JANOGerも関西人もようこそBlooming Campへ !「さくらの夕べ in 大阪」レポート
はじめに
さくらのナレッジ編集部の法林です。
2026年2月11日(水祝)に、さくらインターネットの大阪本社でもあるBlooming Campにて「さくらの夕べ in 大阪」を開催しました。当日は祝日ではありましたが当社がホストを務めるJANOG57ミーティングが付近で開催されていたこともあり、約100人の方にご参加いただきました。たくさんのご来場ありがとうございました。それではイベントの模様をご紹介しましょう。
今日のJANOGどうやった?
最初のセッションは筆者がモデレータとなり、当日行われたJANOGの感想戦を行いました。
当日のセッションで良かったものを募ったところ、「渋谷から大阪堺へーKDDIが立ち上げたAIデータセンターの現場知見」が挙がりました。当社もAIインフラ向けにコンテナ型データセンターを建設したので興味深い話題です。別記事にてレポートしますが当社の黒澤さんの発表も好評でした。BoFに参加した人も多く、情シスBoFではGoogle WorkspaceやMicrosoft 365の巧拙といった話題で盛り上がったという報告もありました。
併設の展示会を見た人からは、日本AMDのブースでGPUの実物が見られたとか、長年ユーザとして利用しているソフトウェアの展示ブースで開発者と初めて対面できたというJANOGらしい話もありました。日本製線は展示会場内でケーブル作成体験会を実施し、予想以上に多くの参加者が来て賑わいました。展示会には付きもののノベルティグッズもいくつか紹介されました。
ホスト企業であるさくらインターネットのメンバーからは、主にNOCに関する報告がありました。ActiveLogicという装置を導入して通信の品質を計測したり、ダッシュボードなどをYouTubeで配信するといった取り組みが紹介されました。NOCに関する詳細はJANOG57のNOCページをご参照ください。
JANOG57 デザインのはなし
続いてのセッションは「JANOG57 デザインのはなし」です。当社にはデザインチームがあり、ウェブサイトや配布物などのデザインを担当しています。そのデザインチームから、JANOG57のデザインを担当した田名部かおりさんが発表しました。
メインビジュアル(上記の画像)の制作は、まずデザインコンセプトとして「インターネット的な文化」「うめきた感」(「うめきた」はBlooming Campがある大阪駅・梅田駅北側のエリア)「さくら感」の3つをもとにした「うめきたコネクト」を掲げ、無数の三角形を組み合わせて流れとつながりを感じさせる幾何学模様をベースにビジュアルを作成しました。初案は色が調和していないとか奥行き感がないといった問題があったので、色の調整や白いドットの追加などで改善しました。制作期間は1か月弱で、このようなビジュアル制作の期間としてはかなり短かったそうです。ロゴには大阪要素を入れたいと考えていたところ、JANOGのOをたこ焼きにするというアイデアが浮かび、Oに爪楊枝とソースを追加したものをもとに図案化しました。
それから、ビジュアルやロゴを適切に使ってもらうためのガイドラインも用意しました。ガイドラインには、制作物の形に合わせたロゴの配置、色の指定、ビジュアルを構成するパーツの説明などが記載されています。JANOG関連の制作物は多岐にわたり、外注するものも多いので、デザインイメージを一貫するためにガイドラインが必要でした。
この他に、グッズや衣装など、今回のためにデザインした品物の数々も紹介されました。
上の写真は大阪駅から会場へ向かう通路に掲げられたJANOG57のビジュアルです。田名部さんによると「自分がデザインしたものが大阪駅前の通路に並んだのはデザイナー人生最大の経験かもしれない」だそうです。
Nippon Seisen Virtual Factory Tour
3番目のセッションは、JANOG57の会場ネットワークを構築するにあたりケーブルをご提供いただいた日本製線から松田秀一さんにご登壇いただきました。Virtual Factory Tourということで、群馬県前橋市にある日本製線の工場内を撮影し、JANOG57で使用したLANケーブルができるまでの工程を追った映像を松田さんの解説付きでご覧いただきました。
映像や製造工程の詳細は割愛しますが、工程の概略は以下のようになります。
- 8本の芯線の製造
- 芯線を2本ずつのペアで撚る(対撚り(ついより))
- ケーブル内部で撚り対線を分離するための十字介在の製造
- 4つの撚り対線と十字介在の撚り合わせ
- シース(外被)の製造と印字(今回はさくらインターネットのロゴなども印字していただきました)
- できあがったケーブルの電気特性の検査
- ケーブルを所定の長さに切り、両端にプラグを取り付け
- ケーブルの梱包(JANOG用に制作した袋への封入)
今回制作したLANケーブルはJANOG57の当社展示ブースで来場者に配布しました。ピンクのケーブルは珍しいのか、参加者にも好評でした。
なおプラグの取り付けに関しては、JANOG57のNOCメンバー向けに講習会も実施していただきました。そちらのレポート記事も合わせてご覧ください。
さくらの生成AIインフラ座談会
最後のセッションは「さくらの生成AIインフラ座談会」です。さくらインターネットでは生成AI向けのサービスとして高火力シリーズやさくらONEを提供していますが、それらのサービスの基盤となるGPUインフラを作っているエンジニアに集まっていただき、インフラ構築の楽しみや苦労などを話していただきました。登壇者は以下の方々です。
- 黒澤潔裕さん: さくらONEのネットワーク設計・構築・運用の自動化などを担当
- 井上喬視さん: 高火力 PHYのインフラ担当
- 小林正幸さん: 今後のAIインフラに必要な先端技術の調査・検証や、情報収集と社内への展開を担当
- 道下幹也さん: GPUエコシステム周辺の先端技術の調査・検証、特に推論関係のソフトウェアを担当
- 西野大さん(モデレータ): 今回のセッションの企画担当
座談会で出た話題から一部を紹介します。
ストレージネットワークについて
当日、JANOG57にて黒澤さんの発表がありました。発表内容は別記事にてレポート(※)していますのでそちらを参照いただくとして、黒澤さんに発表の感想や議論で焦点となったところを聞きました。その中で、特にストレージネットワークの作り込みが注目されたそうです。
(※) 【JANOG57レポート】HPCネットワークの多様化に挑む – マルチベンダー×マルチOSで支えるHPCネットワーク運用の実際
これに関連して、井上さんからストレージネットワーク構築の苦労話がありました。ストレージはユーザによって要件が大きく異なるため、ネットワークもそれぞれに合わせて構成する必要があり、結果的に複雑なものになります。現在はネットワーク構成技術としてMLAGを採用していますが、これも試行錯誤の結果、最新の難しい技術を使うよりも旧来から存在するシンプルな技術を使った方がいろいろな要件に対応しやすいということでこの選択になったそうです。
また、生成AIインフラでは、1PBを超えるような巨大なストレージを使うことがあります。そのような機器は電力も大量に消費するので、電力容量などデータセンター全体のファシリティも気にしながら機器を配置する必要があり、このあたりは生成AIインフラならではの苦労と言えます。
これからの生成AIインフラ
小林さんには今後の生成AIインフラの動向について気になっていることをお話しいただきました。現在の生成AIインフラは急激な需要の伸びに対して有り合わせの技術で作られており、多くの課題を抱えています。特にネットワークが遅いと処理性能の低下に顕著に影響するため、そこを速くするための設定や運用に頭を悩ませています。ネットワークインターフェースも400Gbpsから800Gbpsになり、もうすぐ1.6Tbpsも登場するようです。こういったインフラの構築や運用を楽にするためのプロトコルや規格も構想されているので、日々それらの情報をウォッチしているそうです。
これに対して井上さんからも、ケーブルの長さ、光の伝送速度、スイッチのバッファなど、考慮すべきパラメータが非常に多いので一発で正解が出にくく調整するのが大変というコメントがありました。黒澤さんからは、そういった大量のパラメータを気軽に変更できるように、Ansibleを使った自動化に取り組んでいる話がありました。
推論と生成AIインフラ
道下さんからは推論のためのインフラという観点で話がありました。少し前までは1個のGPUで推論の処理ができたのが、それでは足りなくなって8個のGPUが載っているサーバを使い、それでも足りないのでマルチノードにしたりといった具合にどんどん巨大化しています。特に推論ではメモリを大量に使いますが、これもGPUに載っているメモリでは足りず、ホストのメモリを使ったり、さらには別のサーバにメモリプールを用意してそちらを使うようなケースも出てきているそうです。
参考までに、さくらのナレッジでは道下さんによる分散推論基盤の解説記事を連載中です。詳しく知りたい方はご覧ください。
生成AIインフラは技術の総合格闘技
セッションの後半は本当に座談会という感じで登壇者が各々の思いを語り合いました。
生成AIが出るまでのネットワークは配線の複雑さやトランシーバーの消費電力などを気にする必要はほぼなかったのですが、生成AI登場後はネットワーク構築に際して考慮すべき項目が非常に増え、総合格闘技的な難しさが出てきています。ただ、そこにはつらい面もありますが面白いしやり甲斐もあるようです。
また、このような複雑さはトラブルシューティングの難しさにもつながります。これは壇上のトークが一番盛り上がった話題でした。ユーザから言われる苦情はたいてい「なんか遅い」で、その遅くなる原因を特定するのにシステム全体の複雑さが災いして苦労しているそうです。パケットヘッダに設定する1ビットの設定の違いや環境変数の有無などのちょっとしたことで性能が大幅に変化したり、クラスタを組んでいると1台の性能低下が全体に影響することもあります。さんざん調査した挙げ句に原因がサーバの設定漏れだったということもあるようです。このようなトラブルシューティングを行うにはネットワークインフラの知識だけでは不十分で、サーバやソフトウェアなども含めた幅広い知識を持ち合わせていないと対応できないのがいかにも総合格闘技という感じがしました。
おわりに
セッション終了後は参加者の皆さんと交流会を行い、当社と関わりのある企業からドリンクなどの提供もいただきながら楽しく歓談しました。ご覧のスポンサーの提供でお送りしました。ありがとうございました!
- 株式会社リブセンス(転職ドラフト)
- 日本製線株式会社
- アリスタネットワークスジャパン合同会社(次回JANOGのホスト企業です。応援しています!)
今回の参加者を見渡すと、確かにJANOGに参加していた人が多かったですが、JANOGとは関係なくさくらインターネットのイベントだから参加した人(主に関西在住の人)もある程度いたように見受けられました。参加者の皆さんに楽しいひとときと良い交流の機会を提供できたなら幸いです。またどこかの街で「さくらの夕べ」を開催できればと思いますので、そのときはぜひご参加ください。
それではまた次回のイベントでお会いしましょう!








