OSS鳥瞰図ハッカソン 2024 ~OSSの未来を切り拓く~
こんにちは、さくらのナレッジ編集部 安永です。2024年7月27日に、京都リサーチパークで開催されたオープンソースカンファレンス京都2024に参加しました。その中で、日本OSS推進フォーラムの鳥瞰図ワーキンググループが主催する「OSS鳥瞰図ハッカソン」が開催されましたので、このイベントについてレポートします。
目次
OSS鳥瞰図
みなさんは「OSS鳥瞰図」という言葉を聞いたことがありますか?OSS鳥瞰図は、複雑で多岐にわたるOSSを視覚的に俯瞰できるようまとめたものです。OSS鳥瞰図の基本方針は、「安心」「安全」「安定」という三つの要素を確保しながらOSSをリストアップし、OSSを採用・導入する際に役立つ情報を提供することです。日本OSS推進フォーラム鳥瞰図WGは、OSS鳥瞰図を作成することで、OSS利用者が選定をより短時間で、かつ安心して行えるよう支援することを目指しています。また、OSSに関する先端技術情報や最新の動向、日本国内の事例を広く集め、OSSを活用する人々にとって価値ある情報を提供することも重要な目的として日々活動しています。
OSS鳥瞰図アイデアソン
OSS鳥瞰図ハッカソンは、OSS鳥瞰図WGの固定メンバだけでは得られない新しい視点やアイデアをもとにOSS鳥瞰図をアップデートすることを目的に、NEC OSS推進センターの米嶋さん、IPA デジタル基盤センターの羽鳥さんを中心に開催されました。当初ハッカソンの予定でしたが、「どのようなOSS鳥瞰図が使いやすいか」をテーマに掲げ、参加者たちが自由にアイデアを出し合うアイディアソンとして、延べ12名が集まりました。彼らは自分たちのアイデアを具体的な形にするために、OSS鳥瞰図の改善点や新しい機能について議論を重ねました。
OSS更新時の課題
OSSの更新を行う際には、基準の曖昧さとキャッチアップの偏りが問題となります。仮想化、セキュリティ、DevOpsなど、enterprise領域で利用されるカテゴリはユーザ数が多く注目度も高い一方で、デスクトップ、組み込み系の分野ではユーザ数に偏りがあり、注目度が低い傾向があります。そのため、カテゴリを横断して一律の指標を設定することが難しく、明確な基準を示すことができないという問題があります。さらに、OSSの更新においては、担当者の裁量によって特定のカテゴリに偏りが生じる可能性があります。新規・既存のOSSに関係なく新たにOSSをキャッチアップする際には、全てのカテゴリに精通したメンバがいないため、どうしてもキャッチアップできる領域の差が生じてしまいます。
アイデアソンの実施結果
今回のアイデアソンでは、たくさんの新しいアイデアが提案されました。
表示方法とインタラクションについてです。多量な情報があっても見やすくわかりやすい鳥瞰図にするために、ナレッジグラフ(グラフDB)形式でデータを表示する方法が挙げられました。2つ目は、マウスオーバーすることでライセンス情報、最新バージョンのリリース日、サブカテゴリの解説などの付加情報が表示されるようにすること。3つ目は、HTML形式で動的に図を生成すること。4つ目は、カテゴリ名を大きく表示し、ユーザーがマウスホバーした際に詳細な情報を表示すること。データ処理・ツールについては、ExcelデータをXML形式に変換し、オープンデータとして使いやすくすることが挙げられました。
カテゴリ・関連性については、クラスタリングを行うことで、カテゴリの枠とは別軸でOSS同士の関連性を可視化することが挙げられます。2つ目は、OSSが所属するカテゴリを複数にすること。3つ目は、既存ソフトウェアとの関連性などの付加情報を補足することです。
OSSを利用する際の制限・ハードル、採用の難易度や利用判定する際の基準、具体的な利用例や使用に際しての難易度などの「あったらいいな」と思う情報の追加が挙げられました。また、WGの活動として、鳥瞰図を更新して終わるのではなく、Qiitaで記事を執筆したり、ユーザをフィードバックフォームへ誘導し、そのフィードバックを元に更なる使いやすさを追求する必要性が挙げられました。
アイデアソンの今後
今後は、さくらのVPSを利用しアイデアソンの結果を検証し、オープンデータとしてOSS鳥瞰図のCSVファイルを公開予定です。
OSSの探し方、調べ方
ここからは、OSSに関する情報を入手する際に、参考となる情報源(サイト)を紹介します。これらのうちいくつかは「OSS鳥瞰図」に掲載するOSSを選定する際の参考にもしています。
OSS鳥瞰図に掲載するOSSを選定する時に下記を判断材料として用います。1つ目が、GitHubの「star」と「Fork」の数。2つ目がOpenHubの「I Use This!」と「Activity」の数です。3つ目がQiitaの記事投稿数です。主にこの3つを使って判断しますが、絶対的な基準ではなく、総合的に判断して掲載可否を判断しています。また、GoogleトレンドやOSSのEoL情報や直近のリリース情報、有識者による意見を参考にしています。
AlternativeTO
AlternativeToは、指定したOSSと類似するOSSを提示してくれます。ライセンス種別やOSなどでのフィルタ検索も可能です。
CNCF Cloud Native Interactive Landscape
CNCF Cloud Native Interactive Landscapeは、CNCF(Cloud Native Computing Foundation)により発表されている、クラウドネイティブで推奨されるツール一覧です。ここではカテゴリごとにグループ化されており、OSSだけでなく商用プロダクトも混在しています。
今後の鳥瞰図WG活動の取り組み
今後の鳥瞰図WG活動は以下の取り組みを進めていきます。まず、2023年度版OSS鳥瞰図を2024年度版に更新します。また、今回のアイデアソンのように、あるべき姿の検討や、それをもとにしたモック作成、2022年からスタートしたGitHubでの鳥瞰図の公開を進めていきます。鳥瞰図のより良い活用に向けたフィードバックの仕組み構築や、各コミュニティでのプロモーションを通して、認知度向上に努めていこうと考えています。
まとめ
OSS鳥瞰図は、OSSを選定する際に重要なツールの一つです。特に、膨大な数のOSSの中から特定の要件に合ったOSSを迅速に見つけ出す手助けをする点で、その価値は計り知れません。今回のハッカソンで得られたアイデアを取り入れることで、OSS鳥瞰図はさらに進化し、多様なニーズに応えることができるようになるでしょう。しかし、OSS鳥瞰図の改版には、ユーザからのフィードバックが不可欠です。OSS鳥瞰図WGでは、OSS鳥瞰図へのご意見を募集しています。また、アイデアや経験を鳥瞰図作成に役立てたい方も大募集中です。活動に興味がある方は、OSS鳥瞰図WGへ連絡してください。
安心・安全・安定なOSSの選択だけでなく、先端的のIT技術や世の中の潮流をつかむためにも「OSS鳥瞰図」を活用してみてください。