あの「さくらクラブ」が北海道にやってきた! プロコン×石狩iDC×漢方!? 濃すぎるイベント内容を徹底レポート

去る2018年7月5日(木)、さくらインターネットのグループ会社であるビットスター株式会社札幌オフィスにて「[さくらクラブ 北海道] 法林浩之ショー@BitStar★」が開催されました。「さくらクラブ」とは、さくらインターネットとユーザーが一緒に作っていくコミュニティの名称です。不定期に開催される同イベントでは、お酒や軽食を片手にLTを聞いたり、業界の情報を交換したりと様々なコンテンツが企画されます。

今回は、さくらインターネットのエバンジェリストチームに所属し、さくらのナレッジで編集長も務める法林浩之さんが札幌に赴き、今札幌で気になる話題をITと絡めた(絡めない場合もあり)トークショーを開催しました! 本記事では、そんなイベント当日の様子を簡単にご紹介します。

法林 浩之

1966年7月5日生まれ。神戸市出身。日本UNIXユーザー会(jus)元会長。2003年からの2年間はjusの会長も務め、現在もjusの看板的な存在である。さくらインターネットのエバンジェリストチームにも所属している。多彩なITイベントの企画・運営で知られており、特にイベントの司会者としてはこれまでに1000人以上の講演者と関わってきたこともあり司会進行役としての評価が高い。また、自らもその経験を活かすべく2011年よりトークライブ 「TechLION」を立ち上げ、 一流エンジニアの本音トークが聴ける場として注目を集めている。好きなものはプロレス。

はじめに、司会進行役の法林さんより今回のイベントの概要と趣旨の説明がありました。そのあとすぐに、ドリンクを持ってみんなで『カンパーイ!!』。リラックスした雰囲気でワイワイゆるくイベントが始まります。簡単な歓談を挟んだ後、札幌で活躍する2名のゲストとさくらインターネット石狩iDCで働くスタッフによるトークショーがさっそく行われました。

ものづくりが好きな子どもたちに光をあてる ~U-16プログラミングコンテスト~

トップバッターは北海道情報セキュリティ勉強会の代表を務める八巻正行さんのトークショーです。本業はシステムエンジニアで、その他PMやプログラマーなど幅広い業務を普段はされている八巻さん。

北海道情報セキュリティ勉強会代表 / 八巻正行さん

今回は「U-16プロコン札幌大会 実行委員長」として、2018年10月28日に札幌コンベンションセンターで開催される「U-16プログラミングコンテスト」について、U-16プロコンとは何か? 運営するにあたって感じるイベントの魅力や想いなどについてお話くださいました。

八巻 正行

昭和50年生まれ、福島県川俣町出身。サイバー大学IT総合学部卒業、システムエンジニア。
29歳で札幌市へ移住し、IT企業で働く傍ら「北海道情報セキュリティ勉強会」代表、「一般社団法人LOCAL」理事として、道内の技術系ITコミュニティを盛り上げるべく、大小多数のIT勉強会イベントの企画、運営、支援を行っている。
2018年、札幌市で初開催となる「U-16プログラミングコンテスト札幌大会」実行委員会を立ち上げ、開催に向けて奔走中。

U-16プログラミングコンテストって?

U-16プログラミングコンテストは、旭川発の16歳以下を対象としたプログラミングコンテストです。旭川、釧路、帯広でこれまでに開催されており、今年ははじめて札幌での開催になったそうです。

プログラミングコンテストの内容は競技部門と作品部門に分かれています。競技部門は対戦型プラットフォームである「CHaser」で1対1のプログラム対決を行う競技です。作成したプログラム同士の戦いとなるので、あらかじめ作りこんできたプログラムで競技者は戦うことになります。一方作品部門では、コンピューターグラフィックやWebサイト、自作プログラムなど「とにかくPCで作ったものならなんでもOK」の部門となっており、競技者が作成してきたものに対する純粋な評価で競い合います。

競技部門「CHaser」のルールとは?

CHaserは、競技者であるプレイヤーがCool(先行)とHot(後攻)に分かれて1対1で対戦するターン性のゲームです。指定のメソッドを駆使してアイテムを集めながら敵を倒すことが目的となります。勝利条件は以下の5つ。詳しい対戦ルールなどについては、下記の全国情報技術教育研究会-プログラミングコンテスト実行委員会より発行されている資料を合わせてご参照ください。

◆勝利条件

  • アイテムを対戦相手より多く集める
  • ブロックを対戦相手の上にのせる
  • 対戦相手をブロックで囲む
  • 対戦相手がブロックの上に移動(自爆)
  • 対戦相手が試合続行不可能(異常終了など)

◆詳細参考サイト

・U-16プログラミングコンテスト
コンテスト内容ページ

・全国情報技術教育研究会
CHaserルールブック

コンテストの特徴と魅力

八巻さんは最後に「参加した子どもたちが実際にエンジニアを目指してくれることが今から楽しみ」とお話をされ、このコンテストを開催している目的と概要、イベントの特徴についてアツい想いを持って語りトークショーを締めました。

【プロコンの目的と開催意義とは?】

◆目的1:PCが好きな子どもたちに、夢や目標となる場所を提供する
・好きだけど、何をやればいいかわからない子への目標として
・PCが好きな“消費者”で終わらせない

◆目的2:子どもたちの作品を「情報技術のプロ」が評価し、褒め称える
・プログラミングが得意でも学校では褒めてもらえない
・一人のプログラマー、製作者として向き合い、さらなる自信と向上心を

◆目的3:ものづくりの好きな子どもたちに光をあてる
その結果として
・情報技術を通じた子どもたちの健全育成
・将来のITエンジニアの育成

【このU−16プロコンの特徴とは?】

◆特徴1:プロと同じ手法で実践、体験
・ガチでプログラミング
・終わりがない奥深さ
大人プロコンでは1回の行動で100パターン分岐することも。

◆特徴2:同じプラットフォームで戦う面白さ
・実力と運
・スポーツ的要素
会場でマップを見てから自身のプログラムのチューニングをする子も

◆特徴3:PCが好きな子が集まり、切磋琢磨
・横のつながり(友達・ライバル)
・学校の垣根を超えた交流

◆特徴4:17歳以上の先輩はメンターへ
・縦のつながり(先輩・後輩)
・小→中→高。世代を超えた循環

石狩iDCの設備と働き方~今の石狩はこんなです~

さくらインターネット株式会社 玉城智樹さん

トークショーの2人目はさくらインターネットの玉城智樹さんです。玉城さんは自身がセンター長を務める「さくらインターネット石狩データセンター」でのスタッフの働き方と、データセンターの設備についてお話くださいました。

玉城 智樹

さくらインターネット株式会社 2011年入社。DCOP石狩チーム。センター長
普段はドキュメントを書きつつ、ちょこちょこ物理的な作業をしている。

石狩iDCではたらく人の普段の過ごし方

石狩データセンターでは、フリーアドレス制を導入しているためスタッフは好きなところで日々の業務を行うことができます。以前にさくらのナレッジでも紹介しましたが、新設された3号棟は誰もがデータセンターに対して持っている「無機質なイメージ」からかけ離れたキャンプ場のような内装となっており、スタッフたちも息抜きや作業スペースとして普段から利用しているそうです。

多目的室には、筋トレ部が部費で購入した筋トレグッズが置かれており、スタッフは休憩時間中や勤務時間後などに利用するそうです。筋トレグッズは日々増えており、下手にジムに行くよりも石狩データセンターに来たほうが良い運動ができそうです。

また、調理が可能なスペースもあるため、上記の筋トレ後にお肉を焼いたり、たこ焼きパーティーが行われることもあるそうです。たこ焼きパーティーでは、関西出身の田中社長による「オリジナルレシピのたこ焼き」が振舞われることもあります。田中社長オリジナルのたこ焼きのレシピは、誰でも作ることができるように、GitHubにて情報が公開されていますので、気になった方はぜひこの機会に試してみてはいかがでしょうか。

田中社長オリジナルたこ焼きレシピはこちら
石狩3号棟の様子を掲載した記事はこちら

設備と物理的な運用の話


続いて、石狩データセンターの設備についての話です。

さくらインターネットが運用する北海道のデータセンターは石狩という地域にあります。石狩は年間の平均気温が7.8度と日本の中ではかなり低く、さらには今後30年の間に震度6以上の地震が起きる確率は0.2%と言われている土地です。北海道の冷涼な気候を利用した直接外気冷房によってデータセンターの空調にかかる費用の大幅なコストダウンもできることから、データセンターを運用する土地として最適として2011年の11月に建設されました。

2017年11月に新たに建設された3号棟では、湿度管理のコスト削減のため、直接外気冷房ではなく新たに間接外気冷房を採用するなど、時代と技術に合わせて進化をし続けるデータセンターとなっています。

最後に運用の話として、昼と夜のシフト間の引継ぎ作業の難しさのお話や、石狩データセンターでは配線に特に神経を使っているというお話、保守はサービスによって方法が異なるなどのお話がありました。データセンターではハードディスクが日常的に壊れます。5年に1回壊れるハードディスクがあったとして(5年=約2000日)それが2000台あったとしたらハードディスクが毎日壊れるということなので、みなさんバックアップは取りましょうね。というお話で締められました。

医療の片隅で漢方を叫ぶ

IT系のイベントではとても珍しいかと思いますが、最後のトークショーはIT企業とは全く関係のない「伝統漢方からさわ薬局」の唐沢豪貴さんです。通称「かんぽーさん」と呼ばれる唐沢さんは、「北海道の楽しい100人」に選ばれたことから一般の方(医療関係者ではない方)への講演も多くなったんだとか。今回は、漢方について意外と知られてないあれこれを面白おかしく紹介してくださいました。

伝統漢方からさわ薬局 唐沢豪貴さん

唐沢 豪貴

昭和47年生まれ、札幌出身。北海道薬科大学薬学部卒業、薬剤師。
27歳で昭和30年創業の「からさわ薬局」を継ぐ。先代の意思を受け継いで漢方を志し、師匠を求めて遠くは九州まで勉強に。 基本は日本の伝統漢方を貫きつつ、各地の伝統薬から医療気功まで幅広く研究中。現在、漢方の相談は完全予約制で行っている。
平成21年より北海道大学薬学部非常勤講師として薬学生に薬剤師と漢方の関わりについての講義も持つ。

からさわ薬局は昭和30年仙台の唐沢敏郎さんが北海道庁前の自宅を改装して開業されました。現在も北4条西6丁目の創業と同じ場所にあります。もともとは普通の薬などを売る薬局だったそうですが、先代から引き継いだ唐沢さんが漢方を好きだったこともあり、現在はすべての疾患を「漢方だけ」で対応している、漢方専門薬局です。

相談は完全予約制となっており、最近は2週間から3週間くらい先の予約まで埋まっていることがほとんどとのこと。また、札幌圏だけでなく道内各地や、道外からも唐沢さんを頼って来局される方が増えており、漢方薬剤師として絶大な人気を誇っています。

来局される患者さんは、病院で西洋医学的な治療を受けたけれど改善しなかった人、または漢方専門のクリニックなどで治療を受けたけれど改善しなかった人たちが大多数で、簡単な病気の相談はほとんどきません。「なので、私にとっては毎日が地獄で、毎日やめたくなります(笑)」と言う唐沢さんに会場は大いに沸きました。

唐沢さんのところに訪れる患者さんの具体的な疾患の例は以下で、意外なことに最も相談が多いのは「精神疾患」なのだそうです。

・体の痛み・骨格の病気
腰痛・坐骨神経痛・膝関節症・四十肩・五十肩…

・心の病気・精神疾患
うつ病、自律神経失調症・不安神経症、不眠、動悸、のどの詰まり…ストレスで悪化する症状全般

・皮膚のトラブル・難治性皮膚疾患
異汗性湿疹、手荒れ、アトピー性皮膚炎

・女性の病気・不妊症
不妊症、不育症(習慣性流産)、更年期障害

・その他
甲状腺疾患、偏頭痛、慢性肺炎などなど

「病院の漢方」との違い

病院で保険が適用される医療用漢方製剤は約148処方ですが、薬局が販売できる漢方処方は医療用に比べてはるかに種類が多く、基本の約210処方と伝統薬などもあわせると数えきれないほどの種類があるとのこと。

唐沢さんは病院で扱う漢方と、薬局でお渡しする漢方の違いとして、漢方に関する専門的な知識がお医者さんとは異なるということを指摘しました。もちろんお医者さんも漢方に関して勉強をしていますが、唐沢さん曰く「味、香り、形態、良否鑑別、作用(薬能)」を知らない方が多いので、毎日現物の生薬にふれてきた人と、出来上がったエキス剤のパッケージしか見たことがない人とはやはり経験に差があるとお話されました。

しかし、唐沢さんでも適方と判断した漢方を投与しても、まったく症状が改善しない場合もあるそうです。特殊な手法で症状を判断することができるそうですが、そこでわかるのは「More Betterな方法かどうか」であり、「正解」を判断しているわけではないのだとか。一流の漢方薬剤師はたくさんの失敗経験があって初めて治療ができるようになるといいます。

最後に唐沢さんは、「一般的に『漢方が効かない』と思われてしまう一番の理由は、疾患に合わせた適切な漢方が処方されていないためです。漢方が万能ではないことも事実ですが、すべてが漢方のせいではありません。現代に生きる私たちが漢方を理解し、再現する能力が欠けているだけなのです」と漢方の可能性をアツく語りお話を締められました。

イベントの最後にはちょっとしたサプライズが!

3名のトークセッションが終わり、イベントが懇親会で盛り上がる中。突如会場のライトが消えて暗くなったかと思うと、ロウソクが灯されたケーキが運ばれてきました! そう、偶然にもイベント当日は法林さんの52歳のお誕生日! それを知っていたスタッフによるサプライズ似顔絵ケーキの登場です。

会場からは「スゴイ! 似てる~!」という声とともに記念撮影と『ハッピー・バースデー・トゥユー』の合唱が。勢いよくロウソクの火を吹き消して思わず法林さんもニッコリです。

法林さん自らケーキを切り分け(自分の顔がイラストされたケーキに包丁入れるのは複雑な気持ちとのこと)、来場者に配られました。ちょっとしたサプライズに懇親する会場はさらに盛り上がりを見せました!

~イベントを終えて~ 法林さんよりスペシャルコメント!

大盛況で幕を閉じたさくらクラブ。後日、法林さんより今回のイベントを終えてのコメントをいただきましたのでスペシャルコメントとしてご紹介いたします!

U-16プロコンの話

プログラミングって本来、「唯一の正解」があるわけではなく、課題を解決するプログラムは何通りもあり、さらにそれを改善していく取り組みは終わりのないものです。U-16プロコンを見ていていいなと思うのは、その「終わりのない改善」を体験できることですね。こういうところでプログラミングのおもしろさを知り、これがきっかけでITエンジニアを目指しましたという人が出てきてくれたら、本当にうれしいですよね。

石狩データセンターの話

私もかつて他社のデータセンターで仕事をした経験がありますが、データセンターのイメージって「都会の片隅にある無機質な建物、通路も一色塗りの壁とドアしかない単調な風景、マシンルームは空調をガンガン入れてて異様に寒く、エアコンの轟音が響いてる」ってところですよね。石狩データセンターを見ていると、それらのイメージをことごとく覆していて(マシンルームはさすがにそうもいかないかもしれませんが)、従来のイメージ的にはあまり楽しそうに見えないデータセンターという職場がとても楽しそうなのがいいですね。私も3号棟はまだ行ったことがないのですが、訪問が実現した暁には筋トレも実施したいと思います(笑)。

漢方の話

唐沢さんのトークを聴きながら思ったのは、漢方の処方というのは、ITの世界だと「原因がよくわからない障害のトラブルシューティング」に相当することをやってるのかなと。「ハードディスクが壊れた」とかだとマニュアルに沿って対応すればいいですが、「なんかよくわからんけどサービスのレスポンスが妙に遅い」みたいなこともあって、そういうトラブルに対応するときは、過去の経験に基づく予想みたいなのが役立つというか、そういうのがある方が早く的確に対応できることが多いと思います。まして、ITシステムに比べて人体はもっと複雑だしログや監視データも少ないので、なおさら経験に依存する部分が大きいでしょうね。

レポートの最後に「現代に生きる私たちが漢方を理解し、再現する能力が欠けているだけなのです」という言葉がありますが、こういう経験則に基づく対応って、そのうちAIが進歩したら正確に再現できるようになったりするのかなとか、妄想レベルですがそんなことを思ったりしました。

さくらクラブではコミュニティを広げたい人を大募集!

いかがでしたでしょうか。さくらインターネットのユーザー会ではありますが、ITに関係ない漢方のお話など、普段とは違った業界の話やイベントの話で盛り上がった今回。来場されたゲストも様々な職種の方が集まり、とても楽しい時間となりました。

さくらクラブでは、いつでも参加者を募集しております。参加条件などは特になく「俺はさくらクラブ部員だ!」と言い張ればどなたでもさくらクラブのメンバーです。詳細は下記のスライドにて紹介しておりますので、お気軽にお問い合わせください。みなさまとお話できる機会を楽しみにしております!

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・お問い合わせは(sakura-club@sakura.ad.jp)まで!

みなさまからのご連絡を心よりお待ちしております!