Interop Tokyo 2017で「IoTいいねボタン」をコントリビューションした話 その1
目次
はじめに
さくらインターネットでは、2017/6/7~6/9に幕張メッセにて開催されたInterop Tokyo 2017のShowNetに「IoTいいねボタン」をコントリビューションしました。
IoTいいねボタンは、弊社のIoTプラットフォームサービス「sakura.io」を活用したデモンストレーションで、来場者の方々に良いと感じたShowNetのテーマラック毎にボタンを押すことで投票できるようにしたシステムです。当日、会場で実物をご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんね。
昨年(2016年)に引き続きのコントリビューションとなるIoTいいねボタンですが、今年は新たに地域BWAの無線ネットワークを連携させた実験を行いました。本連載では、3回に分けてこの取り組みについてご紹介します。
第1回 | IoTネットワーク構築編 |
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第2回 | IoTいいねボタン製作編 |
第3回 | いいね!Viewer開発編 |
ShowNetとは?
第1回となる本記事はさくらインターネット大久保が担当いたします。筆者はNOCチームメンバーとして、ShowNetのネットワーク構築にもボランティアで参加しております。
Interop Tokyoの中でも主要な企画の一つであるShowNetは、近未来のネットワークアーキテクチャを考え、今後実用化されるであろう最先端の技術を盛り込んで構築されます。ネットワーク機器を提供されるメーカさんも含め総勢400人ほどが関わり、会期含め2週間ほどで構築する一大プロジェクトです。
IoTネットワークのセキュリティ
昨今、インターネット上ではIoTデバイスを踏み台としたDDoS攻撃が世界中で頻発しています。これらは直接インターネットに接続された脆弱なIoTデバイスが被害を受けているものです。電力や計算能力、生産コストが限られているIoTデバイスで、十分なセキュリティ対象を行うことは難しいのです。
弊社で提供しているIoTプラットフォームサービス「sakura.io」では、下図のようにIoTデバイスを閉域網でプラットフォームに接続する形をとっています。プラットフォームに貯められたデータは、潤沢なプロセッシングを行えるクラウド上で処理され、インターネット側からセキュアな方法で入出力することができます。
地域BWAをIoTのネットワークとして活用する
地域BWAというキーワードに聞きなれない方もいらっしゃるかもしれませんが、皆さんがお持ちの携帯電話と同じLTE方式を用いた無線インフラです。地域の公共サービスの向上、デジタル・デバイド解消などを目的として2008年に制度化、導入されました。LTE Band41と同じ周波数帯(2.5GHz)がアサインされています。Apple社の最新のiPadやHuawei社のMediaPadなど、市販の一部タブレット端末が対応しています。
引用元: http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/system/ml/area_bwa/002.pdf
すでに日本国内で多数のサービスが稼働しており、一般向けの無線インターネット接続サービスや、自治体が整備するIPカメラ、公衆Wi-Fiサービス、防災無線などのワイヤレス基盤としての稼働実績があります。
大手モバイルキャリアの商用ネットワークと比較して、地域BWAは設営事業者による通信品質やカバーエリアのコントロールが可能です。さらに、閉域網の構築や通信コストの低減を実現しやすいといったメリットがあります。
今回、阪神ケーブルエンジニアリングさん、ファーウェイさんの協力でInterop Tokyo 2017に地域BWAが提供されることとなりました。地域BWAは近年IoT分野への応用も期待されていることから、弊社のIoTプラットフォームを接続して実験を行いました。
地域BWAのネットワーク構成
簡単にShowNetで構築した地域BWAのネットワーク構成を紹介します。
電波を吹く基地局とアンテナは、幕張メッセホール4とホール7の計2箇所に設置しました。基地局は光ファイバでBBU(ベースバンドユニット)とよばれる制御装置に収容され、無線信号がLTEのプロトコルに変換されます。
ホール7側基地局の様子 |
ホール4側基地局の様子 |
LTEの仕組みは若干複雑で、ユーザ認証、呼制御、ハンドオーバなどの様々な機能が必要です。これらを担うLTEコア設備は幕張メッセには置かず、関西に設置された阪神電鉄グループが運用する「地域BWAセンター」を遠隔利用しました。インターネットVPNで接続でき、会場には基地局の設置のみで済むため、構築のリードタイムを短縮可能です。
地域BWAを弊社IoTプラットフォームと接続する
LTEではAPN(Access Point Name)を複数設けることで接続先のネットワークを選択することができます。ShowNetでは3つのアプリケーション(インターネット、IoT、Wi-Fiバックホール)用のAPNを用意し、IoT用のAPN(EVENT-NET2)をsakura.ioへの閉域接続用にアサインしました。
端末からの通信はLTEコア内のP-GW(Packet Data Network Gateway)で終端され、端末に設定されたAPNに紐付けられたVLANへルーティングされます。3つのVLANの通信はVPN(EtherIP)を経由してShowNetへ折り返し、それぞれのアプリケーション用のネットワークへルーティングさせる構成としました。
EVENT-NET2に対応するVLAN3102は、ShowNet内の閉域網である「マルチクラウドファブリック」に接続しました。ここにはBBIXさんのPrivate VLAN経由で弊社のサーバ群がつながっています。これにより、幕張メッセ内の地域BWAにぶら下がるIoTデバイスから、弊社IoTプラットフォームまでインターネットに出ない安全な経路で通信することが可能となりました。
地域BWA対応OpenBlocksを活用
弊社の通信モジュールは、残念ながら地域BWAの周波数帯には対応していません。そのため、今回はぷらっとホームさんに提供いただいたOpenBlocks IoT EX1を使用させていただきました。sakura.io互換プロトコルを実装したOpenBlocks IoT EX1にいいねボタンを装着し、押下情報がIoTプラットフォームに蓄積されるようにしました。
いいねボタンの製作については本連載第2回、集計結果を表示する「いいね!Viewer」については第3回で詳細を解説予定ですのでご期待下さい。