第3回さくら石狩DC見学ツアーは圧倒的なスケールとおもてなしでした。

2014年11月29日(土)〜30日(日)の2日間にわたって開催された「第3回さくら石狩DC見学ツアー」の体験レポートです。

さくらインターネットは東京と大阪のデータセンターのほかに、2011年にオープンした北海道・石狩データセンター(石狩DC)を所有しています。
一般の方を対象にしたDC見学ツアーを毎年1回行っており、今回で3回目をむかえます。
今回は大阪発、東京発の2箇所から出発のプランがあり、合わせて30名が参加しました。
もちろん、さくらインターネットのサービスを使っていなくても、IT関係の仕事に従事していなくても誰でも参加できるのですが、毎年定員を上回る多くの参加申し込みがあり、抽選により参加者が決定されています。運良く選ばれた人のみが参加できる、とても希少価値の高いツアーになっています。
私は大阪からの一参加者として今回初めて参加させていただきました。

10月時点で発表されていた今回の募集要項はこちらです。
2日間たっぷり最新鋭のデータセンター漬け! 第3回「さくら石狩DC見学ツアー」で2号棟も見よ!

ツアーの各論に触れる前に、全体としての感想を先に述べておきたいのですが、このツアーはただのDC見学ツアーではなかったということです。
コンピュータが好きな人、ITが好きな人はもちろん石狩DCの最先端の設備に触れ、感動すること請け合いですが、
DCが何をするところかよく分かってない」とか
レンタルサーバ会社が何をしているところなのか良く分かってない」とか
そもそも北海道のことが良く分かってない」人も十分楽しめる、いうなれば
テーマパークより楽しいアミューズメントと言えるツアーでした。

DC内の見学はあくまでツアーの中のコンテンツの1つにすぎません。見るだけではなくて胃も心も、体験も十分満たされました。
自分たちは社外から訪れた「見学者」に過ぎないはずなのですが、さくらの社員の方や現場で関わっている多くの方々と一緒に機器を見つめ、いっぱい学んでいっぱい笑い、まるで仲間のように接してもらえました。
石狩DCがこれからどうなっていくか想像するとワクワクするし、そしていつのまにか、さくらインターネットという会社の将来まで一緒に考えたくなる、不思議な体験でした。
飛行機を降りた瞬間から始まる、そんな「さくらインターネット体験」をご紹介します。

ツアーの大まかなスケジュール

1日目: 石狩DCへGO!

大阪出発組は伊丹空港から、東京出発組は羽田空港から飛行機で北海道・新千歳空港へ向かいます。
新千歳空港で合流し、1台の石狩DCツアーバスに乗り込みツアー開始です。
沿岸バス社自慢の萌えっ子バスが待っていました。

札幌の北隣、石狩市に存在する石狩DCへは新千歳空港からおよそ1時間半で到着しました。

石狩はここにある!

石狩DCに到着すると、石狩市のゆるキャラさけ太郎(twitter: @sake_taro)」と「さけ子」がお出迎え。

DCのセキュリティチェックを通って建物内の一室へ案内されると、早速昼食が!
北海道の味覚を堪能しました。イクラ、ウニ満載の石狩丼!

昼食後は参加者全員の自己紹介を行いました。
参加者の構成としては、学生の方が1/4くらいだったと思います。高校生もいました。それ以外はゲーム業界やWeb、ハードウェア関係など、何らかの形でITに関わっている人が多い印象でした。

石狩DC 1号棟の見学。スケールの大きさにびっくり。

2班に分かれてDC内を見学しました。

石狩DCは現在2棟の建物が存在し、将来的には8棟まで増やせる土地があります。
1日目は1号棟を見学しました。

熱源機械室は巨大なクーラー

さくらインターネットの田中社長みずからの案内で、最初に紹介されたのは熱源機械室です。
ここで冷水を作って、それをサーバの空調に利用します。
ただ、北海道石狩地方はもともと涼しい地方なので、この冷房機を利用する機会はあまり無く、 稼働するのは年間で数百時間くらいにとどまるそうです。

高圧電気室で最適な電圧に調節する

高圧電気室は、電力会社から送られた高圧の電力(6,600V)を、400Vに下げる施設です。ここは電気回路の匂い(ってなにそれ?)がしました。
万が一の火災のときには窒素ガスで室内を充填して消化するための設備が設けられています。その警報装置の精度は高く、
DCから遠く離れたところで野焼きがあっても、建物の隙間から入ってきた空気中の微細な煙を検知して警報を出すレベル
だそうです。

チャンバー(外気取り込み口)で外気を取り込む

建物の外側に回り、外気を取り込んでいる「チャンバー」を見ました。
フィルターに手をあてると、外の冷たい空気が建物の内側へ吸い込まれていく流れを感じます。

発電機室は緊急時の電源供給を行う

災害時など、電力会社からの供給が途絶えた時に稼働する緊急用の発電機が置かれている部屋です。
1号棟では7台ものディーゼル発電機が置かれています。
東京や大阪などの都市型のデータセンターでは、省サイズで騒音が少ないガスタービン発電機を採用しているケースが多いそうです。しかし、周囲に民家が無く空間が贅沢に使える石狩DCでは、ランニングコストが安いディーゼル発電機を採用しているそうです。
7台すべての発電機が稼働すると、会話もできないくらいの大音量になるそうです。そういったときには警報音も聞こえなくなるので、目で警告を検知できるパトランプが備え付けられていました。

管理事務所で建物全体の管理を行う

管理事務所は石狩DCスタッフの方が詰めておられる場所です。
巨大なモニターがあり、データセンター全体の稼働状況を把握することができます。
PUEという数値がありますが、これはデータセンターの稼働効率を表す指標です。
1に近づくほど(小さいほど)良いとされています。
東京や大阪など都市型のデータセンターではPUE値が2〜3になることもあるとのことですが、石狩DCでは年間平均で1.2、外部の空気を効率的に取り込める季節では1.1を下回ります。
Googleやfacebookのデータセンターも1.1付近の数値だそうなので、まさに世界と戦える設備であるということが分かります。
ちなみにこの数値は、
データセンター全体の消費電力」 ÷ 「データセンター内のIT機器の消費電力」で算出した値なので、1.0を下回ることはありませんが、1.0に近づくほど
空調などIT以外のものに余計な電力を使っていない効率的なデータセンター
ということになります。

サーバ室はデータセンターの本丸

発電機や電気室などがあった1Fの見学を終え、いよいよサーバ室がある2Fに入りました。
黒くてかっこいいサーバラックが整然と並べられています。

1号棟のA、B、Cのゾーンはそれぞれ違う冷却方式を採用しています。
Aゾーン壁吹出方式。横の壁から冷気を取り込み、天井へ熱を逃します。

Bゾーン天井吹出方式。通路上の天井から出る冷気は、サーバ内を通ってラックの上の天井へ熱を逃します。

Cゾーンホットアイルコンテインメント方式。天井から冷気を出すのは天井吹出方式と同じですが、熱をラックの真上から逃すのではなく、ラックを挟んだ反対側の通路(ホットアイル)に逃し、天井に戻します。

これらの冷却方式を比較検証した結果、ホットアイルコンテインメント方式がもっとも効率が良かったそうで、現在構築中の2号棟ではこの方式を採用しています。

さくらインターネットのプレゼンテーションを聞く

1号棟の見学を終えたあと、会議室に戻ってさくらインターネット研究所 鷲北さんのお話を聞きました。

石狩DCの開所の時期に超ハードなスケジュールをこなしたことや、VPSやクラウドに関する裏話などを語っていただきました。
さくらインターネット田中社長と 株式会社はてなの田中CTOによる「田中x田中」対談は、2014年のIT業界のトレンドや、リモートワークなどの働き方について意見を聞くことができました。

1日目の石狩DCでのすべてのプログラムを終え、札幌へ向かいます。

懇親会

札幌での懇親会は結婚式場にも使われるというホテルの一室で行われました。
LT(ライトニングトーク)大会は想定を上回る18人の登壇者がおり、準備していた参加賞が足りなくなるというハプニングもありました。美味しい料理も振る舞われながら楽しい時間を過ごしました。

2次会

すすきのの居酒屋へ移動して2次会です。いったんは1次会で解散して自由行動となったのですが、2次会はほとんどの人が参加していたようです。
24時近くまで騒いだあと心も体も疲れきってホテルに戻りました。

2日目もまだまだ見学するよ!

2日目も盛りだくさんの内容です。

札幌から石狩DCに向かう途中で、 石狩開発株式会社の高島さんと浜田さんにバスに乗り込んでもらい周辺の案内をしていただきました。
石狩DCも存在する石狩湾新港エリアの案内をしていただいたのですが、個人的にはこの案内がすごくしびれました。
バスから降りずバス車内から眺めるだけだったのですが、普段は一般人が入れない管理区域にもバスが入り見学させていただき、また地域内にある風力発電所変電所海底線中継所などマニアックなスポットにも立ち寄りました。
車窓越しに広がる様々な建物や施設の解説を、よどみなく流れるように話し、ご自身の思い出のエピソードも交えて語られる様は、1つの物語を聞いているようでとても楽しく観光できました。
私達は石狩DC目的で訪問しているとはいえ、物流やエネルギーなども含めた生産・中継拠点としての石狩新港地域をマクロな視点で実感できて、社会見学としてとても楽しめるものでした。

KDDI石狩海底線中継所は、上記右下の写真です。海底ケーブルをここで陸揚げしています。

石狩湾新港エリアツアーを終えて石狩DCに到着後、さくらインターネット基板戦略部の宍戸さんによるデータセンターの詳細な解説を聞きました。
データセンターというものは、サーバの品質や能力だけを考えればいいのではなく、電力、空調、ヒト、コスト、災害対応、拡張性、導線などあらゆることを考えないと作れないことを痛感しました。マネしようと思っても、このノウハウは一朝一夕でマネできるものではありません。
石狩DCはテクノロジーの塊であるだけでなく、ノウハウの結晶でもありました。

そして再びDC内見学ツアーです。
1日目の見学で残していた1号棟のMDF室(回線引き込み室)を見学しました。NTTKDDIなどの回線が引き込まれていますが、それぞれ別々の経路で引きこまれているので、すべての回線が一度に切断されてしまうような事故が起こる確率を大幅に減らすことができるそうです。

新しく稼働し始めた2号棟へ

続いて、2013年12月にオープンした2号棟の見学です。去年の石狩DCツアーの時点ではまだ2号棟はオープンしていなかったので、2号棟が実際に稼働している姿を見ることが出来るのは今回の石狩DCツアーが初めてということになります。

2号棟では、1号棟の建設や運用で得たノウハウをふんだんに生かし、1号棟よりも効率的に運用するための工夫がこらされています。
例えば1つあたりのサーバラックの幅は、1号棟のものが700mmであるのに対し、2号棟のラックは600mmです。
これは1号棟を運用した経験で、電力や冷却能力にまだ余裕があることが分かったので、もっとサーバの集積度を上げても運用可能との判断からです。
ラックが省スペースになり、1フロアに多くのサーバを置けるようになりました。

2号棟はまだすべての区画が埋まっておらず、余裕いっぱいです。
まだ何も置かれていないこの区画は来年にラックが置かれ整備されるようになるだろうとのことでした。

リラックスできすぎる休憩室

蛇足ですが休憩室も見学しました。
小上がりの畳の間がとても居心地よさそうでした。
夏の間は都会の灼熱地獄を避けて、 こんなところで仕事したいですね!

以上、2日間にわたる石狩DCツアーのレポートでした。

冒頭にも書きましたが、このツアーは石狩DCの見学だけでなく、好奇心や探究心をくすぐるポイントがいくつもあり、また、参加者をもてなそうとするスタッフの意気込みが強烈に感じられて、参加者としてはとても嬉しかったと同時に、かえって恐縮するほどのツアーでした。
貴重な体験をさせてもらいました。どうもありがとうございました。

もっと詳しく石狩DCのことを知りたい方へ

以下に詳しい解説がありますのであわせてご覧ください。

さくらのナレッジに掲載している、昨年(第2回)の体験レポートです。

参加者のブログなど

随時追加していきます。