DrupalCon 2016 ダブリン現地レポート

こんにちは。Gennai3の程田です。
今回は、2016年9月26日~30日にかけてアイルランドのダブリンで開催されたDrupalのカンファレンスDrupalCon Dublinに参加したので、その様子をレポートをします。

なぜDrupalConに参加したのか

今回のDrupalConでは、自社のビジネスに関わりがある「ツーリズム」と「ストーリーマーケティング」という分野についてBOF(Birds Of a Feather)を開催し、そこで海外の事業者や、Drupalユーザーと意見交換、議論するのが主な目的でした。
日本ではあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、BOFとは、同じテーマに興味関心がある人たちがあつまって討論をすることです。

Birds of a feather
https://en.wikipedia.org/wiki/Birds_of_a_feather_(computing)

DrupalConには何度か参加しており、アメリカで開催たものに2回、インド開催には1回参加しました。
北米のニューオリンズで開催された前回の「DrupalCon New Orleans」にも参加して、同じテーマでBOFを開催しました。その時も海外の方から様々な意見をもらうことができ、大変貴重な経験ができました。その経験から、「北米の方だけでなく、ヨーロッパの方たちの声もぜひきいてみたい」と思い、今回もDrupalConでBOFを企画・開催することにしました。

そこそこ長い旅路・・・

行きは、成田空港から、中東のアブダビ空港経由で、ダブリン空港着という空路を使いました。まず成田からアブダビ空港までは12時間15分。アブダビ空港で半日ほど休憩をはさみ、そしてアブダビからダブリンまで8時間30分。2日半ほどかけてようやくダブリンに到着です。
ダブリン空港に到着したときにはもうすでにぐったり・・・
途中休憩をとったアブダビ空港は砂漠の中にぽつんとある空港です。休憩をとった空港内のラウンジはなかなか豪華で、シャワーを浴びることができたり、無料で食事をとれたりと、休憩するには十分な施設でした。アブダビ空港はヨーロッパやアメリカへ行くためのハブとなる空港なので、様々な人種の方が常に行き交っています。免税店もすごい豪華で、店内には高級品がずらっとならんでいました。さすが石油産油国ですね。

アブダビ空港。ラウンジでの食事(写真右上、右下)

空港内は、ピーク時は大変混雑していて通路が渋滞するほどでした。ラウンジが利用できるよう準備しておいて正解でした。

そこから8時間半ほどかけてダブリン空港に到着。古く歴史のある雰囲気で私好みです。とても居心地がよくリラックスできました。
空港から目的地の市街地まではバスでの移動です。バスのスタッフがとても親切で、バスのチケットを買うときも「どこまで行きますか?」「それならこうやって行くのがわかりやすいですよ」などと分かりやすく教えてくれました。観光客の相手に慣れているという感じですね。とてもよい印象です。

参加手続きをしていたら・・・

ホテルにチェックインした後、DrupalConの会場まで行き、参加登録手続きを行いました。
そこでたまたま知り合いのamazee.ioという会社のジョアンナ(Johanna)さんにばったり出くわしました。ジョアンナさんは、2016年2月に開催されたDrupalCon Asia(インド)に私が参加する際にお世話になった方です。当時ジョアンナさんはDrupal Associationのパートナー担当のスタッフをされていて、私が参加手続きを行う際にいろいろと手助けをしてくれました。
お互いに「懐かしいですね」と久々の再会を喜び、いろいろとお話しをしました。

ダブリン到着初日はここまでです。さあいよいよ明日からDrupalCon開催です!

DrupalCon Dublin スタート!

DrupalCon Dublin 初日です!

エントランスの様子。DrupalCon恒例、Drupliconの巨大バルーンがお出迎え。

DrupalCon Dublin - 05 Thursday

会場の様子(Amazee LabsさんのFlickrより)

初日は一般企業のセッションはなく、私は当社がパートナーになっているACQUIAのミーティングに参加しました。ACQUIAはDrupalの創始者であるドリスさんがCTOとして参加し、また多くのDrupalのコミュニティのメンバーが働いている企業でもあります。クラウド上でのDrupal専用のホスティング・マネージドサービスや、システムインテグレーションの事業もしています。

ACQUIAのミーティングでは、世界中のACQUIAのパートナーが集り、市場の開拓や、技術サポートの手法などのテーマごとに分かれて、グループ討論が行われました。
私が参加した”マーケティング”のグループ討論では、「現在のマーケティングは”ホリゾンタル(広く浅く)”から”バーディカル(垂直的)”な戦略に移ってきている」「業界ごとに特化した戦略ではないと生き残れない」といった声が多く出ていました。
あくまで私の感覚ですが、日本におけるDrupalを活用したマケーケティングはまだそこまでいっていないと思っています。私が「日本はまだホリゾンタル的な段階かもしれない。2020年にTOKYOオリンピックもあるし、多言語対応から広めていこうかな・・・」と話したところ、「えっ?いまさら?多言語なんか簡単簡単。誰でもすぐできるよ。」といった感じでした・・・
海外プレーヤーの感覚を肌で感じることができ、とてもよい刺激になりました。

初日は、他のDrupal系事業者の大手(wunder GroupFFWPANTEHONなど)もパートナーミーティングをやっていました。

こんな企画も

ACQUIAパートナーミーティングと、それからオープニングレセプションにも参加して初日は終了。

オープニングレセプション

その後にDrupalCon公式のイベントではないのですが、amazee.ioさん企画の「ミステリーバスツアー」というイベントにも参加しました。

腕に参加証のスタンプ

会場の外に横付けされた二階建てのバスに参加者みんなで乗り込んで出発。バスの一階部分は真っ暗で、幽霊屋敷になっていて骸骨の置物とか雷の演出で遊園地のアトラクションのようになっています。二階に行っても真っ暗。みんなが席に着いてバスが走り出すとお化けに扮したスタッフが出てきて、地元に古くから伝わる怖い話しを披露。「どこどこの古いお城で、だれそれが殺された」とか。歌も交えながら、雰囲気たっぷりに語ります。
途中、話しの中で出てきた古いお城や墓地にも立ち寄るなどして、まるでダブリン版はとバスツアーのようでした(笑

バスツアーが終わって宿についたのは11時頃。初日にしてはいろいろ詰め込みすぎたかな?と思いつつ疲れ果てて就寝。

バスの中の様子。(amaze.ioさんのブログより)

amaze.ioさんのブログにその様子が少しご紹介されています。
https://stories.amazee.io/a-great-first-european-drupalcon-for-amazee-io-e35f8e257ba7#.qaald6t5n

DrupalCon Dublin 2日目

2日目はDrupalの創始者であるDries Buytaert(ドリス・バイテルト)さんによるキーノートスピーチからスタート・・・でしたが、実は諸事情により参加できなかったので、後日動画で見ることに・・・(汗

こちらがドリスのキーノートです。
(YouTubeの「字幕」と「自動翻訳」」をONにすると、英語がわからない方も、ある程度理解できるかもしれません)

前半は最新バージョンのDrupal 8.2の新機能について説明があり、後半はオープンソースコミュニティの活動ルールのような話題でした。” Drupalは多くの人が役立てることでき、また自ら価値を創るための道具になる”、といった大変期待の持てる内容でした。
特に”ドミノ倒し”のビデオが印象的で、その内容は、『Drupalが最初の小さなドミノとなり、それが世界中のドミノを連鎖的に倒していくことで(世界中のDrupalとお互いに影響し合うことで)、最終的に大きなドミノを倒す(世界的な変化を起こす)ことができる。Drupalを使えばそれが誰でもできるようになる。だってDrupalはノンプログラミングでも高度な機能を使えるんだ。だからエンジニアだけじゃない。いろんな人がDrupalの恩恵を受けることができるんだ。』といったものでした。

その後、今回参加した目的でもあるBOFを開催。あまりたくさん集まらなかったけど、ここでもいろんな意見を聞くことができて、とても有意義な時間を過ごすことができました。

DrupalConのセッション

DrupalConでは、ドリスのキーノート以外にもさまざまなセッションが開催されます。今回、私が参加したセッションの中から二つほどご紹介します。

セキュリティのセッション"Cracking Drupal"

Drupal Associationのセキュリティチームが、Drupalのセキュアな使い方について解説。「こうしないとクラッキングされるから気をつけてね!」と実践的な手法を紹介。40~50人ぐらいしか入らない小さい部屋でしたが満員でした。参加者からの質問もばんばん飛び出て大盛り上がりです。

PDFの資料もあります。
https://events.drupal.org/sites/default/files/slides/Cracking%20Drupal%20-%20Dublin%20DrupalCon%202016-09-28b.pdf

コミュニティ運営のためのセッション"Being human"

「Being human」というカテゴリのセッションが多数開催されていました。このセションは少し変わり種です。「Being human」という名前の通り、いかに”人間らしく”コミュニティに参加し、活動したり、運営するか、についてのセッションとなります。
Drupalに限った話ではありませんが、世界中のコミュニティを見ていると色々と問題があるようで、例えば・・・まずは暗い人が多いみたいです。(笑。コミュ障とうやつですかね?
あと「俺だ俺だ」という人も多いようです・・・
「せっかく同じ目的で集まった仲間なんだから、みんながハッピーになるようなコミュニティにしようよ!」といったテーマのセッションです。
セッション主催のDrupal Associationから
「一番重要なのは人間同士のコミュニケーション。でも今はそれがあまりうまくいっていない。ある部分ではそれが顕著になってきている。」
また「だんだんコミュニティのイベントが”ただワイワイ楽しくできればいい”という雰囲気になってきている。コミュニティってそうじゃないよね?」
という話しがありました。

また、アメリカのシカゴを中心とした、mid地域(北米のミドル地域)周辺のDrupalCampを運営者からは、「イベント運営のベストプラクティス」についての話もありました。
例えば、
・参加者をカテゴリー別にバッジの色で分けて、それを見て話しかけやすいようにするといいよ。
・絶対じゃないけど、やっぱり英語でのコミュニケーションは重要だよね。
・トークセッションには、みんながわかるように翻訳テキスト(テロップ)を出そうよ。
・テーブルとテーブルはくっつきすぎないようにね。車いすも通れるように。床にテープを貼ってそれをガイドにするとテーブルを配置しやすいよ。
といったお話しをされていました。

Beign human トラックセッションの概要はこちら
https://events.drupal.org/dublin2016/tracks#being-human

公開されているものをいくつかご紹介します。

DrupalCon Dublin 2016: MidCamp madness and planning human-centered events

こちらがPDFの資料です。
https://events.drupal.org/sites/default/files/slides/MidCamp%20madness%20%26%20planning%20human-centered%20events.pdf

Burnout at Scale

PDFの資料はこちら。
https://events.drupal.org/sites/default/files/slides/burnout-at-scale.pdf

海外は人種も多いし、多種多様な意見が飛び交う文化。そのようなコミュニティやイベントを健全に運営していかなければならない。「Being human」はそんな海外の事情が強く反映されたセッションだったと思います。私も日本でコミュニティ活動に参加しているので、大変参考になりました。

DrupalCon Dublin 3~4日目

最後の2日間は、主に知人やたまたま現地で知り合った方たちとミーティングをしました。

みなさん展示会場のテーブルでミーティング

DrupalConは参加するたびにさまざまな人と知り合うことができ、それがビジネスの可能性を広げるきっかけになります。会場で行われる催し物だけでなく、こういった海外の方とのネットワークづくりができるという意味でもDrupalConに参加する価値はあると感じました。

DrupalCon Dublin まとめ

今回の参加者は2,500名で、チケットも完売したようです。本当に大盛り上がりでした。また、私は今回で4回目の参加となりましたが、4回目にしてまた新たしい発見ができたイベントだったと感じました。DrupalConは最新のテクニカルな情報にふれることができる場所というイメージがありますが、また一方ではビジネス視点のネットワークをつくることができる場所でもあると感じました。参加する回数を重ねるたびにそこで会う人との関係も身近になり、深いコミュニケーションをとることができるようになります。自分が知らないところに思い切って飛び込むといろんなチャンスに巡り会えると、今回はそれを強く実感しました。
海外のビジネスやコミュニティは本当に広大です。日本にいるだけでは気づかないことがたくさんあります。
みなさんもぜひ一度参加してみてください。必ずなにかよい発見があると思います。

おまけ~DrupalCon Dublin フォトブック

Gennai3's photos
IMG_20160929_020305

DrupalCon Dublin, Europe 2016
https://www.flickr.com/groups/drupalcondublin2016/pool/