Internet Week 2016 レポート(その4)「今知るべきハイパーコンバージドインフラ」

こんにちは、さくらインターネット コミュニティマネージャーの法林です。

2016年11月29日~12月2日の間、Internet Week 2016が開催されました。本記事では11月30日に行われたセッション「今知るべきハイパーコンバージドインフラ」をレポート致します。

ハイパーコンバージドインフラとは

さくらインターネット 大川敦史

このプログラムは、まず当社技術本部の大川敦史によるハイパーコンバージドインフラ(HCI)の概要説明からスタートしました。大川はHCI関係者が集まるコミュニティ「Japan Hyper-Converged Infrastructure Community」の代表を務めています。

従来の仮想化環境は、共有ストレージ・SAN・サーバの3層からなる基盤の上にVMを配置したものですが、HCIはこの3層基盤を単一の機器に統合し、その機器上で動作するソフトウェアにて共有ストレージ(HCS)やサーバ機能を提供するものです。このようにすることで、機器構成の簡略化、設置スペースの縮小、システム構築および運用管理の効率化などの効果が期待できます。HCIの機器は拡張しやすいスケールアウト型になっているので、台数を加減することでシステムの規模に適応させることができます。

従来の仮想化環境とHCIの違い

提供者が語るハイパーコンバージドインフラ

続いて、HCIを提供する事業者として、デルの小野誠さん、ニュータニックスの清水亮夫さん、HPの小川大地さんより、各社の取り組みが紹介されました。デルはハードウェアベンダーならではの幅広い機種ラインナップや24時間365日対応のサポートが特徴です。ニュータニックスの場合は各ノードにコントローラVMが設置される形で実装されているのでハードウェア依存度が少なく、機器のスペックをカスタマイズしやすいとか、ソフトウェアを更新するだけで最新機能や性能向上などの恩恵が受けられるという利点があります。HPはデルと同じくハードウェアベンダーですがアプローチは異なっており、HPのサーバでしか動かない代わりにHPに特化したチューニングがなされ、高性能や高信頼性を実現しています。

提供者側の登壇者の皆さん

ハイパーコンバージドインフラを利用してみて

後半はHCIを実際に利用した方々の声として、ネットワンの川満雄樹さん、NTTスマートコネクトの炭谷真也さんと井上吉隆さん(現NTTセキュアプラットフォーム研究所)、IIJの山本さんから発表がありました。

まず川満さんはSIerの立場から、HCIを選定するときのポイントや注意点を解説しました。HCI導入の最大の動機はリソースの効率化であることや、設計に際しては仮想マシンの負荷だけでなくネットワークIOやストレージIOの負荷も考慮すべきという指摘がありました。次に炭谷さんと井上さんは、自社で展開するIaaSサービスに対するHCIの導入事例を紹介しました。ストレージIO性能やラック収容効率の向上という効果がある一方、導入する前に要件に沿った検証を実施すべきというアドバイスもありました。最後に山本さんから、ハイブリッドクラウドで使うHCIの話がありました。オンプレミスのシステムをクラウドに移行する際に、パブリッククラウドとプライベートクラウドを併用するハイブリッドクラウドがよく採用されますが、このうちプライベートクラウドの基盤にHCIを採用するソリューションを提供しています。従来の仮想化基盤と比較して、見積の取りやすさや価格の低減といった効果があるようです。

利用者側の登壇者の皆さん

おわりに

ハイパーコンバージドインフラという言葉すら初耳の状態で聴講しましたが、概要から始まって提供者・利用者の双方から話を聞くことができ、この分野の状況を知るのにとても良いプログラムでした。そして、小野さんによる「従来の仮想化環境が、材料から買い揃える家庭のすき焼きだとするなら、ハイパーコンバージドインフラは買ってすぐにプロの味が楽しめる今半のすき焼き弁当みたいなもの」という説明が、すき焼きの高級感も相まってとてもしっくりきました。