さくらインターネットでは、IT系を中心とするコミュニティの活動を支援する取り組みを行っています。支援内容はさまざまですが、中でも多いのがコミュニティやイベントの運営に必要なインフラの提供です。

この記事ではそれらのコミュニティの中から、札幌を拠点に活動するTEDxSapporoのオーガナイザー(代表)を務める鈴木卓真さんに、どんな活動をしているのか、そして当社が提供するインフラをどのように使っているのかなどをお聞きしました。

TEDxSapporoのオーガナイザーを務める鈴木卓真さん

TEDxSapporoについて

TEDについてはテレビやYouTubeなどでプレゼンテーションをご覧になったことのある方も多いかと思いますが、ここではTEDxSapporoのウェブサイトに掲載されている説明を引用します。

TEDとは、「Ideas worth spreading(広める価値のあるアイデア)」という考え方のもとにプレゼンテーションイベントを組織する非営利団体です。
1984年アメリカからはじまったイベントでは、テクノロジー・エンターテインメント・デザイン等の分野から先駆的な実践者や研究者などが登壇し、18分以内でインパクトのある方法でアイデアを発表します。現在では有名・無名を問わずさまざまなスピーカーが集い、世界に影響力を持つイベントとして注目されています。
www.TED.com

TEDxSapporoでプレゼンテーションした方々(資料提供:鈴木さん)

そして、TEDの精神を共有するために世界各地で活動するコミュニティを総称してTEDxと呼んでいます。日本にも100以上のTEDxコミュニティが存在し、TEDxSapporoもその1つです。TEDxSapporoは2012年に設立され、2013年から毎年1回のプレゼンテーションイベント(約300人規模)と、年数回の小規模なイベントを開催しています。最近開催したイベントとしては以下のものがあります。

鈴木さんは2012年に、最初は参加者としてTEDxに関わりました。その後、活動内容に興味を持ったことからTEDxSapporoのスタッフに加わり、2015年にオーガナイザーに就任して現在に至ります。

2014年にTEDに参加したときの鈴木さん(左手前)(CC BY-NC-ND TED)

TEDxSapporoの運営におけるインフラの課題

コミュニティの運営においては、さまざまな場面でサーバなどのITインフラが必要になります。TEDxSapporoの場合は、メンバー間のコミュニケーションとファイル共有が主な用途です。

これらの運営業務を進めるにあたり、これまでにさまざまなコミュニケーションツール(Slack, Facebookなど)やクラウドストレージ(Googleドライブ、DropBoxなど)を利用してきました。しかし、どれも一長一短で決め手に欠け、さらにいろいろなツールを使ってきたこともあって情報が散乱するという問題が起きていました。

また、ファイル共有に関しては、TEDxSapporoのイベントで行われたプレゼンテーションの動画や写真が大量にあり、それがストレージの容量を圧迫するという問題もありました。TEDxSapporoのプレゼンテーションは1人15-20分ぐらいで、1回のイベントに7-8人が登壇するのですが、これをフルHDのカメラ5台で撮影しているので、データ量は1回のイベントで100GBぐらいになるそうです。これほど大量になると、費用や転送量の問題でクラウドストレージには置きづらくなります。そこでやむなくスタッフの皆さんのPCなどに保存してきたのですが、それも困難になるほどデータが増えてきました(累計で1TBに達するほどあるそうです)。



TEDxSapporoの動画の例。植松努さん、荻田泰永さん「重なりあう好奇心が生み出す創造力」。会場で撮影した映像素材を編集して制作しています

TEDxSapporoにさくらのVPSを提供

このような課題を抱える中で相談を受けたさくらインターネットは、TEDxSapporoの活動を支援するためにサーバを提供することにしました。当社から提供したのは「さくらのVPS」の32Gプランのサーバ1台で、スペックは以下の通りです。

  • ゾーン:石狩第1ゾーン
  • CPU:仮想10コア
  • メモリ:32GB
  • ストレージ:HDD 3.2TB
  • OS:CentOS

TEDxSapporoではこのサーバを、ウェブサイト、ストレージ、メールなどに利用しています。なおメンバー間のコミュニケーションにはMicrosoft Teamsを利用しているそうです。

この後は、それぞれの用途において、さくらのVPSをどのように使っているかを紹介します。

ウェブサイト

ウェブサイトのコンテンツ管理にはWordPressを使用しています。プラグインもいくつか利用しています。例えば、シェアボタン、カスタムフィールド、パンくず、アンチスパムなどです。テーマは独自に作られたものを使用しています。

TEDxSapporoのウェブサイト

TEDxSapporoではブログも運用しており、それもWordPressの機能を使って実現しています。ブログの記事は、原稿は複数人で確認しながら作るのでTeamsで作成し、できあがったものをブログ担当者がWordPressに掲載しています。プレゼンテーションの動画はYouTubeにて公開したものを埋め込んで表示しています。

ウェブサイトへのアクセスは月間1-2.5万PVで、特に2018年ぐらいから増加傾向にあります。サイトへの流入経緯は、登壇者の名前での検索によるものが多いです。前述の通りウェブサイトにはTEDxSapporoのイベントにおけるプレゼンテーション動画が多数設置されており、それらが検索でヒットして閲覧されているようです。なお、年に何回かのイベント開催時はアクセスが増えますが、それほど突出してはいません。一般的にイベントのウェブサイトは開催時のみアクセスが急増し、他の時期は休眠状態になるものが多いですが、TEDxSapporoの場合はプレゼンテーション動画の蓄積が定常的なアクセスを生んでいるようです。イベント開催時期以外でも、登壇者がメディアに取り上げられるとアクセスの急増が見られるそうです。

TEDxSapporoウェブサイトのページビュー数(資料提供:鈴木さん)

ストレージ

さくらのVPSのストレージには、前述したような大量の動画や写真を保管し共有しています。これらのファイルを管理するために、サーバ上にオンラインストレージを作成できるOSSであるowncloudをインストールして活用しています。TEDxSapporoのスタッフの大半は非IT系の人なので、owncloudのようなブラウザやアプリで管理できるツールの導入は必須といえます。類似のソフトウェアであるNextCloudの導入も検討中とのことです。

TEDxSapporoにおけるストレージの利用。Googleドライブ、Microsoft Teams、および各自のPCなどに保管されていたデータをowncloudに集約し整理(資料提供:鈴木さん)

メール

メンバー間のコミュニケーションはTeamsを使っていますが、対外的なやりとりにおいてはメールをなくすわけにはいきません。そこで、さくらのVPSにtedxsapporo.comドメインのメールサーバを構築し運用しています。MTAにはPostfixを使用し、現時点で約50のアドレスが登録されています。用途は外部との交渉や問い合わせ対応で、前述の通り内部的なコミュニケーションはTeamsで行っているためメーリングリストは使っていません。

さくらのVPSを使ってみて

鈴木さんにさくらのVPSを使ってみた感想をお聞きしたところ、真っ先に返ってきた答えは「めちゃくちゃ速い」でした。動画などサイズの大きなデータを扱ったり、イベント開催時などにアクセスが急増したりするので、データの転送速度やウェブの応答時間は重要な指標になりますが、「アクセス数が多くても安定して稼働している」とのことで、高評価をいただきました。さくらのVPSのコントロールパネルではトラフィックも見られるので、そちらもときどき見ていますが安定しているとのことです。さくらインターネットは国内最大級の大容量バックボーンを有しており、そういったことも安定稼働に貢献しているようです。

これからやってみたいこと

そして鈴木さんには、今後TEDxSapporoでやってみたいこともうかがってみました。まず挙がったのが「プレゼンテーション動画を4K画質にする」ことです。しかしこれは、撮影用のカメラは用意できても編集用機材の性能が追いついていないので、すぐには実現できないそうです。4Kになるとデータ量もさらに増えるので、ストレージの消費ペースも上がりそうです。

それから、システム関連ではCDNの導入を考えています。前述したように登壇者がメディアに出たりするとアクセスが急増しますが、たいていそれは事前に知らされておらず、トラフィックが増えたことで出演を知るのが実情です。このような予期せぬトラフィックの急増に対応するにはCDNが有用です。例えば当社のサービスであるウェブアクセラレータもCDNの1つです。

さらに、将来的にはECサイトの開設を目論んでいます。実は従来のTEDの規定ではイベント当日以外の物販ができなかったのですが、最近改定されて物販が可能になりました。オンライン販売も可能になるので、登壇者とコラボレーションしてグッズなどを作り、ECサイトで販売したいと考えています。これもさくらのVPSで構築できそうです。

新型コロナウイルスとTEDxSapporo

最後に、インフラの話からは離れますが、現在流行中の新型コロナウイルスがTEDxSapporoの運営にどう影響しているかをお聞きしました。

まず、オフラインのイベントは2月に開催したTEDxYouth@Sapporo 2020が最後で、それ以後に予定していたものはすべて中止もしくは延期になっています。毎年開催してきたTEDxSapporoの本イベントも今年は中止し、来年以降に延期しました。その一方でオンラインイベントを計画中です。こちらは生配信ではなく事前収録による配信を考えているそうです。その理由としては、TEDxのプレゼンテーションは品質を重視していて、そのためには収録した方がパフォーマンスの質が高まるからというのがあります。

では、イベントをオンラインに移行すればそれでよいかというと、鈴木さんはそうではないと言います。「TEDはプレゼンテーションを鑑賞するイベントだと思われがちなんですが、実際に会場に行くと展示や交流のためのスペースもあって、そこで登壇者や参加者が相互にコミュニケーションすることができるんです。むしろプレゼンを見るよりもコミュニケーションに割く時間の方が長いです。そして、そのコミュニケーションの中から浮かんだアイデアを自分の行動に結びつけることがTEDの重要な意義の1つなんです」。そうだとすると、このようなコミュニケーションの喪失はイベントをオンライン化しても完全にリカバリーすることは難しく、大きな影響と言えそうです。

交流スペースで会話する登壇者と参加者

さらに鈴木さんはこう続けます。「自分にとってはTEDxSapporoというコミュニティを作っていくことが大事で、イベントはコミュニティを作るためのツールの1つに過ぎません。登壇者とのつながりも、登壇してもらってハイ終わりではなく、継続的なコラボレーションや縁といったものを大事にしたいんです。このまま単純にオンライン化すると、そういうつながりを作れなくて単なるイベント屋みたいになってしまいそうなので、そうならないようにしたいですね」。

オンラインのコミュニケーションツール、特にビデオ会議ツールは、コロナウイルスの流行によって急速な普及と進歩を見せていますが、まだまだ発展途上の分野です。今後もさらに良いツールが出てくることを期待するとともに、やはりオフラインでのコミュニケーションにはそれ相応の価値があるので、対面でのイベントが普通に開催できる日が再び来ることを願っています。

おわりに

TEDについてはいろんな人がプレゼンテーションをするイベントという程度の認識しかなかったのですが、鈴木さんに話をうかがってみて、アイデアの共有であるとか、札幌や北海道という地域を背負っていることであるとか、コミュニティについてとても深く考えていることを感じました。そして、そんな有意義な活動をしているコミュニティの運営に、さくらのVPSを提供することで当社も微力ながら貢献できていることをうれしく思いました。TEDxSapporoの今後ますますの発展を願っています!そして、さくらインターネットはこれからもさまざまなコミュニティの活動を応援していきます!

TEDxSapporo2019のスタッフの皆さん (CC BY-NC-ND TEDxSapporo)