第5回の概要

WordPressサイト運用のコツということでお届けしている本連載、第5回はWordPressの表示速度向上について。意外と触れられることのないPHPバージョン選択機能のご紹介をベースに、PHPバージョンアップのメリット、2018年4月から「さくらのレンタルサーバ」のスタンダードプラン以上のプランで利用できるようになったモジュール版PHPについてもご紹介していきます。

PHPバージョン選択機能とは

さくらのレンタルサーバではPHPのバージョン選択機能を用意しています。この機能を使うことにより、アカウント単位で使用するPHPのバージョンを4.4から7.2まで変更することが可能です。PHPバージョン選択の設定方法はサポートサイトをご覧ください。

PHPのバージョンは、レンタルサーバを契約した時期により初期設定値が変わってきます。現在はPHP7.2が初期設定値ですが、以前は5.6や5.4が初期値だった時代があります。そして、PHPはバージョンにより関数が使えなくなる等の仕様変更が行われているため、強制的にバージョンアップすることは行われておらず、何も気にしなければレンタルサーバを契約した当初のPHPバージョンでそのままサイトが運用されています。

そんな古いPHPが初期設定だった方も、最新のPHPを利用できる。それがPHPバージョン選択機能です。

PHPのバージョンを上げるメリットとは?

PHPバージョンアップのメリットは大きく分けると2点あります。まずパフォーマンス面。PHPのパフォーマンスはWordPressサイトの場合ページの表示速度に直結します。このパフォーマンス、PHP5.6から7.1に変更するだけで2倍〜3倍の処理速度向上が望めます。さらに、モジュール版を利用することで最大16倍の高速化を実現することができます。モジュール版PHPについては後ほどご紹介します。

もう1点はセキュリティ面。すでにPHP5.6未満のバージョンはEOL(End of life)、つまりサポート期間が終了しており、セキュリティホールなどが放置されている状態です。5.6についても2018年12月でのサポート終了が予告されているため、PHP5系を利用している方は早急にPHP7系へ移行することが推奨されています。PHP5系を利用し続ける場合、こういったリスクを許容して使うことになり、非常に危険な状態となります。最悪データベースの内容が不正に取得されたり、サイトが改ざんされたりといった被害が発生する可能性があります。

PHPバージョンアップを阻害する古いWordPressプラグイン

第4回のセキュリティ編でも書きましたが、古いWordPressプラグインはセキュリティホールになるとともに、PHPのバージョンアップを阻害する要因にもなります。これは、メンテナンスが忘れ去られてしまい放置されたプラグインは、新しいバージョンのPHPへ対応することもないため、結果としてユーザは遅くて危険な古いPHPバージョンを使い続けなくてはいけなくなることに起因します。

こういった場合、多くの制作者はPHPのバージョンを上げないという選択肢を取りますがこれは第4回でも述べている通り非常に危険な行為です。メンテナンスされていないプラグインは利用せず、代替プラグインを見つけてPHPのバージョンアップを行う必要があります。

もちろん、古いテーマにおいても同様のことが言えます。もしテーマが原因でPHPのバージョンアップが行えない場合はテーマを変更する(もしくは自力でPHP7系に対応する)必要があります。

モジュール版PHPとは

さくらのレンタルサーバでは、2018年4月18日以降、モジュール版のPHPがスタンダードプラン以上のプランで利用できるようになっています。このモジュール版PHP、簡単に言うとPHPの処理速度がCGI版と比較すると高速で、高負荷時でも処理を落とさずに実行できる動作モードです。余談になりますが、モジュール版PHPの実行にはより多くのメモリが必要とされるため、低価格のプランでは実現しにくい機能です。

さくらのレンタルサーバでは、スタンダードプラン以上のプランで2018年4月18日以降に申し込んでいれば、PHP7.2か7.1のモジュール版が初期設定されていますので特に意識せずにモジュール版PHPを利用することができます。それより前に申し込んだ方でも、プレミアムプラン以上のプランならコントロールパネルのPHPバージョン選択画面でモジュール版のチェックを入れることで設定できますので是非実施してみましょう。

2018年4月17日以前に申し込まれた方でスタンダード、ライトプランのお客様は今の所モジュール版PHPが利用できません。現在提供に向けて検討を行っておりますが、お急ぎの場合は新たにスタンダードプランを契約してサーバデータをお引っ越しいただくことでモジュール版PHPが利用可能です。

PHPはバージョン間の動作仕様が異なる場合はありますが、CGI版とモジュール版での違いはありませんので、現在CGI版で動作している場合は是非モジュール版への変更を検討していただきたいです。上の方にも書いておりますが、PHP5.6を起点として、PHP7.2へ変更することで2〜3倍、さらにモジュール版を利用することで最大16倍程度のパフォーマンス向上が見込めます。高負荷状態での数字になりますが、実際にWordPressのダッシュボードを開いたり、投稿一覧、プラグイン一覧を開いたりするだけでも効果を実感できます。もちろん、普通の投稿ページなどの表示速度も向上します。

ステージング機能を併用してみよう

PHPのバージョン変更は危険な行為と考えられがちですが、実はコントロールパネルからバージョンを上げたり下げたりが簡単にできるので、実際にやってみて問題がありそうならもとに戻せるリスクの少ない設定変更になります。さらにバックアップ&ステージング機能を利用することで事前確認ができ、リスクをゼロにできます。

PHPのキャッシュ機能APCuについて

さくらのレンタルサーバでは、PHP7.2の導入とともにPHPのキャッシュ機能であるAPCuも利用できるようになっています。この機能の利用はサポート外となりますが、WordPressなどでプラグイン、WP-FFPCなどを利用することでPHPのページキャッシュを行うことができ、ページ表示をさらに高速化することができます。

APCuのキャッシュ状況を表示する画面

APCuはプラグインでキャッシュ時間を設定し、その時間だけPHPページのキャッシュを返答するキャッシュプログラムです。一度キャッシュされるとキャッシュクリアしない限り設定秒数はページが更新されないので利用には注意が必要ですが、ページの応答速度を数十倍にも高速化することが出来るのでページ応答速度を極限まで追求したい方や、アクセスが多くて応答速度に不満がある方におすすめです。WP SUPER CACHEなどのいわゆるWordPress専用キャッシュプラグインよりも設定がちょっと難しい分パフォーマンスは高くなります。

まとめ

今回はPHPのバージョン選択機能やキャッシュ機能についてご紹介しました。何も知らないで使っていると、何か遅いな?何か重いな?と感じつつレンタルサーバに不満がつのっていくだけになります。こうしたことをちょっと気にしてみると、ウェブサイトの運営の別の側面が見えてまた面白くなるかもしれません。とにかくこの記事を読んだ方は、まずPHPのバージョンを確認し、7系じゃない場合はアップデートを検討してみましょう。

さて今回まで、WordPressをレンタルサーバで運用する際のコツといったテーマでいくつかのテクニック、気をつけたいことなどをご紹介してきました。WordPressは使いやすく、非常に強力で魅力的なツールです。手軽に借りられるレンタルサーバと組み合わせることで、とても簡単に自分だけのウェブサイトを開設することができますが、深い使い方を知るとより便利に、快適に、安全にサイトを運用することが出来るようになります。今回の連載ではそれらのエッセンスのほんの一部をご紹介しましたが、興味のある項目は是非とも深掘りしていただくことをおすすめします。