Magentoの基本機能 ~ プロモーション機能
今回はMagentoに備わっているプロモーション機能を取り上げたいと思います。プロモーション機能をうまく活用することで、販促活動の幅を広げることができ、売上アップにつなげることができます。
Magentoのプロモーション機能
Magentoには標準で2種類のプロモーション機能が備わっています。
- カタログ価格ルール
- クーポン
この2つの機能は、下表のように違いがあります。
カタログ価格ルール | クーポン | |
---|---|---|
ウェブサイト単位の適用 | ○ | ○ |
顧客グループ単位の適用 | ○ | ○ |
開始日と終了日 | ○ | ○ |
優先順位 | ○ | ○ |
適用対象 |
|
|
定額ディスカウント | ○ | ○ |
定率ディスカウント | ○ | ○ |
その他 |
|
|
カタログ価格ルールとは
カタログ価格ルールは、「ある特定の顧客グループ」に対する値引ルールを定義する機能です。商品ページや一覧ページを閲覧している時点で既に適用されるように作られているため、ルールが適用されている商品の場合はログイン時と未ログイン時で価格が変わります。
カタログ価格ルールの作成と適用
カタログ価格ルールを作成するには、管理画面の「マーケティング」から「カタログ価格ルール」を選びます。
作成済みのカタログ価格ルールの一覧が表示されるので、既存データの行もしくは、「新規ルールの追加」を選びます。
カタログ価格ルールの編集・作成画面が表示されるので、項目に値を設定していきます。
※Magento2.1では入力項目のタイトルが日本語ロケールを導入していても翻訳されません。(2.2で直る予定です)
ルールの条件式を設定しよう
ルールの基本情報が入力できたら、いよいよ次はルールの条件式を設定します。
基本的な操作は以下のとおりです。
- ルールの条件を追加:緑色の「+」ボタンをクリック。
- ルールの条件を削除:赤色の「×」ボタンをクリック。
- 条件式の条件を指定:表アイコンやドロップダウンリストから候補を選択。
- 条件式の条件を変更:黒太字になっている文字をクリックして、変更。
条件式は入れ子にすることもできますが、あまり複雑にすると条件式の検証に手間がかかります。程々にしておくのが良いでしょう。
条件式に出てこない商品属性がある場合は
標準状態では商品に関連付けられている属性のなかで、「プロモーションルールで使用する」と設定されているものが利用できます。
もし、ルールで使いたい商品属性で、ルールを定義する際にでてこないものがあったときは、商品属性の設定を確認してみると良いでしょう。
条件式について
ルールの条件に出てくる用語は少しわかりにくいので、表にまとめました。
日本語 | 数式 |
---|---|
と等しい | = |
と等しくない | != |
と等しいかそれより大きい | >= |
と等しいかそれより小さい | <= |
より大きい | > |
より小さい | < |
含む | like |
含まない | not like |
のひとつ | in |
のひとつではない | not in |
数式記号はまあ何となく分かるかな、という方も多いと思いますが、「like」や「not like」は少しわかりにくいと思います。
- like は指定した文字列が値に含まれている
- not like は指定した文字列が値に含まれていない
- in は指定した値が候補リストの中に含まれている
- not in は指定した値が候補リストの中に含まれていない
という違いがあります。
最初はわかりにくいと思いますが、色々試してみるとだんだんコツが掴めてくると思います。
割引率・額を設定しよう
最後に割引率・額の設定と、このルールより優先度の低いルールに対する扱いを決めます。
利用できる値引のパターン
カタログ価格ルールでは、以下の4パターンの値引きができます。
- 商品の価格を指定した割合で値引
- 商品の価格を指定した割合へ値引
- 定額を割引
- 指定額へ値引
よく使うのは「商品の価格を指定した割合で値引」と「定額を割引」です。他のパターンを使うケースは少ないように思います。
優先度の低いルールへの扱い
「Discard subsequent rules」というのは、「このルールより優先度の低いルールは適用しない」ということを意味しています。プロモーションを実施している際に、今一番アピールしたいプロモーションだけを適用し、他のルールはたとえその商品が適用対象であったとしても適用しないという運用をすることがあります。このオプションを有効にすると、各商品に対してルールを適用する際に、今作成中のルールが適用されたあとはそれ以降のルール適用を行わせないようにできます。
カタログ価格ルールの運用時に気をつけること
カタログ価格ルールは事前に定義済みで有効になっているルールすべてを登録済みの商品に対して適用します。この適用処理は、Cronジョブで定義されています。1日1回、午前1時ごろに実行するように設計されているのですが、LinuxのCronジョブにMagentoの定時処理を実行するように設定しておかないと、ルールの自動適用処理が行われなくなります。もし、ルールが適用されないと、商品の価格は割引前の価格に戻ってしまいます。Magentoの設定時にはCronジョブを設定するように公式ガイドにも明記していますので、以下のようなジョブを必ず指定するようにしてください。
* * * * * <path to php binary> <magento install dir>/bin/magento cron:run | grep -v "Ran jobs by schedule" >> <magento install dir>/var/log/magento.cron.log * * * * * <path to php binary> <magento install dir>/update/cron.php >> <magento install dir>/var/log/update.cron.log * * * * * <path to php binary> <magento install dir>/bin/magento setup:cron:run >> <magento install dir>/var/log/setup.cron.log
Cronの実行結果をログに残すかどうかはお好みですが、ログを残す場合は定期的にログファイルをローテーションすることを忘れないでください。
クーポンとは
クーポンは、原文では「Shopping Cart Price Rule」と言います。直訳すると少しわかりにくいので日本語では「クーポン」と翻訳しています。基本的にクーポンは「ショッピングカートに入っている商品」を対象にしたプロモーションです。カタログ価格ルールが定期的にルールを適用し、商品ページなどを閲覧している段階で既に確認できるものであるのに対し、クーポンはショッピングカートに入っている商品の組み合わせなどを対象にしています。
自動適用クーポンと普通のクーポン
標準機能のクーポンには2種類のクーポンが用意されています。1つは自動適用クーポン。もう1つはクーポンコードのある普通のクーポンです。
この2種類のクーポンの違いについては、次の表を見てください。
自動適用クーポン | 普通のクーポン | |
---|---|---|
クーポンコードの設定 | 不要 | 必要 |
クーポンコードの入力 | 不要 | 必要 |
複数のクーポンの同時利用 | 可能 | 不可 |
利用回数の制限 | 可能 | 可能 |
利用者個別コードの発行 | 不可 | 可能 |
クーポンだけにある機能
クーポンにはカタログ価格ルールにはない機能があります。使いこなすのに慣れが必要ですが、うまく使うことで様々なプロモーション企画を実現できると思います。
ルールが発動する条件とルールが適用される条件を別定義できる
クーポンの場合、ショッピングカートの中にある商品が対象となります。ですがカタログ価格ルールと異なるのは「ルールが発動する」条件と「ルールが適用される」条件を分けて定義できるところにあります。
カートの小計や重量などが条件に使える
クーポンはカートの情報を元にルールを定義できます。そのためショッピングカートの中にある情報であればルールの定義に利用できます。
次の図を見てください。
この図はクーポンを作成する際に指定できるルールの条件の一覧です。カタログ価格ルールとは異なる内容が表示されています。クーポンを作る際は、カートの中に入っている商品の情報だけでなく、購入者の情報などの情報を元にルールを組み立てることで、より対象を絞ったプロモーションが展開できます。
送料を無料にできる
クーポンの場合、送料を無料にすることができます。
- 注文全体の送料を無料にする
- クーポンが適用できる商品の送料を無料にする
という2通りの設定ができます。
よく見かける設定としては、前者のほうです。小計金額が一定額を超えた際に送料を無料にするサイトの場合、簡単に設定するのであれば以下のようにすると良いでしょう。
- 新しく自動適用クーポンを作成する
- ルールの条件式で、カートの小計金額を対象にした条件を作る
- アクションで送料無料を選択する
- クーポンを有効にして保存する
後者の場合は対象の商品が送料の計算から除外されるようになります。その分送料は安く計算されるようになりますが、送料一律のサイトではあまり意味がないかもしれません。サイトの特性に合わせて使い分ける必要があります。
まとめ
Magentoには初期の頃からこのプロモーション機能が搭載されてきました。ルールを組み立てるところが最初はわかりにくいので、できればテスト環境を用意して動作を確認すると良いでしょう。
また、サードパーティが開発しているエクステンションの中には、このルール定義機能とよくにた仕組みを用意しているものが多く存在します。プロモーション機能の仕組みとルール定義機能をしっかりと理解しておくことで、エクステンションを導入した際にも戸惑うことなく運用ができるでしょう。