発をおこなっています。

2013年に、CloudIXという、インタークラウドとも呼ばれる各クラウド事業者間を相互接続するサービスの構想が持ち上がりましたが、BBIX単体でサービスを開発することが難しく、BBSakura Networks株式会社が設立され、2020年から開発がスタートすることになりました。開発はスピード感を持って行われ、2020年末に開始されたプロジェクトは、2021年9月にはβ版の提供、2022年5月に本サービス開始に至りました。

OCXは閉域のネットワークで、ありとあらゆるネットワークファンクションを相互接続できるサービスで、データセンター間はもちろん、クラウドへの接続もできるサービスになっています。閉域によるネットワークの相互接続のみならず、固定グローバルIPアドレスを割り当てるインターネットコネクションやSourceNATが可能なインターネットゲートウェイも提供しているということです。

OCXには "アクセスライン" と呼ばれる接続メニューが用意されています。丸の内・有楽町・大手町界隈のビルにご入居のお客様を対象にアクセスポイントまで丸の内ダイレクトアクセスのダークファイバで直接接続するメニューや、NTT東西の提供するNGN網を経由したトンネル接続にも対応しています。

最も多いユースケースとしては、データセンター間接続とマルチクラウド接続が挙げられます。北は北海道・南は沖縄まで、40拠点ほどアクセスポイントが整備されているとのことです。各地方の事業者様にOCXに加盟いただくというスタイルをとっています。

現在は他社も同様のサービスを提供しており、OCXは後発のサービスとなります。そのため挑戦として、47都道府県制覇・250拠点を向こう3年以内には達成したいと目標にしており、「ネットワークの道の駅」のようなイメージで、全国どこでも近くのデータセンターにOCXのノードが張り出されているという状況を作りたいとのことです。また、通信キャリアに依存しないキャリアフリーのサービス提供もおこなっていきたいとしました。現在は固定回線のみからアクセスが可能になっていますが、将来的には無線アクセスも提供し幅広いコネクティビティを提供していきたいとのことです。

また、完全国産・完全内製のSDNプラットフォームということにもこだわっていきたいとしました。

ユースケースの中でもあったように、データセンター間を接続したいというご要望がありますが、OCXであれば、データセンター間をレイヤー2接続することが可能になっています。

またクラウドとの接続ではBGPルーターをお客様にご用意いただく必要がありますが、OCXのネットワークファンクションとして仮想ルーターも提供しており、CPE(顧客構内設備)から仮想ルーターに接続して、仮想ルーターとクラウドを接続することで、お客様はBGPを運用することなくクラウドに接続することができるということです。

OCXの使い方のまとめとして、OCXではVLANを使用してポイントツーポイント、あるいはポイントツーマルチポイントの接続を提供するとしました。OCXのリソースを組み合わせて自由にネットワークを作ることができることが特徴であるとしました。

ここからは質問タイムとなり、セキュリティについての質問などがありました。OCXは閉域網であり、リソースも外部からは接続できないので対策はできているとのことです。

また、OCXでは2024年の間に426回のリリースをおこなっていたとのことです。これらはメンテナンス告知をせず、裏側でおこなわれているとのことで、GitHubとCI/CDを活用して高速デプロイ・高速修正を行える体制を整えています。

機能ごとに立ち上げ期・成長期・安定期があり、それぞれ取り組み方は変わってくるとのことです。

クラウドとのネットワーク接続については、クラウド事業者側の仕様変更が多くあり、その対応に追われていることもあるとのことで、過去には破壊的な変更が起きすぎてリリースができなかったケースもあったそうです。

まとめ

川畑の発表においては「完全内製」というところがキーポイントになるかと思いました。内製であるがゆえ、他社製品のように不具合の問い合わせをして何日も待つといったことがないようにメリットとして感じました。一方で完全内製は非常に技術力とマネジメント能力が要求されるもので、それらも揃って実現できているのだと感じました。

JADOGミーティングでは、データセンターを起点に、現状のトレンドをどのように対応していくかが聞けるいい機会だと思いました。みなさんも機会があれば次回以降のJADOGに参加をご検討されてはいかがでしょうか。