JANOG39 Meeting レポート~Day 3~

こんにちは、さくらインターネット クラウドチームの大喜多です。
2017年1月18日~1月20日の3日間、石川県金沢市にてJANOG39 Meetingが開催されました。本記事ではDay 3(1月20日)の様子をレポート致します。

QinQとVLANを変換するサーバでトラフィックを運んでみた

さくらインターネット株式会社 VPSチーム 伊東 宏起による発表

さくらインターネット株式会社 VPSチーム 伊東 宏起より、異なる方式のネットワークをLinuxサーバを使用して接続した事例の紹介がありました。

さくらのVPSでは、QinQという方式を用いてローカルネットワークを実現しています。さくらのVPSでは、2016年2月に新たにベアメタルプランを追加しました。当初はベアメタルプランでもQinQを使用することを検討していましたが、使用するスイッチの仕様上、VLANを用いることになり、QinQとVLANを変換する仕組みが必要になりました。

通常であればハイエンドのネットワーク機器が必要になるQinQとVLANとの変換ですが、Linuxサーバを用いて変換機能を実装した事例を、システム構成と留意した点を交えて解説しました。(この際に構築した変換サーバを以後Ver.1と記載します)

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また、さくらインターネットでは、サービス間接続・外部回線接続のためにハイブリッド接続というサービスが用意されておりますが、さくらのVPSをハイブリッド接続に対応させるにあたり用意された変換サーバVer.2では、冗長化の仕組みをスイッチに任せることで、Ver.1の際に問題となったLinuxのクラスタリングの仕組みを用いずに冗長化構成に対応するなど、構成のシンプル化が図られている点について説明がありました。

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Linuxサーバを用いたトラフィック配送は「いきなり高価なネットワーク機器を買わなくても、サーバを使ってスモールスタートできる」という利点がある一方で、拡張性の問題などがあると説明し、発表を締めくくりました。

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ディスカッション

発表の後、会場の参加者と登壇者とのディスカッションが行われました。主なものについて、以下に記載します。

アドバイス:Intel DPDK OpenVswitch DPDKとかが使えるのでは?
回答:DPDKは今後入れたいと考えている。

質問:MTUの設定値は苦労したか?
回答:苦労しました。

質問:機能試験・テストコードはどのようにしているのか?
回答:
・機能試験は実際にI/Fが作れるかどうかとか、実運用上に起こりうる動作を試している。
・テストコードはぎっちり書いてるわけではない、テストコードと人の目でやっている。

質問:将来的に運用が難しくなるのではないか?
回答:将来的にはきつくなりそうではあるが今のところ困るほどのボリュームではない

伊東からの質問:今はネットワーク機器メーカーはQinQよりもVXLANに投資している?
会場からの回答:QinQは通信キャリアが好んで使い、VXLANはデータセンター事業者が好んで使っている。ネットワーク機器メーカーとしてはどちらもラインナップする必要が有り、片方を捨てることはない。

質問:MACアドレス再学習に時間がかかり、遅延が発生するのではないか?
回答:Ver.1では何かしらのトリガーを出さないとネットワーク機器のMACテーブルがFlushされない問題があった。Ver.2からはLACPでLAG構成にしたことにより、MAC再学習が発生しない構成としたことで、Ver.2より高速に切替ができるようになった。

質問:スケールの見積もりはどのようにしていたか?
回答:Ver.1のときはそこまで考慮できていなかった。キャパシティがオーバーしたらアプライアンスに切り替える計画もあった。Ver.2からは性能が向上したことにより、いまのところ今後の拡張に関しての問題は発生していない。

アドバイス:アジア圏(おもに中国)のネットワーク事情は欧米と異なるため、欧米のネットワーク機器メーカーとアジア圏のネットワーク機器メーカーでは機能の実装に差があるので、双方をウォッチしてほしい。

終了後も会場の一部に登壇者と参加者が集まり議論が続くなど、非常に活発なやりとりがなされていました。
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ブースのご紹介

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JANOGでは協賛各社によるブースが用意されており、各社のソリューション紹介がなされていました。さくらインターネットでは、「さくらのIoT Platform β」を中心に、各サービスのご紹介をしておりました。各社ブースは単なる展示にとどまらず、各社の営業とエンジニアに直接悩みを相談することができるなど、他のイベントよりもユーザーとメーカーの距離が近いイベントだという印象を受けました。

おわりに

JANOG39のレポートを3本の記事に分けてお送りしました。冬の金沢での開催にも関わらず、750人もの方が参加されるという、JANOGミーティングの楽しい雰囲気が少しでも伝わればうれしいです。
次回のJANOGミーティング(JANOG40)は、7月26日(水)から28日(金)の3日間、福島県郡山市にあるビッグパレットふくしまで開催されます。JANOGとしては20周年を迎える記念の回となるそうです。読者の皆さんも参加されてはいかがでしょうか。

それではまた、次回のイベントでお会いしましょう!

JANOG39実行委員会の面々