Drupal(ドゥルーパル)というCMSを知っていますか?
Drupal(ドゥルーパル)は、フリーソフトウェアのコンテンツ・マネジメント・システム(CMS)のことです。
残念ながら、日本ではDrupalをご存じではない人が多いと思います。Drupalのことを日本でも知ってもらい、コミュニティが盛り上がっていければと思っています。
これからのDrupalの連載をよろしくお願いします。
Drupalとの出会い
私は大学図書館システム関係の仕事をして、初めてDrupalに出会ったのが2年前となります。
2年前に大学図書館のホームページにDrupalを採用することになり、いろいろと勉強しながら導入しました。その機会が縁で、現在に至っています。
その時に構築したサイトが九州大学附属図書館様のページです。
Drupal自体は、高機能で沢山のモジュール(プログラム)があります。また、これまでWebシステムを開発していた経験から比較して、Drupal上で独自にモジュールを開発することの容易さにも驚きました。特に苦手だったデザイン部分についてはDrupalに任せられるという点がよかったです。
Drupalは使われているのでしょうか?
Drupalは、フリーソフトウェアで10年以上前から活動されています。現在、ソフトウェアのバージョンは7となり、バージョンアップされる毎にWeb標準や機能が強化されています。早ければ、今年中にはバージョン8がリリースされるかもしれません。
また、DrupalはホワイトハウスやNASAのサイトでも利用されており大規模サイトやセキュリティにも強い製品と言えます。
日本では、まだ普及しているとは言えず、どちらかというとWordPressの方をご存じの方が多いと思います。
ただ、日本でもDrupalが使われているサイトがあります。仕事関係で図書館関係のサイトが多いですが、日本でのDrupalサイトは以下があります。
国内のサイト (*レスポンシブ対応)
公式サイトdrupal.orgがあり、こちらで世界中の開発者が日々コミュニケーションを取りながらモジュール開発、障害対応などが行われています。アメリカでは、Drupalを専門に扱う会社や技術者が多くあり、普及していると言えます。
また、コンテンツ・マネジメント・システム(CMS)というとホームページ作成ツールという認識の人が多いかもしれませんが、ホームページ作成はもちろんのこと、プログラムを実行するアプリケーションのプラットフォームという位置づけもあります。
ホームページだけ手がけるわけではなく、Drupal上で業務システムを開発して利用するケースもあります。一から開発するよりもより速く・安全に、そしてデザイン性もよく開発できると思います。
例えば、私が関わった九州大学附属図書館様の蔵書検索(大学図書館ではディスカバリーツールと呼びます)のシステムは、Drupalで動いています。200万冊以上の蔵書を検索して表示する検索システムとしてDrupalが利用されています。
なお、Drupalのみのシステムではなく、大量データの検索のためSolrという検索エンジンと組み合わせています。
ここで、Drupal上で開発する場合の名言を一つ紹介します。それは、「Coreをハックするな!」ということです。
Drupalシステムの本体部分をCoreと言います。Drupalのインストール時にダウンロードした全体のファイルと理解してもらってもよいと思います。Drupalは、このCoreな部分とモジュール、テーマが完全に分離されたシステムです。
そのCoreの部分をカスタマイズや改変しないようにという意味です。
例えば、セキュリティ対策はCoreな部分で面倒を見ていますので、開発するプログラムでは基本考慮が不要です。Drupalの障害や脆弱性の問題があった場合Coreのファイルを上書きするだけで環境が安全に保たれます。
Drupalコミュニティの活動
Drupal Associationという団体が、Drupalの普及に貢献しています。
公式的にフリーウェアのDrupalをサポートする団体です。今年は140万ドルの資金集まりDrupal新バージョンの8では、世界的にバージョン8のキャンペーンを実施して、より普及に力を入れるようです。
もう一つの主な活動としては、Drupalcon(ドゥルーパルコン)というDrupalを扱う人達が集まってのイベントがあります。年2回、アメリカとヨーロッパで開催されています。
どうして日本でDrupalは聞かれないのでしょうか?
日本のAmazonで「Drupal」という単語で書籍を検索してみてください。日本語文献では、純粋にDrupalについて書かれている本は2件だと思います。しかも古い書籍となります。
(※参考:WordPressで検索すると200件以上ヒットします)
つまり日本語の資料が少なすぎるということです。
文献が先なのか、流行るのが先なのか難しいところですね。初心者向けのDrupal本が出れば、日本でももっと広がると思っています。
次にDrupal自体は高機能で汎用性がある反面、使い方が難しいと思います。
私も初めてDrupalをインストールした直後は、これからどうしようと困惑していました。例えばバナーを表示するのに幾通りの方法があるため、何からどうしよう…という状態でした。あるいは、これで良いのか、もっと良いやり方があるのでは?という疑問ばかりで、日本語の情報が少ないことで孤立している状態でした。
最後にDrupal自体のPRが少ないように思います。雑誌やwebサイト、勉強会などがあまり聞かれません。みなさんの身近ではどうでしょうか?
日本では、Drupalはごく一部の個人ベースで利用されているかと思っていたのですが、今年の4月12日には、日本で初めてDrupal Camp Japanが京都で開催されました。
参加見込み数は40名ぐらいかなと思っていたのですが、実際には100名を超す人達が集まりました。とてもビックリしました。海外からも参加いただき、とても盛大に行われました。こちらのThinkIT様の記事が参考になると思います。
私も出席して出席者の人達と話したのですが、Drupalを扱う会社さんが複数あり、個人ベースではなく会社で対応されているということがわかりました。
最後にDrupalのバージョン 8について
バージョン8はDrupal Camp Japanでの発表もありましたが、まだリリースされていません。クリティカルな障害がまだ収束しておらず、リリースには数ヶ月以上かかるようです。
Drupal 8の目玉機能を少し紹介します。Drupalを利用される上で、将来の機能強化がわかると思います。
- 管理画面によるレイアウト変更対応。管理画面自体もレスポンシブデザインになります。ちょっとした変更をスマートフォンでも編集できますね。
- 各種設定内容がこれまでデータベースに登録されていましたが、ymlのファイルで管理されます。これにより、データベース負荷やメモリ使用量が減りパフォーマンスがより上がります。
- ページの完全な多言語対応。これはDrupal 7 でも各種モジュールをインストールすることで対応可能ですが、Coreに組み込まれました。
- Drupal 7で開発したモジュールは、8では変更が必要とのことです。
以上、Drupalの紹介をさせていただきました。次回は、実際にDrupalのインストールについて説明します。