リモートワークで働く社員が全国から集結!「さくらの聖夜2020 〜今年はオンラインで!〜」レポート

はじめに

昨年の12月25日(金)に「さくらの聖夜2020 〜今年はオンラインで!〜」を開催しました。「さくらの聖夜」は、さくらインターネットが毎年クリスマスの頃に行っている恒例のイベントです。2019年までは会場で行っていましたが、新型コロナウイルスの流行に伴い、今回はオンラインイベントとして実施しました。それではイベントの模様をご紹介しましょう。

最近のさくらって何やってるん?

イベントの前半は、さくらの社員たちが、最近の取り組みや感じていることなどを披露しました。昨年の途中から、当社はリモートワーク前提の働き方に移行したのですが、このセッションではそれを象徴するように、発表者や司会者が全国各地から登壇する形式で進行しました。このような方法は会場でのイベントでは困難で、オンラインになったことで実現できたとも言えます。

それでは個々の発表をご紹介します。なお司会は札幌在住のエバンジェリスト・三谷公美が務めました。

札幌の雪景色を背景に司会を務める三谷。他の登壇者もそれぞれのご当地背景を背に登壇しました

この1年の『習慣の力』について

先頭打者は執行役員の横田真俊で、東京から発表しました。

横田は昨年、Nintendo Switchのゲーム・Fit Boxing(画面のリズムに合わせてシャドーボクシングをするゲーム)を毎日やり続けた結果、6kgの減量に成功しました。しかし、継続的に運動すればやせられるとわかっていても、実際にはなかなかできないのが問題です。では、このような良い習慣を継続するにはどうすればよいのでしょうか?

横田のFit Boxingの画面。右上に「236日連続で継続中!!」の文字が見える

これについて横田は、自身が読んだ「小さな習慣」という本に書かれていた「小さすぎて失敗すらできないような簡単なことを習慣にする」「その小さな習慣を、毎日これだけはやると決めて必ず実行する」という一節にヒントを得て、「Fit Boxingを起動する」を習慣にしたそうです。起動すればプレーしてしまうので、毎日続けることができたという話です。これが「習慣の力」です。今回は横田自身の個人的なことでしたが、同書によると、集団の習慣についても同じようにできるそうなので、今年はそれに取り組んでみたいとのことです。

さくらインターネットで取り組んでいるハードウエア開発について

続いて、執行役員の江草陽太が大阪から登場し、さくらインターネットにおけるハードウェアを使った取り組みをいくつか紹介しました。

まずは当社のインフラ研究会というサークルで取り組んだ、ETCのパケット解析です。SDR(Software Defined Radio)を使ってETCの電波を受信し、中身を解析しました。詳細はさくらインターネット Advent Calendar 2020に掲載された2本の記事をご覧ください。

次はエンジニアリングラボという部署で制作した、FPGAカードを使ったNTPサーバです。こちらも詳細は特設実験サイトに載っていますが、この実験を通して、FPGAを使ってパケットの高速な処理ができることを実証しようとしており、先々はここで培った技術をクラウドサービスに適用したいと考えています。

また、データセンターを無人化したいという構想を掲げました。データセンターの作業はまだ人力で行っているものが多く存在しますが、これらを自動化する仕組みを開発中です。

誇りを持って研究していくために

3番目はさくらインターネット研究所の松本亮介が福岡から発表しました。テーマはさくらインターネットの研究開発についてですが、研究内容の紹介よりも、企業の研究者が誇りを持って研究に臨めるようにするにはどうすればよいかという話が中心でした。

この話の背景には、企業の研究者は、自分の研究が企業や社会のためになっているかで悩むことが多いという事情があります。松本はこれに対して、以下の4つの観点で研究環境を整備することで、研究者が誇りを持てるのではないかという考えを示しました。

  1. チームでの研究開発
    研究だけをやっていると現場の最新技術を把握する時間が取りにくくなります。現場のエンジニアと一緒に研究することで、現場で役に立つ研究を行うことができます。
  2. 問題設定とソルバー(解決策)などのコラボレーション
    最近の研究では機械学習などを使った課題解決が普通に行われており、問題設定もソルバーも高度な専門知識が必要です。これらを1人で全部やるのは困難ですが、チーム内で分担するとより良い成果を上げることができます。
  3. 経営やサービスの方針に研究活動を加えていく力
    研究内容が会社やサービスに貢献していることを言語化できれば、社内でも存在価値を認められ、研究者も誇りを持てるようになります。そのためには社内との共有活動を継続し、信頼関係を作ることが必要です。
  4. 研究コミュニティの整備
    日本の研究コミュニティは、エンジニアと研究者が一緒にやっているという感じにはまだほど遠く、この点で諸外国とは大きな違いがあります。エンジニアリングと研究の相互連携を強化し、国際基準に近づけていきたいとのことです。

移住先を衛星データで探した話

4番目の発表はクロスデータ事業部で衛星データプラットフォームTellusの開発に携わる城戸彩乃です。城戸は昨年から、多拠点を移住しながらリモートワークで働く生活を送っており、現在の拠点である香川県から登壇しました。そして今回のトークは、その移住先を衛星データを使って選定した話です。

まずは条件を設定します。城戸の場合は「暑すぎず寒すぎず、星空がきれいで、自然災害が少ない所」でした。次にこの条件を解釈し、データを使って探せるような条件に置き換えます。例えば「暑すぎず寒すぎず」は気温20-25度ぐらいとか、「星空がきれい」は夜間光が少ない所(東京などの大都市圏は夜間光が多いので不適)、といった具合です。自然災害リスクの大小はハザードマップで見ることができます。

条件を設定したら衛星データを見て、条件に合う地域を選定します。今回の例では、まず夜間光のデータで地域を絞り込みました。夜間光データはTellusにないのでNASAのデータを使用し、夜間光が少ない地域をTellus上に作図します。次にTellusからMODIS地表面温度データを取り出して図に重ね、20-25度ぐらいの地域を選んでいきます。季節によって気温は変化するので、結果として夏場は北海道で過ごし、その後は南下する移住スケジュールが組まれました。

さらに詳しく知りたい方は、宇宙ビジネスや衛星データがわかるメディア「宙畑」に「衛星データを利用して理想の家探しはできるのか!?理想高めなOLの日本全国移住先探しの旅」という記事がありますので(前編後編)、そちらをご覧ください。

沖縄に移住してみて感じたこと

前半の最後は代表の田中によるトークです。タイトルにもあるように田中は現在、沖縄に移住しており、この日も当地から登壇しました。

はじめに社員の出社率が紹介されました。昨年3月から激減し、4月と5月は原則として出社禁止にしたこともあって10%未満、制限を緩めた6月以降も10%台で推移しています。このような状況下で田中はどうしたかというと、もともと趣味のダイビングを楽しむために沖縄に家を借りていたのですが、この機会に生活拠点も沖縄に移しました。DIYで自宅を整備する様子も紹介されました。3Dプリンタまで購入したそうです。

ところで、田中は2019年の12月に社内の幹部向けミーティングで「なんで通勤ラッシュにもまれて、朝の9時にわざわざ集まって(そのミーティングは9時開始)、社長の話を聞かなきゃいけないんだ?」という話をしました。そのときはコロナ禍のことなどまったく予想していなかったのですが、それから半年も経たないうちに状況は一変しました。よって、コロナ禍は会社に集まることの意義や本質を見直す良いきっかけになったと感じているとのことです。詳しくは田中が書いたnoteの記事をご覧ください。

そして最後に、当社の多様な働き方を支える制度「さぶりこ」が紹介されました。田中によると「制度よりも慣れが重要」とのことで、リモートワークもさぶりこの制度の1つとして公認されていたので体験済みの社員が多く、それが急激な労働体制の変化に順応できた要因だろうと述べました。

質疑応答ならびに雑談

イベントの後半は、前半の発表者5人と司会の三谷による雑談タイムで、参加者からいただいた質問への回答を中心に進行しました。取り上げた話題からいくつかを紹介します。

ーー Fit Boxing 2は買いましたか?
横田:もちろん発売日に買いました。いま21日継続中です。
三谷:今から買うならFit BoxingとFit Boxing 2のどちらが良いでしょうか?
横田:2でしょうね。というか皆さんFit Boxing好きですね(笑)。
三谷:そうなんですよ。「2が出たらFit Boxingはどうしちゃうんですか?」とか、みんないろいろ気になってるようです(笑)。
横田:1もやってますよ。1と2を毎日やってます。
江草:じゃあ使う時間は2倍ですか?
横田:いえ、1は10分にして、2を40-50分にしてます。よって1もまだ継続中で現在262日目です。

ーー Tellusは有償データも使えますか?
城戸:12月23日から有料のデータやツールも販売できるようになりました。今はまだ衛星データの有料版はないんですけど、他のデータの有料版は、Tellusマーケットというところで購入できるようになっています。これからもどんどん追加していきたいので、衛星データのプロバイダさんともお話をさせていただいているところです。
あと、もともと有料で販売されているようなデータをTellusで買い取って皆さんに無料で提供しているデータもあります。ASNARO-1, ASNARO-2というのがそれで、かなり高解像度の衛星データになります。Tellusの会員登録をしていただくと見ることができますので、ぜひ見てください。

12月23日から本格始動したTellusマーケット

ーー お客様サポートも自宅から行っているのですか?
田中:電話はどうしても出ないといけないので、大阪本社に出社してますね。だからサポートの人たちが仕事している一角だけ、プラスチックの仕切りが席ごとに置かれています。でもメールであれば、家からやるケースもあると聞いてます。最終的には電話も家でやれればいいんですけども、自宅だと子供の声が入ってしまうとかあって、すぐには難しいですね。自宅の近くに電話サポート用のブースみたいなのができればいいんでしょうけどね。わざわざ梅田や新宿まで通うのは大変なので。ただ、電話のサポートの需要は急速に減ってきたんで、全部家からできる未来もあるのかなという気はします。

ーー コロナ禍にあって研究の進め方は変わりましたか?
松本:さくらインターネット研究所は、そもそも拠点が分散していて、かつリモートで話をすることも多かったんで、そういう意味では大きな変更はなかったです。でも、各拠点で皆さん出社してリアルでお話ししていたのと比べると、リアルでは世間話とか、あまり論理的でないような適当な話から創発的に面白いアイデアが出てくることがあるんですけど、リモートだとどうもそういう流れになりにくい、みたいなことは感じてます。

ーー 今年1年を振り返っていかがでしたか?
横田:家にいる時間が増えましたね。3月ぐらいまでは会社に行った方がいいのかなと思ってましたが、それ以後は在宅勤務の方が効率が上がるようになりまして、強制的に働き方を変えるといろいろ変わるんだなと思いました。
江草:CISO(最高情報セキュリティ責任者)の仕事をがんばりました。以前からリモートで仕事できる環境はありましたが便利ではなかったんで、そこを便利にするとか、リモートで働く人数が増えると困ることも出てくるので、それをどうするか、とかですね。コロナのせいで無理やりやらされた感はありますが、この1年でリモートでの仕事はすごくやりやすくなったと思います。
松本:今年は、自分の研究は順調に行き過ぎて、かえってやる気があまり出なかったという反省もあるんですが、その一方で、周囲の研究のサポートや共同研究、それから今日発表したような研究の価値を言語化するといったことに力を入れました。仲間の研究者が成果を出したり賞をもらったりしたのはすごくうれしかったですね。

さくらインターネット研究所の松本と鶴田による論文が「IOT研究会 藤村記念ベストプラクティス賞」を受賞 (プレスリリース)

城戸:多拠点生活を送るようになって2か月おきぐらいに移動しているので、引っ越しのパッキングのスピードがめっちゃ上がりました。それから、どこに行っても質の高い睡眠をしたいという思いから、睡眠についてもよく考えるようになりました。仕事の面では、物理的な移動時間がなくなったので、ミーティングや登壇のスケジュールが隙間なく入るようになり、回数がすごく増えましたね。
田中:僕は実は他の人ほど劇的に変わったという感覚を持ってなくて、「なんでこうならないのかな」と思ってたことがその方向に変わりつつあるという感じですね。「リモート前提で考える」というのもその1つで、以前はその場にいる人だけで物事が決まってしまうという構造があったんですが、そこから解放されるとこんなに良くなるんだなと思いましたね。その一方で、リアルに会うことの魅力もやっぱりあって、10月ぐらいにコロナ禍がいったん落ち着いていたときには社員の人たちが沖縄に来て、公園で会議したのはすごい新鮮でしたね。
それから、今は全員がいろんな情報をゲットして、全員が判断して、全員がアウトプットして、全員がまき散らす時代になりましたよね。こうなると、みんな批判がこわいから絶対リスクを取りたくない行動をするようになると思うんで、ウイルスが出たらすぐにみんな家に籠もる、みたいなことがたぶんこれからもずっとあると思うんですよ。だから働き方も考え方を変えないといけない時代が来たんだなと思ってます。

ーー 最後に、好きなラーメンを教えてください
横田:数年前に福岡に行ったときにラーソーメンを食べたかったのですが、行った時に食べられなかったので、取り寄せて食べました。
松本:最近はカップラーメンが結構おいしいですね。ファミリーマートとラ王がコラボしたのとか。ラーメン屋では大阪の神座(かむくら)も好きです。
城戸:今年一番食べたのは辛ラーメンです。袋麺にチーズを入れて食べます。さらに残ったスープにごはんを入れて雑炊にして食べるのが最高です。ラーメン屋では湯河原の飯田商店がめっちゃおいしいです。
江草:私も辛ラーメンを箱で買って、普通の食べ方の他に、汁なし辛ラーメンの作り方を秘書さんに教えてもらって食べたりしてました。
田中:沖縄そばは普通に食べてますが、ラーメン屋も結構あるんですよね。暖暮という博多ラーメンの店がうちの近所にあって、ときどき行ってます。ただ、コロナのせいで太ってきたんで、ラーメンはちょっと控えた方がいいかなって感じです。

登壇者の皆さん、そしてご質問をいただいた皆さん、ありがとうございました!

こんなときだからこそやりたかった懇親会

以上で「さくらの聖夜」の本編は終了し、その後は本編で使用したZoomをそのまま利用してオンライン懇親会を実施しました。田中による乾杯でスタートし、懇親会幹事を務めたコミュニティ世話役・はやし(ま)がセッティングしたブレイクアウトルームに分かれて、少人数での会話を楽しみました。

振り返ってみると、コロナ禍になってからは、オンラインイベントでも一方的に話をする/聞くだけのものが多く、参加者の方々や同じ業界の人たちと会話する機会がとても少なくなってしまったように思います。そんなこともあって、年末ぐらいはいろんな人とお話ししたいと思い、このような場を設けた次第です。懇親会終了後はZoomの部屋を変えて2次会も行い、深夜まで懇親しました。ご参加いただいた皆さんありがとうございました!

参加者プレゼント

コロナ禍になってからもう1つ、大きく変わったのは、イベントでお会いした方々にノベルティグッズやクーポンをお渡しする機会がなくなってしまったことです。そこで今回は、参加者アンケートに回答してくださった方の中から希望者に、オリジナルグッズをお送りしました。この記事が公開される頃には届いているかと思います。お楽しみいただけたならうれしいです。

おわりに

いろんなことが大きく変わってしまった2020年でしたが、そんな中でも、さくらインターネットを応援してくださる皆さんがたくさん集まってくださり(ZoomとYouTubeを合わせて130人ぐらいご参加いただきました!)、一緒にクリスマスを楽しく過ごせたことをとてもうれしく思います。今年もしばらくは難しい状況が続くと思いますが(首都圏の緊急事態宣言を受けて、当社の東京支社は1月8日から再び原則出社禁止になりました)、これからもファンの皆さんとつながるより良い方法を模索していきたいと思います。さくらの夕べをはじめとするイベントも継続的に実施していきますので、ぜひまたご参加ください。

それではまた、次回のイベントでお会いしましょう!