LINEのチャットボット開発技術を極めよう!「福岡市粗大ごみ受付Botを大解剖」イベントレポート

こんにちは、さくらインターネットの大喜多です。

2018/9/19にLINEアカウント「福岡市粗大ごみ受付(@fukuokacity_sdg)」が福岡市、LINE株式会社、株式会社オルターブース、さくらインターネット株式会社の協業によりリリースされ、行政サービスでのチャットボット利用の実証実験が開始されました。この日本初の対話型粗大ごみ申し込みサービスについて、実装のポイントや要素技術を紹介するイベント「【福岡】Bot開発技術を極めたいエンジニア大集合! 福岡市粗大ごみ受付Botを大解剖」が開催されましたので、レポートいたします。

会場の様子です。100名近くの方が来場されました。

粗大ごみ受付Botの解剖

最初に本プロジェクトの概要・背景について、福岡市の稲永麻子さん・小椋潤さんから説明がありました。

福岡市 稲永麻子さん


福岡市 小椋潤さん

福岡市では、「Fukuoka AI Community」(市内企業等のAIを活用した労働生産性向上等を目的に活動する会員制組織)の中で「AIを使って行政サービスを使いやすくする提案」を募集しました。これに対してLINE Fukuoka株式会社が応募主体となって粗大ごみbotの提案があり、今回の実証実験開始に至ったとのことです。

Fukuoka AI Communityの紹介

AI実証実験提案のパートナーシップ

粗大ごみの量が毎年増えてきているとのことで、サービスの向上と事務効率化を目的として新たな窓口を用意することを構想、LINEのチャットボットによる粗大ごみ受付の実証実験をおこなうことになったとのことです。

続いて、LINE株式会社の中嶋一樹さんから、粗大ごみ受付Botのデモンストレーションと技術解説がありました。

LINE株式会社 中嶋一樹さん

実証実験では、このサービスが安定的に提供できるのか、ユーザーの皆様に満足してもらえるのか確認することを本来の目的とされているそうですが、すでに想定以上に活用されているとのことで、従来から提供されている福岡市の粗大ごみインターネット受付よりも申込数が多くなっているとのことです。

ここからは実際に粗大ごみbotを操作しながら、採用されている技術の解説がありました。

  • LINE Login:LINEアカウントに登録されている個人データをチャットボットに連携する機能(できるだけ文字入力を減らしてユーザーエクスペリエンスの向上をはかるために採用)
  • LINE Front-end Framework(LIFF):トーク上で外部のWebアプリケーションを表示する機能(粗大ごみの品目を選択式で入力できるような仕組みを実現)
  • Quick Reply:トーク上に多数の選択肢をコンパクトに表示し、入力の補助をおこなう機能

この後のセッションでより詳しく解説されるLINEの機能「LINE Login」「Flex Message」「LIFF」「Quick Reply」がそれぞれどのような役割を果たしているのか紹介されました。また、入力項目に従って入力する他に、通常の日本語のメッセージを送ると、自然言語解析によってその内容を解釈してチャットボットが動作するようになっており、「電話をかけたほうが早いのではないか」という課題を解決したそうです。

チャットボットはユーザーが使い方を覚えるのではなく、ユーザーの入力を解釈して動作することで、ユーザーのリテラシーが高くても低くても機能を提供することができるということで、今までのアプリケーションとは異なった、新しいパラダイムになるのではないかという期待を寄せているとのことです。

また今回の行政サービスとの連携を実現するためのキーとなった「Headless Chrome」についての紹介がありました。

「Headless Chrome」は画面表示をおこなわないWebブラウザで、今回のチャットボットは申込受付時にHeadless Chromeを起動し、既存の福岡市の粗大ごみインターネット受付に必要事項を入力してデータ連携をおこなっているとのことです。

一般に行政システムのデータベースにアクセスすることはセキュリティ要件上難しく、進行に時間が掛かるとされています。今回は実証実験としていち早くこの体験を提供したいという関係者の総意により、Headless Chromeを活用することで行政サービス側のシステム変更なしに新しいユーザー体験を提供することができたとのことです。

Headless Chromeを介したデータ連携の流れ

なお、Headless Chromeはサーバー間通信を想定しておらず、メモリ消費が大きくなるなどの注意点がある為、「さくらのクラウド」を活用した解消策が採用されております。

インフラとして採用された「さくらのクラウド」の紹介、本プロジェクトでのさくらインターネットが担った役割について、さくらインターネット株式会社の横田真俊・櫻井裕から説明がありました。

さくらインターネット株式会社 横田真俊

さくらインターネット株式会社 櫻井裕

また、チャットボットのシステム開発を担当した株式会社オルターブースの藤崎優さん・加藤司さんから、アーキテクチャの解説がありました。

株式会社オルターブース 藤崎優さん

株式会社オルターブース 加藤司さん

福岡市粗大ごみ受付Botのシステム構成図

加藤さんからは、さくらのクラウドを使用した所感として「転送量課金がないこと」「クラウド側で用意されているパブリックイメージ以外にISOから仮想マシンにインストールすることができる」「国産サービスなので日本語ドキュメントやサポートが充実している」ことを挙げておられました。

チャットボットのインフラ技術詳細については、さくらのナレッジで後日公開予定ですので、そちらをお楽しみに!

LINEでWebアプリという可能性 - LIFF

LIFFとは、LINE Front-end Frameworkの略で、LINEアプリ内で動作するWebアプリのプラットフォームです。UIT(User Interface Technology)の部署でLIFFの開発を担当している清水大輔さんから、LIFFについて技術的に突っ込んだ紹介がありました。

LINE株式会社 清水大輔さん

これを覚えたら表現力100倍 - Flex MessageとQuick Reply

BotのAPI関連の開発を担当している小野侑一さんより、LINEのチャットボットで使えるUIモジュールであるFlex MessageQuick Replyについて深掘りの紹介がありました。

LINE株式会社 小野侑一さん

Profile+って知ってますか? - LINE Login

LINE LoginおよびそのNativeSDKの開発を担当している御代田亮平さんからLINE LoginとProfile+についての紹介がありました。

LINE株式会社 御代田亮平さん

おわりに

LINEのチャットボットの可能性を実感できるイベントでした。行政サービスの実証実験に採用されるなど、LINEが社会インフラとして広がっていること、今回の実証実験用チャットボットがUXにこだわって開発されたこと、今のLINEにはチャットボットのUXを向上させる機能が多く開発されていること、チャットボットがこれまでのアプリケーションとは異なったUXを提供できる新しいパラダイムになるのではないかというようなことを感じました。またこのような新しい試みのインフラとしてさくらのクラウドが採用されたことについて、さくらのクラウド自体の可能性も実感することができました。今後の展開から目が離せません!

LINEの”L”で集合写真!