さくらインターネット「福岡オフィス」を開設。メルカリ、ピクシブ、アカツキの3社と合同記者会見。「福岡」が目指す、スタートアップと創る街づくりとは?

高島市長も駆けつけてバレンタインデーに福岡オフィスをお披露目

世の中がバレンタインデーに沸く2017年2月14日、さくらインターネットが福岡市に「福岡オフィス」を開所しました。場所は地下鉄空港線「赤坂」駅を出てすぐのビルの7階で、執務エリアとシェアスペースで構成されています。

シェアスペース

バーカウンターもあるシェアスペースでは、九州のスタートアップや九州大学および崇城大学と協力しながら、次世代のIT人材の育成を目的とした企画やイベントなどが開催される予定です。また大濠公園が一望できるので、夏には花火大会も楽しめるそうです。

今回、まったくの偶然ですが、メルカリ、ピクシブ、アカツキの3社も同時期に福岡にオフィスを開所しています。そこで4社は、さくらインターネットの福岡オフィスで共同記者会見を開催。4社は、それぞれに福岡に込めた熱い思いを語りました。

共同記者会見には数多くのメディアが詰めかけました。

共同記者会見には、福岡市の市長である高島(髙島)宗一郎氏も駆けつけたことから、福岡のテレビ、ラジオ、地方紙、地元誌のほか、全国紙や東京のウェブ媒体も取材に訪れ、夕方のテレビニュースでは、協同記者会見のもようも放映されました。

共同記者会見の内容は夕方のテレビニュースでも放映されました。

福岡市のスタートアップ開業率は3年連続で政令指定都市トップ

共同記者会見の冒頭、高島市長は「いまをときめく、誰もが憧れるベンチャー企業4社にラブコールを送ってきましたが、バレンタインデーにこの発表ができることをうれしく思います」と挨拶しています。

「4社が同時期に福岡にオフィスを開設するインパクトは、スタートアップ支援や施策に対する福岡市の熱量を日本全国に発信できる良い機会」と話す高島市長。

「すばらしい4社が同時期に福岡にオフィスを開設するというインパクトは、福岡市が進めているスタートアップ支援や施策に対する福岡市の熱量を日本全国に発信できる良い機会であり、たいへん感謝しています」(高島市長)

今回、さくらインターネットなど4社が、同時期にオフィスを開所した福岡市とはどのような街なのでしょうか。現在、福岡市はスタートアップ特区の制定や規制緩和、政策での後押しなど、スタートアップの誘致に積極的に取り組んでいます。

スタートアップ特区ではスタートアップ法人減税も実現しています。条件に合えば、市税も減税する条例も施行しています。高島市長は「両方合わせると22%の減税になり、海外に比べても競争力のある法人税となります」と話します。

また起業や独立を志す人たちを支援する「スタートアップカフェ」の運営や外国人の創業を促進するための「スタートアップビザ」の提供なども施策の1つ。海外からのスタートアップの受け入れ体制も充実しています。

こうした施策が功を奏し、現在、福岡市のスタートアップ開業率は7.04%で、3年連続で政令指定都市トップとなっています。また25歳~34歳の若い人たちによるスタートアップ開業率も、福岡市が圧倒的にトップなのです。

ただ、スタートアップ支援だけが福岡オフィスの開所に至った理由ではありません。それ以上に重要だったのが、福岡市そのものの魅力です。高島市長は「福岡市は人口が毎年1万5000人ずつ増えており、人口増加率では東京を抜いて日本一です」と話します。

また福岡市民へのアンケートでは、95.8%が「住みやすい街である」と答えているほか、英国の雑誌が調査している世界の住みやすい街ランキングにおいて、第7位に福岡市が選ばれているのです。

「福岡市は“人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市”を目指しています。単に経済規模が大きいだけでなく、もっとも暮らしやすく、仕事があり、リフレッシュできる、グローバルにチャレンジできる街です」(高島市長)

福岡市の成長戦略としては、短期、中期、長期の大きく3つ。まず短期的には、交流人口の増加です。コンベンションの開催日数は東京都を除く全国1位で、2016年は363回開催されています。またクルーズ船の寄港も328回で、横浜を抜いて全国1位です。

中期的には、知識創造型産業の振興です。福岡市が誘致した企業の55%は、さくらインターネットのような知識創造型産業です。長期的には、支店経済からの脱却です。ただし、本社機能を誘致するには、医療、教育、美術などの多くの分野に影響を及ぼします。

そこで、本社機能を誘致しつつ、並行してスタートアップの育成を推進しているのです。高島市長は「スタートアップ支援は次の福岡市を創る“FUKUOKA NEXT”と呼ばれるチャレンジにも生かせます」と話します。

その一環となる「FUKUOKA Smart EAST」プロジェクトでは、九州大学跡地にIoTやモビリティ、セキュリティなどのイノベーションによる最先端のシェアリングエコノミーを実現する計画です。この計画ではスタートアップの技術力に期待が集まっています。

高島市長は「旧大名小学校跡地にインキュベーターを大集合させ、スタートアップカフェも移設して、官民協働型スタートアップ支援施設を実現します。これにより福岡市のスタートアップシーンが、さらに熱々となることは間違いありません」と話しています。

写真左より、株式会社メルカリ 取締役 小泉文明氏、株式会社アカツキ 共同創業者 取締役COO 香田哲朗氏、福岡市 市長 高島宗一郎氏、さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中邦裕氏、ピクシブ株式会社 代表取締役社長 伊藤浩樹氏

福岡市とともに世界に羽ばたく会社を目指す

共同記者会見で、さくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏は「さくらインターネット、メルカリ、ピクシブ、アカツキの4社が、同時期に福岡にオフィスを開所しました。われわれが福岡オフィスを開所した目的の1つは、スタートアップが盛んな福岡で、さくらインターネットも成長することです」と話します。

「2017年、ようやく福岡1年生ですが、福岡市とともに世界に羽ばたく会社になりたいと思っています」と話す田中社長。

「さくらインターネットは2016年12月で創業20周年を迎えました。18歳のときに大阪で起業しましたが、ちょうどネットバブルのときで、かなりの数の会社が起業しています。その後、ネットバブルがはじけ、苦しい時期もありましたが、この2~3年はスタートアップブームが再燃しています。しかし現在の起業ブームは、20年前のように日本全国で起きているわけではなく、熱量の多い都市で再燃しています」(田中氏)

米国の都市経済学者であるリチャード・フロリダは、著書「クリエイティブ・クラスの世紀」の中で、「都市の成長と企業の成長は関連している」と述べています。また「多様性や寛容性などの新たな価値観が芽生える都市にこそ企業が集まってくる」と述べています。田中氏は「以前は企業が進出し、都市の人口が増えるという成長モデルでした。いまは成長する都市に人が集まり、成長する企業が生まれると信じています」と話します。

こうした背景のもと、「さくらインターネットが福岡市にオフィスを開設するに至ったのは、必然であると考えています。気候がいい、食べ物がおいしいなど、定量的に表すことができる条件はたくさんありますが、ひと言でいえば“移り住みたい都市こそ企業の成長につながる”ということです」と田中氏は言います。しかし、今回の福岡への進出はトップダウンによる決定ではありませんでした。

田中氏は「どうしても福岡にオフィスを出したいという2人の社員がスタートさせたものです。2人の社員は福岡のスタートアップの皆さんと話をする中で、福岡に進出したいという気持ちになったようです。しかし福岡にオフィスを出すよりは、出張の方がコスト的には安く済みます。そこで“福岡がいいという熱量を見せてみろ”と話しました。すると2人は、勝手に福岡市に移住してしまいました(笑い)」と当時を振り返ります。

「経営者としては、あまりたくさんの拠点を作りたくないのが本音です。さくらインターネットは、大阪に本社が、東京にオフィスが、北海道の石狩市にデータセンターがあります。コストや効率性を考えると、1つの都市で事業を展開するのが一番良いことです。地方で起業した多くの企業が、東京に本社を移すのもこうした考えからです。しかし創業20周年を迎え、効率化から創造性の発揮への転換が必要と考えました」(田中氏)

企業は利益を出すことが必要ですが、それには2つの方法があります。1つは効率化により原価を抑えて利益を出す方法であり、もう1つは売り上げを伸ばして利益を出す方法です。田中氏は「われわれは売り上げを伸ばし、企業を成長させることで利益を拡大させていく方向に舵を切りたいと考えています。そこで快適性や創造性を重視し、みんなが住みたいと思う場所に拠点を作ることが成長への近道と考えました」と話します。

「現在、福岡の活動の中で、売り上げが上がったり、エンジニアの方々とつながったりと成果が出始めています。なにより、社員の1人が20kg太ったことからも、福岡で本当に快適に暮らしていると感じています(笑)。効率性を考えて東京に集中することは、短期的には利益を生みますが、長期的な話は別です。現場で働く社員が元気になり、元気な街とともに成長し、企業としても成長できるのが福岡です」(田中氏)

最後に田中氏は「今回、さくらインターネットとして福岡オフィスを開所し、4社で共同記者会見ができたことは、福岡市にとっても象徴的な出来事ではないかと思います。効率性だけを考えて東京に集中する時代は終わりました。企業が持続的に成長していくには、次の20年に向けて生まれ変わることが必要です。2017年、ようやく福岡1年生ですが、福岡市とともに世界に羽ばたく会社になりたいと思っています」と話しています。

お世話になった方々に福岡オフィスをお披露目!

福岡オフィスのお披露目パーティーには、福岡をはじめとする九州のスタートアップや大学関係者、福岡市の関係者など160名以上が参加して、盛大に開催されました。

共同記者会見の終了から4時間後の19時より、さくらインターネットの福岡オフィスにおいて「福岡オフィスのお披露目パーティー」が開催されました。パーティーには福岡をはじめとする九州のスタートアップや大学関係者、福岡市の関係者など、約120名の事前エントリーをはるかに超える160名以上が参加して、大変盛り上がりました。

起業家やIT関係者が集まりすぎるバーとして有名(?)な、あの六本木の「awabar」が1日限定で出張オープン!

会場には、起業家やIT関係者が集まりすぎるバーとして有名(?)な、あの六本木の「awabar」が1日限定で出張オープンし、awabar店長がバーテンダーを引き連れて来福しています。またケータリングの料理も会場に並び、ピクシブ 代表取締役社長の伊藤浩樹氏やさくらインターネットの田中社長もカウンターでお酒を振る舞いました。

ケータリングの料理も会場に並び、ピクシブ 代表取締役社長の伊藤浩樹氏やさくらインターネットの田中社長もカウンターでお酒を振る舞いました。

パーティーは田中社長とさくらインターネットのフェローである小笠原治氏がホスト役となって進行しました。

パーティーは田中社長とさくらインターネットのフェローである小笠原治氏がホスト役となり、まずは午後行われた共同記者会見の概要を来場者に紹介し、その後、田中社長が乾杯の音頭をとりました。「福岡の皆さまが、すごい勢いで成長することを祈念して盛大かつ声高らかに乾杯しましょう! それでは、ご唱和ください! かんぱ~い!!」

「かんぱ~い!!」

ちなみに、1日出張来福したawabarのオーナーは小笠原氏だそうです。しばらくの歓談後、「さくらインターネットとやりたいこと」や「さくらインターネットに言いたいこと」など、14名の来賓がスピーチしました。

株式会社グルーヴノーツ 代表取締役会長 佐々木久美子氏

株式会社オルタ―ブース 代表取締役 小島淳氏

九州大学 産学官連携本部 准教授 熊野正樹氏(写真右)崇城大学 総合教育センター 准教授 中島厚秀氏

株式会社ウルフ プロダクト開発本部 テクニカルロックスターズ代表 部谷修平氏

株式会社キューブス 取締役 石村俊幸氏

JAWS-UG 福岡支部コアメンバー 株式会社オルターブース COO 藤崎優氏(写真右)さくらクラブIoT福岡コアメンバー 株式会社コム・アンド・コム 取締役 技術部部長 木村健一郎氏

株式会社ユニマル 代表取締役 今熊真也氏(写真右)ピクオス株式会社 プロダクトマネージャー 野崎弘幸氏

株式会社Fusic mockmockプロダクトオーナー 毛利啓太氏

株式会社サイノウ コミュニティマネージャー 村上純志氏

株式会社Falco 代表取締役 植村福太郎氏

グルー株式会社 代表取締役 迫田孝太氏

福岡市の執行氏(写真中央)による、「博多手一本」と呼ばれる福岡独特の手締めでお開きとなりました。

22時過ぎまで盛り上がった福岡オフィス披露パーティーは、福岡市 東京事務所 シティセールス担当主査の執行謙一氏による「博多手一本」と呼ばれる福岡独特の手締めでお開きとなりました。