【さくらの大納涼会】道内のIT企業が大集合!さくらと考える「これからの北海道」

8月2日(木)の夜、札幌ACU-Yにて「さくらの大納涼会2018 at 北海道」が行われました。さくらインターネットはこれまでにも「さくらの夕べ」などを北海道で開催したことがありますが、今回は北海道で活躍されているエンジニアの方々や、当社と交流のある企業の方々にご登壇いただくイベントを企画しました。おかげさまで150人ぐらいの方にお集まりいただき、「大」納涼会にふさわしい規模になりました。たくさんのご来場ありがとうございます!

開始前に緊急事態発生!

この日のイベントは19時開始予定で、参加者の皆さんも順調に集まっていたのですが、イベント開始直前に会場の機材トラブルが発生! プロジェクターもマイクも電源が入らなくなってしまいました。これではプレゼンテーションができないので、やむなく懇親会用に確保していた隣の部屋に移動することに。こちらの部屋は立食パーティー仕様のため椅子がなく、なんとオールスタンディングでイベントを見ていただくことになりました。参加者の皆さんすみません!

しかし、司会を務めたさくらインターネットの増田崇志は、この緊急事態にもまったく動じることなく、こう言いました。

「障害は、起こるものなんです! でもそれをどう対応するかが重要です!」(会場笑、拍手)

確かにその通りではあるのですが、それを理解できる方々に来てもらえて、本当に恵まれていると思いました。参加者の皆さんありがとうございます!

トークコンテンツ『技術が実現するイノベーションと〇〇』

というわけでトラブルに見舞われながらもイベント開始。第1部は「技術が実現するイノベーションと〇〇」と題し、3人の方が発表しました。

はてなのインフラ史と、そこから生まれたWebサービス運用のイノベーション

最初に発表したのははてなの渡辺起さん。タイトルは「技術が実現するイノベーションとWebサービス運用の未来」で、主な内容ははてなのインフラ史と、そのインフラ運用システムをMackerelというサービスにした話でした。

はてなのインフラ史は「はてなシステムの考古学」という資料に詳しくまとめられていますが、はてなの歴史を古代(2001-2004)、中世(2004-2007)、近世(2007-2011)、近代(2011-2014)、現代(2014-現在)に分け、各時代にリリースしたサービスと、インフラの規模や特徴などを説明しました。

そして、インフラの規模が大きくなるとサーバ管理ツールが必要になります。ここで誕生したのが初代Mackerelで、近世にはすでに1000台規模になっていたサーバ群の監視やデプロイなど各種ツールのマスター的な存在でした。これを近代に入ってから見直し、フルスクラッチで再開発したのが2代目Mackerelで、さらにそれを現代になってSaaSとしてリリースしたのが現在のMackerelです。

Mackerelは、ともすると単なる裏方ツールになりがちなサーバ管理ツールを、エンジニアの開発・運用プロセスを革新するサービスとして提供できるレベルまで進化させた点が「技術が実現するイノベーション」と呼ぶにふさわしいと思いました。渡辺さんの発表資料は公開されていますので、そちらもご覧ください。

定置網にかかった魚をAIで判定!

続いての登場は、はこだて未来大学の鈴木恵二さん。「深層学習の応用事例定置網における魚種判別」というタイトルでの発表です。函館といえば朝市で売っているイカなどの魚介類が名物ですが、はこだて未来大学では漁業にITを活用する研究を「マリンIT」と称して実践中です。その中で鈴木さんが取り組んでいるのが定置網に関する研究です。

定置網を使った漁法は、網を設置して魚が来るのを待つという受動的な漁法のため漁獲高が不安定という問題があります。特に魚の資源管理という観点では獲れ過ぎるのも問題で、そのためには網にかかった魚が何であるかを把握する必要があります。そこで鈴木さんのグループでは定置網に魚群探知機を設置し、取得したデータをサーバに送って解析することで、網にかかった魚の種類を自動判定する研究をしています。判定材料は季節や魚の大きさなどで、これらのデータをAIに学習させることにより、魚種や漁獲量を推定しています。今のところ正答率は5割ぐらいですが、これは漁業関係者の人力予想と同等のレベルだそうで、今後さらに研究が進めば人間を超えられそうです。技術が実現する漁業のイノベーションに期待しましょう。

なお、この研究については、テレビ番組「ガイアの夜明け」8月21日(火)放送分でも紹介されたそうです。

巨大なデータセンターはもういらない?

鈴木さんの発表の後、本来の会場の機材が復旧したのでそちらに戻り、3番目の発表者としてさくらインターネット研究所の鷲北賢が登場しました。タイトルは「技術が実現するイノベーションとデータセンターの将来」です。研究所ではまだビジネスになるかどうかわからない新技術領域を中心に研究を進めていますが、今回はそれらの中から、今後のデータセンターのあり方に関する研究と予想を発表しました。結論を先に書きますが、鷲北の予想は「さくらインターネットは、10年以内に全国に300か所ぐらいデータセンターを持つだろう」という、ちょっと驚くべきものでした。以下、この予想に至る経緯を書きます。

クラウドサービスの普及により、サーバをはじめとする計算機資源はデータセンターに集中するようになりました。そのためデータセンターは大規模化し、それにより処理は効率化されたのですが、その一方でリソースの過度な集中により、帯域不足や処理の遅延といった問題が発生しています。そこで次の時代は、端末が自立的に処理を行い、端末間を短・中距離の無線通信でつなぐ、エッジ/フォグコンピューティングと呼ばれるアーキテクチャがやってくるだろうと言われています。これを実現するには、局所的に端末をまとめる小規模なセンター(数ラック程度)が多数必要で、これが予想として提示した「全国に300か所ぐらいのデータセンター」の正体です。

では、さくらインターネットが石狩市に作った大きなデータセンターはどうなるの?という疑問が湧いてきます。研究所の予想では、大規模データセンターは不要にはならないが、おそらくは現状の規模で十分であり、今後は次第に時代遅れになっていくだろうとのことです。本当にエッジ/フォグコンピューティングの時代がやってくるのか、注目していきたいと思います。

北海道で活躍するエンジニアによるパネルディスカッション

第2部は北海道を拠点に活動しているエンジニアの方々をお招きし、当社代表の田中邦裕がモデレーターとなってのパネルディスカッションを行いました。パネリストは、オンデマンド配車など公共交通関係のサービスを開発している未来シェアの松舘渉さん、システム開発・ゲーム制作・VR開発を行っているインフィニットループの松井健太郎さん、音源やモバイルコンテンツなどを制作しているクリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之さん、Webサービス開発をしているBULBの阿部友暁さんです。ちなみに田中を含め登壇者全員が会社の代表で、いわばエンジニア社長対談という形になりました。

登壇者の皆さん:左から、田中、阿部さん、伊藤さん、松井さん、松館さん

いま注目しているものは?

田中から提示された1つ目のお題は「技術でも経営でもいいんですが、いまどこに注目してますか?」。登壇者の皆さんの回答はこんな感じでした。

松舘さん

  • 松舘さん:自社でサービスとして提供している「ライドシェア」(タクシーやバスの相乗り)や、その根底となる考え方である「MaaS(Mobility as a Service)」。
  • 松井さん:「ボイスチェンジャー」と「バーチャルYouTuber」。後者はドワンゴとのジョイント・ベンチャー企業を立ち上げたばかりです。
  • 伊藤さん:自らが実行委員長を務める「No Maps」。先端技術や新しい文化を提示するイベントで、米国で行われているSXSWに影響を受けたものです。
  • 阿部さん:「無人レストラン」。アプリで注文し、店に行くと飲食物を受け取れるサービスです。これも自社でシステムを構築し提供中です。
  • 田中:「シェアリングエコノミー」。今までは余った部分を効率よくシェアするという考え方でしたが、ここ1-2年はシェアを「前提」とする社会が来ていると思っています。

松井さん

こうして回答を見ると、ほぼ全員が自社で手がけているものを挙げています。さすが社長の集まりですね。

北海道で働くと楽しいよ!

田中からはもう1つの問いかけとして「自分のビジネスと北海道の関係性や、北海道をキーワードに何かお願いします」というお題が提示されました。こちらも皆さんの回答をお伝えします。

伊藤さん

  • 松館さん:「場所は選ばずにビジネスをやってますが、仕事で全国のいろんな暑いところに行ってると、北海道は涼しくていいなぁと思います」
  • 松井さん:「うちの会社は、社是に『地域』というキーワードが出てきます。そういうこともあり、支社を出すときに東京には行かずに仙台に進出しました。地方人は地元が好きなので、優秀な人が地元に帰って働いてくれてますね」
  • 伊藤さん:「ネットを使うとあれもこれもできるという妄想がふくらんで会社を作ったんですが、それから20年ぐらい経った今、ネットがあるから地方に住んでいてもいろいろチャレンジできて、いい時代になっていると思いますね」
  • 阿部さん:「東京で仕事をしていた時期もあるんですが、東京はコストや競争がすごくて大変だなぁと。北海道で仕事した方が、札幌に来たい優秀な人の受け皿にもなれるし、採用効率がいいんじゃないですかね」
  • 田中:「北海道や沖縄は、その地域自体がブランドになっているのがいいですね。でも、働きに来てもらうにはそこにいい会社があることが必要で、さくらインターネットもその1つになれればと思います」

阿部さん

どの方も、北海道という地域を自ら選択して起業しています。そこには北海道が好きというのももちろんあるとは思いますが、それだけではなく、東京ではない土地で働くことのメリットも感じていることがうかがえました。

ライトニングトーク『さくらの中の人が皆さんの想いを受け止めます!』

田中のあいさつと乾杯で懇親会スタート!

この後は隣の部屋に移動し、懇親会を兼ねたライトニングトークを行いました。こちらには6人の方が登壇しました。発表者名とタイトルを紹介します。

  • 「JIG-SAW 〜 CHANGE THE GAME. CHANGE THE WORLD. 〜」櫻田和宏さん(JIG-SAW)
  • 「カスタマーサポートの働き方 さくらインターネットの場合」大西圭一(さくらインターネット)
  • 「Web 3Dエンジン」Jing Luさん(BULB)
  • 「日本初、宇宙データプラットフォームの始動」竹林正豊(さくらインターネット)
  • 「さくらのVPSへの改善要望」長谷川雅俊さん(ノースグリッド)
  • 「ここがすごいぞ、石狩iDC」玉城智樹(さくらインターネット)

それぞれ興味深い内容でしたが、「さくらのVPSへの改善要望」に対しては、さくらのVPSの責任者である横田真俊が、要望に対応できるかどうかその場で回答するという場面が見られました。また、「ここがすごいぞ、石狩iDC」は、発表中にサプライズで石狩データセンターの見学イベントが公開され、参加者の皆さんからの応募であっという間に定員に達しました。たくさんのご応募ありがとうございます!

さくらのVPSの改善要望を出す長谷川さん(右)と、要望に回答する横田

おわりに

ライトニングトークを見ながらの懇親会も大いに盛り上がり、あっという間に閉会の時間を迎えました。このイベントをきっかけに、道民の皆さんにとってさくらインターネットがより身近な存在になれたらうれしいです。これからもさくらインターネットは北海道を応援し、盛り上げる取り組みを行っていきますので、よろしくお願いします!

それではまた、次回のイベントでお会いしましょう!