Developers Summit 2017 レポート「自動化はどこに向かうのか ~まだ開発・運用の自動化で消耗しているの?~」

2017年2月16日~2月17日の間、Developers Summit 2017が開催されました。2/17に「自動化はどこに向かうのか ~まだ開発・運用の自動化で消耗しているの?~」と題しまして、さくらインターネット テクノロジーエバンジェリスト 前佛 雅人が登壇致しました。本記事では、その模様についてレポート致します。


『「自動化」が目的になると地獄行き』!?

前佛はまず最初に「今日皆さんと共有したいこと」として3つのセンテンスを挙げました。

  • 「自動化」が目的となると地獄行き
  • 「ツール」は私たちの問題を解決しない
  • 問題解決の道標「必要は発明の母」

この3つのセンテンスに沿って「なぜ自動化が必要になったのか、なぜ自動化がうまくいかないのか」ということについて解説されました。

前佛は、自動化が必要になった理由として「省力化」「時間短縮」「人的ミスの防止」の3つを挙げ、その背景には、インターネットを中心とした時代背景の変化があると指摘しました。

インターネット接続環境は電話回線を用いたナローバンドから光ファイバーを用いたブロードバンドが当たり前になり、高速化と常時接続をもたらしました。フィーチャーフォンやスマートフォンも通信料金定額制の導入や通信速度の高速化により、人々は何らかのデバイスを通じて常にインターネットに繋がる状況になり、インターネットを支えるインフラ・インターネット上で提供されるサービスは爆発的に増えていきました。そのような「大量のリソースをいかに効率よく運用・改善していくか」という観点で語られるべきであったのが「運用の自動化」であるとしました。

しかし、運用の自動化には「ツールを入れれば解決する」という誤解があると指摘。前佛自身もテクノロジーエバンジェリストとして運用自動化の啓蒙活動を行うなか「このツールいいですか?」「いいツールありませんか?」と良く質問を受けるとのことでしたが、「本質はそこではない」と語ります。

このように「ツールを入れる」ことが目的となってしまうと運用自動化は失敗してしまうと指摘。失敗するケースは「ゴール(達成すべき目標)が間違っている」とのこと。

本来は自動化は「現実的な課題の解決」の方法のひとつとして、競合他社に勝つために必要とされるものであると指摘し、そのプロセスには2段階あると解説。

また、「課題は環境によって異なる」とし、自動化で何を達成するのか、現場視点・組織視点で自動化が必要なのか、判断していく必要があるとし、「『ある1つのプロジェクトであるツールの導入に成功し、全社導入が決まった』などというケースは最悪」であると語り、あくまでも達成すべき目標・解決すべき課題に対して現場レベルで取り組んでいく必要があることを強調しました。

また、前佛は例として、本田宗一郎氏が開発した「バタバタ」の話を挙げました。「バタバタ」は自転車に推進器がついたバイクのはしりのような乗り物ですが、本田宗一郎氏はこれが作りたくて作ったわけではなく、市場から大量の荷物を運搬する負担の軽減という「目的」のために開発した、と説明。

自動化も同様で、問題を解決するための自動化である必要があるとあらためて説明しました。

「自動化やツールの導入は本来の目的ではない、課題を解決することが本来の目的」として、再度最初に挙げた「今日皆さんと共有したいこと」である3つのセンテンスを再掲してプレゼンを締めくくりました。

筆者の感想

「エンジニアはツールの検証や導入が楽しくてそちらに目がいきがちである」という指摘は非常によく見られるケースであり、前佛自身も新しいツールを検証が楽しくていろいろ試してみるとのことで、それ自体は否定しないものの、ビジネスとしてシステムの開発・運用に携わっている以上は「現場では本来の目的を見失ってはいけない」というメッセージを強く感じたプレゼンでした。

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