Internet Week 2016 レポート(その2)「それ本当にEVPNでやるの?EVPNの使いドコロがわかる150分」

こんにちは、さくらインターネット クラウドチームの大喜多です。

2016年11月29日~12月2日の間、Internet Week 2016が開催されました。本記事では11月29日に行われたセッション「それ本当にEVPNでやるの?EVPNの使いドコロがわかる150分」をレポート致します。

EVPN 技術紹介

古河ネットワークソリューション株式会社 神谷尚秀氏より、EVPNが各種事業者から注目を集めている背景および技術の解説が行われました。

まず最初に、本プログラムの背景・目的についての説明がありました。

これまでのL2VPNと、今回の主題であるEVPNの違いについて、図解をもとに解説されました。

同氏はEVPNは既存のL2VPNの課題を解決できる技術であることを強調し、まとめとされていました。

EVPNって本当に良いの?ソフトバンクがキャリアEVPNを考えてみた

ソフトバンク株式会社 三宅正浩氏より、法人向けVPNサービスを提供する通信キャリアの観点から、EVPNへの期待と課題についての話がありました。

同社では、EVPNによってL2VPNとL3VPNを同じ仕組みで提供できるとのことで期待を寄せる一方、運用面での課題を指摘。

現状のEVPNでは複数経路で構成した際にどの経路を通るかがアルゴリズムによって決定し、制御ができないことを法人サービスへ導入する上での課題であると指摘。

※Internet Week 2016発表時の状況です
また、1経路の障害によって障害の起きていない他の経路にも再計算などの影響が及ぶことも問題と指摘されていました。

同氏は「現時点では通信キャリアの法人向けサービスへ投入するためには様々な工夫が必要である」との見解を示しつつも、これまでの課題を解決するEVPNに期待を寄せているとのことでした。

マルチベンダ環境におけるEVPN構築のノウハウ~Interop Tokyo 2016 ShowNetでの相互接続検証を元に~

さくらインターネット株式会社/Interop Tokyo ShowNet NOCメンバー 大久保修一より、Interop Tokyo 2016にて実施したEVPN相互接続検証の結果および、マルチベンダ環境でEVPNを構築する際の注意点について報告がありました。

ShowNetにおけるEVPNの相互接続検証のコンセプトは、データセンター間をL2閉域網延伸するといったものだったとのこと。

相互接続検証においては、各メーカーごとに実装の差異があり問題となったケースがあったもののShowNetの期間内に課題をクリアすることができ、またシングルベンダ環境で構築する上ではこれらのことは問題とならず、かなりこなれてきているとの印象を持ったとのことでした。

コンテンツ事業者でのEVPN話

ヤフー株式会社 高澤信宏氏より、複数のデータセンターを持つ日本有数のコンテンツ事業者のL2延伸を行う事情と検証についての説明がありました。

同社では老朽化したデータセンターおよびハードウェアをリプレースするにあたり、データセンター間をL2延伸して接続することを計画しており、そのためには「絶対に切れない拠点間土管」を用意する必要があるとのことで、EVPNの検討を始められたとのことです。

パネルディスカッション

最後にパネルディスカッションが行われました。

3つのテーマのうち、会場の挙手が多かったオペレーション関連がテーマに選ばれました。EVPNの運用においては、ルーティングを中心としたL3の知識・ノウハウと、MACアドレスをもとに制御されるL2の苦しみの両方を知っていないと運用が難しいという意見で一致し、強みを生かしつつ弱みを補っていくことで本番運用のノウハウをチーム内に共有していく必要があるという結論に至りました。

まとめ

ネットワーク機器メーカーの方によるEVPNの技術解説に始まり、通信キャリア・データセンター事業者・コンテンツ事業者という全く異なるバックボーンを持つ登壇者が、それぞれの立場でEVPNをどう見ているかが窺える、未来のネットワークインフラを考えていく上で有益な知見が得られたセッションでした。