2021年2月25日(木)の夜に「さくらの夕べオンライン 西新宿セミナールームご利用ありがとうございましたナイト」を開催しました。本記事ではこのイベントの模様をレポートします。

西新宿セミナールームとは

「西新宿セミナールーム」は、住友不動産西新宿ビル4号館という建物の一室です。定員は45人で、WiFi完備などIT企業らしい点はありますが、基本的にはごく普通のセミナールームです。

さくらインターネットがこのセミナールームを開設したのは2010年で、それ以来、社内行事での利用に加えて、当時増えつつあったIT系コミュニティが主催する勉強会やイベントへの無償提供を行ってきました。

提供開始をアナウンスする、当社代表の田中邦裕さんによるツイート

セミナールームの一般開放は2014年3月末で終了しましたが、その後も当社社員が関わるコミュニティの行事には提供を続けていました。しかし、2021年1月末をもってセミナールーム自体がなくなることになり、運用を終了しました。

本来であれば、セミナールームをよく利用された方々にお集まりいただいて終了イベントをしたかったところですが、新型コロナウイルスの流行により集会もままならず、セレモニーもないまま会場を閉じることになってしまいました。しかし、コミュニティの皆さんに何らかの形で終了を報告できないかと考えた結果、オンラインでもいいからイベントをやろうということで、今回のイベントを実施することになりました。

イベントでは、西新宿セミナールームで勉強会を開催したとか発表したとか、何らかの縁のある方々に発表をお願いしました。参加者からも発表を募集し、そちらにご応募いただいた方々も含めて、全部で6人の方にご発表いただきました。それぞれの発表内容をご紹介します。

会場提供側の思い出

最初の発表は、さくらインターネットの横田真俊さんが「西新宿セミナールームの困った事の思いで」と題して行いました。

今回のイベントを開催するにあたり、西新宿セミナールームでの開催数が多いイベントを調べたところ、さくらの夕べ、シェル芸勉強会、プレゼン研究会の3つが挙がったのですが、横田さんはこれらすべてにスタッフとして関わっていました。おそらく西新宿セミナールームをもっともよく利用した人でしょう。横田さんからは会場を利用する際の社内手続きやトラブル対応などの思い出話がなされました。概要を箇条書きでお伝えします。

  • 社内手続きでは、イベント名をそのまま社内に申請するのがちょっとためらわれるような場合があり(下図参照)、そのようなときは穏便なイベント名に変換して社内に申請した
  • 土日はビルの入口が閉まることがあり、その時間帯に参加者が来たら内側からドアを開けて中に入れる対応をした
  • セミナールームとエレベーターホールの間にドアがあり、ここは社員でないと解錠できないので、門番を置く必要があった。そしてドアの外からはセミナールームが見えないので、門番は退屈だった
  • Macだけプロジェクタに映らない問題があった。これは長いHDMIケーブルを使うと信号が弱くなることが原因で、HDMIリピーターを導入することで解決した

そのままでは社内に申請しにくいイベント名の例 (横田さんの発表資料より)

発表の最後に横田さんは「カジュアルに勉強会やイベントを開ける場があってよかったです。コミュニティにも貢献できたと思います。ありがとうございました」とコメントしました。

シェル芸勉強会と会場とオンライン化の話

2番目の発表はシェル芸勉強会を主宰している上田隆一さんです。

シェル芸勉強会はUSP友の会が主催している勉強会で、上田さんが問題を出し、その問題の解となるシェルのプログラム(たいていは1行〜数行で書ける)を参加者がその場で考えて作成するというスタイルで実施しています(過去の問題一覧)。これまで52回のうち22回を西新宿セミナールームで開催しており、シェル芸勉強会の会場としては最多です。セミナールームの思い出としては、毎回ドア開閉の対応をしてくれた横田さんに本当にお世話になったことと、さくらのVPSに負荷がかかるシェル芸がなぜか多く、横田さんに「やめてほしい(苦笑)」と言われながら実行していたことです。

そして、ここ1年ほどは上田さんの自宅からのYouTube配信で勉強会を実施しています。実は西新宿セミナールーム時代から配信は実施しており、大阪や福岡、長崎などにサテライト会場も開設されていました。しかし配信オンリーになると会場からの生の反応がないのがさびしく、また応答速度も遅いのが気になります。そこで実地に近づける工夫として、YouTubeの設定を超低遅延配信にしたり、Discordを導入して音声チャットをYouTubeに引き込むといった試みをしています。また、シェル芸勉強会では勉強会終了後に2次会を行っており、こちらもZoomやDiscordなどを利用していますが、実地では複数の会話が並行して進められるのがオンラインでは難しいという点に課題を感じています。

今後については、再び実地でやることも検討していますが、従来のように数十人が集合できるような会場を企業が提供するのは当面まだ難しいと思われるので、小規模なサテライト会場を多数開設する方法を考えているとのことです。

寺社向けWordPress勉強会からさくら咲く

3番目は小路竜嗣さんが「不滅のサーバー さくらインターネット編」と題して発表しました。小路さんは長野県塩尻市にある善立寺の副住職を務める傍ら、かつてエンジニアをしていた経歴を生かして「寺院デジタル化エバンジェリスト」を名乗って活動しています。

その活動の中で当社とのご縁が生まれ、2019年11月に「寺社×ウェブサイト~寺社向けWordPressインストール&サイト構築講習会~」を西新宿セミナールームで開催しました。寺社がウェブサイトを持つ際に必要な知識として、ドメイン選びやウェブサイトの構築・運用方法を伝授するとともに、さくらのレンタルサーバでWordPressを使ってウェブサイトを構築する実習も行いました。イベントの模様や小路さんへのインタビューを、さくらのナレッジで「『寺院デジタル化エバンジェリスト』に聞く、お寺とデジタルの未来」と題して記事化しています。

寺社向けWordPress勉強会の模様

実はこのセミナーの参加者は数人で、小路さんも「寺社はウェブサイトの必要性をまだ認識していないようだった」と感じたのですが、その4か月後にコロナ禍となり、事態は大きく変化します。人が集まって法事をすることが難しくなったため寺社も対応を迫られ、ようやくデジタル化やオンライン化の必要性が認識されました。そして、ネットを検索してさくナレの記事を見た寺社から小路さんに取材や相談が来るようになり、現在3つのサイト制作を手伝っているとのことです。「イベントはそれをやって終わりではなく、後に大きな影響を与えてくれる芽のようなもの。ここで生まれた芽がさくらを咲かせますように」という言葉が印象に残りました。

西新宿セミナールームでネコが飛んだ日

4番目の発表は新妻正夫さんです。新妻さんはkintoneやペライチ、CoderDojoなど数多くのコミュニティで活動している方です。今回の発表では、2018年12月に西新宿セミナールームで行われた「小学校プログラミング教育を考える夕べ@東京」が紹介されました。(このイベントはさくナレでもレポートしています)

「小学校プログラミング教育を考える夕べ」は、当社が小学校プログラミング教育を支援する目的で立ち上げた「さくらの学校支援プロジェクト」の活動の1つとして開催したイベントです。新妻さんもCoderDojoなど子供向けのIT教育活動に関わっている関係で、このイベントへの登壇とレポート執筆を依頼されて参加しました。しかし、会場に行ってみると参加者は教育関係のまじめな方々ばかりで、新妻さんには場違いな感覚がありました。

このようなときに場を和ませるのに役立つのが、新妻さんが制作した「ねこたいほう」です。会場の音声をマイクで拾い、それがたまると大砲から猫が発射されるというミニゲーム的なものです。発射するたびに「必要なおうえん」の数字が増えていくので、参加者はより多くの声援を送る必要があり、場が盛り上がります。

このイベントから2年余りが経過した現在では、小学校におけるプログラミング教育の必須化が始まり、中学校や高校でも新しい学習指導要領に基づくプログラミング教育が始まろうとしています。教育現場での取り組みの現況は地域や学校によってかなり差があり、情報機器を使いこなしているグループと情報も十分に得られていないグループに二極化している印象ですが、引き続き動向を追っていきたいとのことです。

ミャンマーからも西新宿セミナールームに参戦!

5番目の発表は佐々木健さんです。新妻さんと佐々木さんは、本人からの応募でご発表いただきました。佐々木さんは現在ミャンマーで働いていて、軍によるクーデターやインターネットの遮断などの厳しい状況を乗り越えて本イベントに参加してくださいました。

佐々木さんからは2つのエピソードが紹介されました。1つは、かつて佐々木さんは西新宿セミナールームのすぐ近くの部屋(当社とは別会社)で働いていた時期があり、その頃にセミナールームによくお世話になったという話です。もっとも用途はセミナーではなく、不要になったサーバや梱包材などを回収業者に出すまでの一時的な置き場とか、社員の宴会場などです。さすがにセミナールームの予定は事前に確認して、空いているときに使っていたそうです。

もう1つは、横田さんの結婚祝いを西新宿セミナールームで行った話です。具体的にはプレゼン研究会がその場となりました。このイベントでは参加者全員がライトニングトーク(LT)形式で発表することになっていたので、佐々木さんはバイオリンで木村カエラさんの「Butterfly」を弾くLTをしました。楽器を弾くLTは一度やってみたかったらしく、実績を作れてよかったとのことです。

西新宿セミナールームに代わる新会場を公開!

最後に筆者も発表を行いました。筆者は当社で働き始めてから、自社イベントやコミュニティへの会場提供対応で西新宿セミナールームを利用する機会が多かったです。思い出の行事は2016年5月に行われた「UNIX考古学の夕べ」です。「Unix考古学」を著した藤田昭人さんの講演会で、筆者も日本UNIXユーザ会の幹事として長く活動してきたことから座談会に登壇しました。当日の様子はTogetterで見ることができます。

また、行事以外の思い出として、門番はイベントを見られない、ワイヤレスマイクを使うと近所の公民館と混線してそちらの音声が入ってくる、新宿にあると言いながら駅から遠い、などの話をしました。

ところで、西新宿セミナールームは運用を終了し、また東京支社33階のカンファレンスルームもフロアごと返却したので利用終了となったのですが、このたび新たなイベントスペースを用意したので、それをアナウンスしました。以前は社員の執務スペースだった東京支社32階を全面改装し、来客用の受付およびオープンスペースとしたものです。また、フロア内には配信スタジオ(STUDIO Sakura TKY)も新設し、オンラインイベントへの登壇や、オープンスペースで実施するイベントの配信ができる設備を備えました。

残念ながら新装オープンとともに首都圏に緊急事態宣言が発令されてしまい、社員が出社して対応することができないので実際の利用はしばらく先になる見込みですが、またいつか集まれるようになったら、コミュニティの皆さんにも会場を提供できればと思います。そのときはぜひご利用ください!

質疑応答

全員の発表が終わった後で質疑応答を行いました。質問はSlidoに書いてもらい、それを読み上げて発表者に回答していただきました。

ーー 勉強会をオンラインで開催するようになって、会場でやっていたときとの違いを感じたことがあれば教えてください
上田:出題に対する反応がオンラインだと遅いので不安になりますし、反応がないと寂しいです。2次会で行きつけだった店の中華料理が食べられないのも残念です。

ーー 寺院関連のWordPressを建てるときに、通常のウェブサイトとは異なる点で気をつけることはあるのでしょうか?
小路:同じ名前のお寺が全国にたくさんあるので、ドメイン名選びやSEO対策は非常に気を使います。重複を避けるために、地名を入れたり、お寺にある有名な物などをドメイン名に取り入れることを提案しています。一種のブランディングですね。

ーー 配信スタジオの使い方について構想はありますか?
仲亀(本イベントの配信担当):今までは専用のスタジオがなく、社員の個人機材で配信してきましたが、今後はこの場所に行けば機材がそろっていて配信できることがまず大きいと思います。配信ができる社員も今は数人ですが、このスタジオを利用してもっと多くの社員が配信できるようにしていきたいです。

ーー オフラインイベントでは「ここだけの話」として話せたことが、オンラインイベントになって話せなくなったことはありますか?
上田:油断しているとTwitterでバラされたりするので基本的にオフレコの話はしないですよね(笑)。
横田:失言がTwitterで拡散されたことがあるので、オフラインでもオンラインでも気をつけています。

ーー 翻訳機を使うなどして海外発信を考えたりはしていますか?
上田:シェル芸勉強会は北朝鮮の話とかもしているのでむやみに翻訳されるとヤバいですね(笑)。
筆者:お寺さんは海外向けのコンテンツも作られているんですか?
小路:有名なお寺さんは、英語・中国語・韓国語のコンテンツを用意しているところもありますね。そういう寺社はだいたい大きなお寺さんなので制作は外注で、自作しているところは少ないと思います。

ーー オンライン勉強会で試してみたいことはありますか?
上田:次の目標はナチュラルな2次会です。私と横田さんがひたすら40代トークを繰り広げて、周囲の人達が「またこいつらやってんな」とか言いながら他の話ができるような場です。
横田:懇親会は確かに課題ですね。最近いろんなツールが出てるんですが、どうもまだピンとくるものがない感じです。
新妻:私はハンズオン形式のセミナーが好きなんですが、リモートでやると進捗の遅い方のフォローがしにくいのが難点ですね。それから、会場に集まって実施すると思わぬ交流が生まれたりするのですが、オンラインだとそういったことが発生しにくいですよね。
上田:ロボット学会でもハンズオンをやりまして、そのときはブレイクアウトルームを活用してトラブル対応をしていました。もっとも、トラブルの大半はハンズオンの課題ではなく、ネットワークにつながりにくいとか、家の回線が遅いとか、そういったものでした。
小路:私もオンラインイベントはときどきやっていまして、例えば「RPA供養部」というイベントを、もう1人のお坊さんと一緒にやっています。使われなくなったロボットとかを成仏させるイベントです(笑)。
筆者:お寺の行事はオンライン化されてるんですか?
小路:一部のお寺さんではそういう取り組みもされていますね。4Kで配信したりとか。うちの寺では三脚とWiFiを用意して、法事の配信向けに提供しています。

ご質問いただいた皆さん、ご回答いただいた発表者の皆さん、ありがとうございました!

連動企画もやってみた

ところで、今回のイベントでは、発表や質疑応答といったセッションに加えて、西新宿セミナールームを皆さんの記憶に長くとどめてもらいたいという思いから、2つの連動企画を実施しました。それらを紹介します。

バーチャル背景

西新宿セミナールームでイベントをすることはできなくても、なんとかしてそこでやっているような雰囲気を出せないか、ということで考えたのが、オンラインイベントや会議でよく使われているバーチャル背景の利用です。セミナールームにて写真を撮り、Zoomに合わせて16:9の画角にしたものを用意しました。登壇者用や参加者用など、全部で4種類あります。以下に掲載しますので、ぜひダウンロードしてご利用ください。

イベントの写真を収集

西新宿セミナールームで行われたイベントのうち、さくらの夕べなど自社イベントは写真が残っているものが多いのですが、コミュニティの皆さんに提供したイベントの写真はあまり撮っていませんでした。そこで、参加者の皆さんにお願いして、西新宿セミナールームで開催したイベントの写真を、Twitterにハッシュタグ「#さくらの夕べ」付きで投稿していただきました。ツイートのまとめはTogetterで見ることができますので、ぜひご覧ください。

第3回さくらの夕べ(2011年9月)。リリース前の「さくらのクラウド」を初公開しました

おわりに

社内Slackで「西新宿セミナールームがなくなる」という通知を見て、「最後に何か記念イベントをしよう」という、割と軽いノリでイベントを実施したのですが、終わってみるといろいろと考えさせられることがありました。

特に思ったのは、小路さんの話にもありましたが、「イベントは芽」であり、次の何かにつながることが大切だということです。これは筆者もいろいろなイベントを運営する中で大事だと思っていることですが、小路さんの発表を聞いて、あらためてそのことを再認識しました。イベントで出会った人と次のコラボレーションが生まれることもよくありますが、これまでの経験の範囲ではオンラインよりも会場にいた方が多くの人と会話ができるので、次につながる何かが生まれる可能性も上がると感じています。オンラインイベントはまだまだこれから進化する分野なので、このあたりの課題もやがてクリアされることを期待していますが、現時点ではまだ物理的な会場の存在価値は失われていないように思います。

そういった意味で、西新宿セミナールームという会場がなくなることは残念ではありますが、東京支社に新たなイベントスペースもできましたので、今後はそちらでまた新たな歴史を作っていきたいと思います。そして、こうして記事という形で書き残すことで、西新宿セミナールームという会場があったことや、そこで開催したイベントのことなどを思い出してもらえたらうれしいです。

あらためまして、多くの方に西新宿セミナールームをご利用いただき、本当にありがとうございました! そして、また次回のイベントでお会いしましょう!