”今年もやろうか!” ~RSR会場ドタバタWi-Fiサービス構築記~
2015年8月14日~15日の2日間、石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ(北海道小樽市)において「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015 in EZO(RSR)」が開催されました。RSRは、1999年にスタートした日本初の本格的オールナイト野外ロックフェスティバルです。17回目となる今回は、昨年を上回る6万5000人が来場し、思う存分に音楽を体感しました。
RSRの最大の特徴は、石狩の広大な土地の草刈りからスタートし、電気を通し、水道を引き、資材を組んでステージを設営して会場を作り上げていくことです。北海道ならではの飲食店や自然を満喫できるアトラクションなど、ライブ以外のブースも充実。会場でキャンプができるのも特徴の1つとなっています。
さくらインターネットでは昨年に引き続き、今年もRSR会場のブースを借りて、無料のWi-Fiアクセス&バッテリー充電サービスを提供しました。昨年はブース1箇所でのサービス提供でしたが、今回は規模を7倍に拡大! 会場内の7箇所のブースにアクセスポイントを設置してWi-Fiサービスを提供しました。
認証ポータルで昨年よりサービスらしく
今年のRSR会場でのWi-Fiサービスについて、運用部の東常行は次のように語ります。「昨年はあまり宣伝もせず、利用者が勝手にWi-Fにつなぐサービスでした。ネットワークサービス会社としては、みっともないと思ったので、今年は認証ポータルで同意すると使える仕組みにしました。ちゃんとサービスとして提供するのが今年のテーマでした」
認証ポータルについて運用部の鈴木一哉は、「当初、認証ポータルを作るという話を聞いたときには、1から開発しようと思いました。ただ時間的な余裕もなかったので、オープンソースのpfSenseをベースに開発することにしました。pfSenseは、学生のときに使ったことがあったので、今回も使えるのではないかと考えました」と語ります。
今回のWi-Fiサービスでは、縦2キロ、横1キロの広大なエリアに7箇所のブースを設置しています。運用部の久住修は、「アクセスポイントが7箇所になったことで苦労もありました。ブース間の距離があるので、1番近いところで歩いて4~5分、1周すると1時間20分ぐらいかかります。炎天下の作業だったので、1日で真っ黒に日焼けしました」と笑います。
RSR開催中の同時接続数は、最大で140ユーザー程度。東は、「RSRの紹介記事やプレスリリース、オフィシャルサイトなどでWi-Fiサービスの告知をしてもらいましたが、どれだけ使われるかは想像できませんでした。まだログの集計中なので、端末ごとの集計、アクセスポイントごとの集計などはもう少し時間がかかります」と話しています。
2015年2月に“今年もやろうか!”
「今年も(RSR)やろうか!」という話が出たのは2015年2月ごろ。具体化したのは7月初旬で、それからネットワークを設計し、構成が決まったのは7月末ごろです。基本的には、石狩データセンターとRSR会場を無線ネットワーク、またはNTTのフレッツ光回線でつなぎ、石狩データセンターとRSR会場間の無線が5GHzの固定無線アクセス(FWA)、会場に設置したWi-Fi APは2.4GHzで提供する構成になっています。
「石狩データセンターから会場までを無線ネットワークでつなぎ、Wi-Fiブリッジでサービスを提供しました。無線が届かない場所には、NTTのフレッツ光回線を借りてサービスを提供しています。今年ネットワーク関連の部署に異動して、初めてのRSR参加だったので、当初は分からないことだらけでした」(鈴木)
石狩データセンターと会場を無線だけでつなぐことができないのが分かったのが1カ月前。東は、「フレッツ光回線をどのように構成するかに悩みました」と当時を振り返ります。また東は、「構築期間が短かったので、機材の確保にも苦労しました。しかし東京にある機材の取り寄せも含めて、必要な機材をすべて石狩データセンターでそろえてもらえたので助かりました」と話します。
機材の調達について久住は、「今回も社内のサービスで使っているネットワーク機器およびサーバを使っています。基本的に機材は東京にあるので、石狩データセンターまで届くのに時間がかかります。機材が足りなくてネットワークが構築できないということのないように気をつけました」と話しています。
Wi-Fiサービス構築はドタバタ続き
石狩データセンターからRSRの会場まで、ネットワークをつなぐのはドタバタの連続でした。鈴木は、「石狩データセンターが広すぎて、初日から迷子になり、出口が分からなくなって、久住さんに救出されました(笑い)。次にフレッツ光回線の施設状況を確認して先端をつなぎに行ったが、フレッツ光回線がつながりませんでした」と話します。
NTTに確認すると開通作業は終わっているが、完了確認が終わっていないので使えないとのこと。フレッツ光回線がつながっても、今度は思うように速度が出ないなど、さまざまな壁にぶち当たりました。さらにFWAも、つながったものの思うように速度が出ず試行錯誤の繰り返しでした。
「定期的にアラートが発生するポイントがあり、その原因究明に苦労しました。ログ収集でワークアラウンドができるのではということで確認したところ、ワイヤレス機器と無線アクセスポイントを直結していたが、そこでアラートが発生していた。そこで、間にルータを設置してログを収集。問題を発見し、対処することができました」(東)
FWAに関しては、昨年も使用していますが、6メートル程度の高さにアンテナを設置しなければならないため、昨年は業者にお願いして立ててもらいました。東は、「今年はなるべく自前で作業したいと思い、高所作業車の作業資格を取得して自分で作業をしました」と話しています。
資格の取得では、今回使った無線を国内で利用するには総務省から免許を取得する必要がありました。鈴木は、「陸上特殊無線2級の資格が必要なので、これを取得しました。しかし機材を手配した業者が持っていたので結局は不要でした。ただこの仕事をしていれば、いつか役に立つと思います(笑い)」と話しています。
来年は全域にWi-Fiサービスを提供?!
RSR会場でWi-Fiサービスを提供するプロジェクトは、さくらインターネットの通常業務とは違い、2日間限定のサービス構築です。RSRの開催までに構築して、終了後は撤収しなければなりません。こうした作業では、きっちりと書いておいた設計の図面や設定などのドキュメントが重要になります。
鈴木は、「図面やドキュメントがあったから、担当者への説明もスムーズに行えました。目に見える形でものを残しておくことの大切さを痛感しました。今回は異常検知ベースの監視でしたが、来年はログなどの可視化に注力して事前に問題を検知できるようになればいいなと思っています」と話します。
また久住は、「日々の業務では、決められた手順どおりに仕事をすればいいのですが、今回のように何もない状況からネットワークを構築するのは初めての経験でした。今回、いろいろな人の協力で実現できましたが、情報共有をきちんとしていかなければ成功できなかったと思います。こうした経験は、今後の業務にも生かせると思います」と語ります。
最後に来年への意気込みを東は、「友人にRSRのオフィシャルサイトを運営している会社の人がいて、“会場全域でネットワークが使えるとおもしろいアプリを作れるんだけど……”と言われたのですが、ちょっと勘弁してくださいという感じです(笑い)。確かにできたらおもしろいと思いますが、どうすれば安定的かつ十分な速度で全域をカバーできるのか……。そうなると全社を挙げてのプロジェクトでないと難しいでしょう。本当は今年のRSRを最後にして、来年は次の世代に任せようと思ったのですが、今年少し悔しい思いをしたので、できれば来年リベンジしたいと思っています」と話しています。
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