インターネットの全体動向がわかるIP Meeting ~Internet Week 2015レポート (その3)
11月17日(火)-20日(金)の4日間にわたって行われたInternet Week(IW)のレポートも、これが最終回となります。(過去のレポートは、その1、その2をご覧ください)
今回ご紹介するプログラムは、11月20日(金)に行われた「IP Meeting 2015」です。IP Meetingは1990年から毎年行われている歴史あるイベントで、インターネットの管理運用分野の動向を紹介するプログラムとして親しまれています。さっそくイベントの様子を見てみましょう。
IP Meetingの会場。朝から超満員です。
今年のホットトピックがわかるInternet Today!
午前の部は「Internet Today!」と題して、インターネットに関する各種動向が紹介されました。このセッションは毎年恒例になっていて、これを聞けば今年の主な話題がわかるということで、定点観測のような意味合いで毎年参加される方もいると聞きます。講演の中からいくつかの話題をご紹介しましょう。
世間の出来事はトラフィックに反映される
吉田友哉さん(インターネットマルチフィード株式会社)からは、トラフィック、ルーティング、DNSなどの運用動向が紹介されました。特にトラフィック動向では実際のグラフを見せながら、それが何の影響によるものかを解説されました。例えば、モバイルのトラフィックは月末に向けて減少し(通信量制限に引っかかる人が出るため)、月初になると元に戻るとか、AKB48の総選挙が行われた6月6日の夜はテレビを見ていた人が多かったせいかトラフィックが減少したなどです。
2015年6月6日のトラフィック(吉田さんの講演資料より)
セキュリティ事案多し
相変わらずセキュリティ関連の問題は尽きないようです。吉田さんからは、BINDの脆弱性、DDoS攻撃、経路ハイジャックなどの話がありました。また、セキュリティ動向を紹介された西本逸郎さん(株式会社ラック)は、日本年金機構における個人情報流出事件の解説に多くの時間を割き、この事件から学ぶべきことや、企業が取るべき対策を説明されました。
次世代インターネットを担う人材を育てよう!
午後の部は、まず「次世代インターネットを担う人材を育てよう!」と題するセッションが行われました。これは世代の壁を越えて議論してもらうことを狙ったもので、今後のインターネットを担う学生や新入社員と、彼らを教育する立場の方々が登壇しました。
その中で新入社員という立場で登壇したのが、当社運用部の川畑裕行です。川畑からは、今年4月に入社してから6月末までの3か月間にわたる新人研修の模様を説明いたしました。研修の内容は、データセンター運用やサービス開発の現場を知る技術的なもの、カスタマーサポートや営業など顧客との接点を知るもの、ビジネスマナーなど社会人としての基礎を学ぶものなど多岐にわたります。技術職の新人が3人と少人数だったので密度の濃い研修ができたようです。
当社運用部の川畑
他には、河瀬大伸さん(大阪工業大学)と森優輝さん(電気通信大学)から、学生が企業に求めるのは技術の向上だけではなく、社会人として進むべき方向を示してもらいたいという話があったり、畑田充弘さん(NTTコミュニケーションズ株式会社)からは企業内でのセキュリティ人材育成プログラムの紹介と、それに携わる中で感じている多くの課題が提示されたりと、内容の濃いセッションでした。
インターネットとAIがもたらす未来とは?
IP Meetingの最後のセッションは「インターネットとAI ~その未来~」というタイトルで、これまでのIWでは取り上げる機会がなかったと思われるAIを題材としたセッションが組まれました。このセッションには当社からクラウド開発室の須藤武文が登壇いたしました。
当社クラウド開発室の須藤
はじめに松尾豊さん(東京大学)から、AIの技術動向を解説していただきました。従来のAIはモデル作りを自動化できないのが壁になっていましたが、最近流行のディープラーニングによりそれが実現できたこと、現実世界の事象から特徴を抽出するには非常に多くの計算量を必要としますが、それがコンピュータ性能の大幅な向上により計算可能となったことが、AIの大きな進歩をもたらしました。ディープラーニングを用いた顔の画像認識やブロック崩しの学習などの例も交え、とてもわかりやすい解説でした。
その後は、長谷川順一さん(株式会社Preferred Networks)からディープラーニングを用いた取り組みの数々を紹介していただきつつ、インフラ側からの意見を山下達也さん(NTTコミュニケーションズ株式会社)と須藤が述べるという形で進行しました。須藤からは、実際に機械学習などAI分野で当社のサーバをご利用いただいている事例が増えていることや、その一方でデータセンターを運用する立場としてはAIを活用して運用の自動化や最適化を図っていきたいという意見を申し上げました。
来年につづく
こうして今年のIWも盛況のうちに終了しました。IWでは最終日の夜に懇親会があります。筆者はIWの実行委員を務めていますが、会期中もっとも重要な出番はこの懇親会の司会です。ここで参加者や関係者の皆さんが楽しく歓談する姿を見られることが、日本のインターネットが大きなトラブルなく運用されていることの証であると考えています。インターネットの管理運用に携わる方々の日頃の努力に感謝するとともに、筆者としても、また当社としても、これからのインターネットの発展に貢献できればと考えています。
それでは、またの機会にお会いしましょう!
懇親会の司会を務める筆者