FRC挑戦の軌跡~高校生のものづくりが世界の舞台で羽ばたくために~

こんにちは、さくらのナレッジ編集部です。

このたびは、さくらインターネットで支援している一般社団法人ZENSHINの大原さんより、「FRC挑戦の軌跡~高校生のものづくりが世界の舞台で羽ばたくために~」というタイトルでのプレゼンテーションがありましたのでレポートいたします。

一般社団法人ZENSHINとは

一般社団法人ZENSHINは高校生が運営して、学園がサポートする形式で運営されています。ZENSHIN Roboticsは、一般社団法人ZENSHINの中で、世界最大の国際ロボット競技会であるFRC(FIRST ROBOTICS COMPETITION)に出るためのチーム名とのことです。法人設立は2023年9月、ロボットの製作開始は2023年12月と、本格的に活動を開始してから1年ほどの組織となります。

日本から世界に羽ばたく人財の育成を目標としており、高校生のうちから世界の実戦の場で競う場を提供することを目的にしています。今年度目標はFRC2年連続出場、中期的目標はFRCの常連、長期的目標はFRC優勝と定めています。

昨シーズンの取り組みと成果・課題

昨シーズンのロボットは「武蔵」という名称で、FRCはロボット同士の接触が多いことと試合のスパンが短いことから、ロボットを継続的に同じパフォーマンスを出すために、頑丈さとメンテナンス性を重視して設計されました。その代わりに機動性を簡素化しており、斜め移動ができない仕様になりました。

モーター制御は電圧量の変化によるもので、コード的にもシンプルなものとして、安定性を重視した設計にしたそうです。

ハワイの地区予選では8勝8敗となり、ルーキーオールスター賞を受賞し、ティーンズアワードファイナリストとなりました。最後まで壊れることなくベストパフォーマンスを維持できたことと、各試合で安定してスコアを積み重ねることができた点が評価される一方、得点効率の悪さ、根本的な技術力・資金力の格差を感じたとのことでした。

世界大会においては、3勝7敗となり、予選リーグ敗退となりました。他のチームは自動制御の導入が進んでおり、その点で格差を感じたそうです。

主に以下のような点が課題として挙げられました(スライド内の#[数字]はチームを指しています)。

今シーズンの取り組み

今シーズンは課外活動として、より多くの人にロボットを知ってもらう、ロボットに興味を持ってもらう活動や、他のロボコンに参加している学生にFRCについて知ってもらうなどの活動をしていました。

そして今シーズンのロボット製作にとりかかったとのことですが、今年は海がテーマということで「凪(Nagisa)」という名前になりました。

昨シーズンの経験と反省を生かし、前回は同じモーターを複数使っていたところを、複数の特徴が異なるモーターを使用するように改め、厚めのアルミ材による強度アップを図りつつ、ポリカーボネートなどの材料を併用することで重量のバランスをとるなどの工夫を図るようにしたとのことです。また今シーズンは独立四輪駆動を導入して機動性をアップしたことと、AIを搭載したカメラの導入、微分の考え方を導入したロボット制御プログラムのブラッシュアップなども図ったそうです。

なお、今年もFRCに出るのか?ということは議論にもなったそうです。FRCは世界大会であるがゆえにロボットを長距離輸送したりせねばならず、労力の面でも資金面でも厳しいとの見解がありました。しかし、大変な世界大会だからこそ学べることも多いということで、設立の理念にもある「より多くの学生をFRCに連れて行く」ということから、今年も参加することに決めたとのことです。

また、工学の世界においては、情報工学にフォーカスが当たり非常に多くの学生が集まる一方、機械工学は定員割れを起こすこともあるとのことで、よりハードウェアにも興味を持ってもらいたいということで活動を続けていくとしていました。

質疑応答

そのあと質疑応答の時間となり、以下のようなやりとりが行われました。

Q:大会では何を競うのか?
A:ルールは毎年大きく変わる。昨年は目標に対してリング状の物を投げて入れた数により得点が計算される。オブジェクトをどこかしらに置くというのが基本ルールとなっている。

Q:ロボットの製作期間は?
A:レギュレーションが決まってから3ヶ月くらいで製作することになる。

Q:プログラミング言語は何を使っているのか?
A:Javaを使用している。ロボット制御用のライブラリが存在する。

まとめ

プレゼンテーションを通じて、ロボット競技に対しての強い情熱を感じました。また個人的な感想としては、機械工学と情報工学とを分けるのではなく。両方を深化させて、ソフトウェアによるロボット制御をより高度化したりする枠組みが作れたらいいのかなと思いました。さくらインターネットでは今後も一般社団法人ZENSHINを支援してまいりますので、ぜひ目標に向かって進んでいってもらえたらと思います。