第4回さくら石狩DC見学ツアーはドキドキワクワクが連続する感動体験でした

2015年11月7日〜8日の一泊二日で行われた、「第4回さくら石狩DC見学ツアー~さくらの夕べin石狩~」のレポートです。

さくらインターネットの石狩データセンター(石狩DC)は2011年の開所以来、一般の方々を対象にしたデータセンター見学ツアーを毎年開催しており、今回で4回目となります。

大阪、東京、千歳の3箇所から出発するプランがあり、合計30名が参加しました。
私も一般参加者として、大阪から参加させていただきました。
さくらインターネットのサービスを使っていなくても、IT関係の仕事に従事していなくても誰でも参加できるのですが、毎年定員を上回る多くの参加申し込みがあり、抽選により参加者が選ばれています。運良く選ばれた人のみが参加できる、とてもプレミアム感があるツアーになっています。

このツアーは「石狩DC見学ツアー」と名付けられていますが、ただのDC見学ツアーではありませんでした。
石狩DCの最先端の設備に触れ、普段は入れないところにも立ち入ることができるので、テクノロジー好きな方にはそれだけでワクワクし感動する体験となるでしょう。しかしこのツアーの醍醐味はそれだけではありません。
さくらインターネットのサービスを生み、支えている従業員の方と直接言葉を交わし、バスの移動や食事までも一緒に過ごすことで、この会社の知られざる一面を知ることができます。
それは、カタログに載っている価格やスペックだけでは分からないことです。サービスを支えている人の姿を身近に見ることで、サプライヤーとカスタマーの関係を超えた、友情のようなものが芽生えた気がしました。
さらにこのツアーは、石狩DCだけではなく北海道や石狩地域のことをふんだんに楽しんでもらうための工夫が盛り込まれていました。北海道の海の幸や名物などを堪能できたり、石狩DCがある石狩湾新港地域のガイドも含まれた、北海道・石狩まるごと体験ができるツアーでした。


ツアーのタイムテーブルとみどころ

1日目 新千歳空港に集合、石狩DCへ

空路や陸路それぞれのルートで大阪・東京、北海道から、参加者が新千歳空港に集合し、
ここからバスで1時間半ほど乗車して石狩DCへ向かいます。

石狩の位置

バスは沿岸バス社の萌えっ子仕様バスです。ふだんは定期便の高速バスとして利用されていますが、今回のツアーのために貸切用として特別に出動していただきました。

石狩DCに到着すると、石狩市のゆるキャラ「さけ子」が迎えてくれました。入館手続きを済ませ中に入ります。

さっそく昼食です。カニやウニ、イクラがのった海鮮丼(石狩丼)をいただきました。北海道サイコーです。

午後からはいよいよ石狩DCの建物の中を見学します。さくらインターネット代表の田中さんや、石狩DC所長の宮下さんにツアーの解説をしてもらいながら館内の各施設を見学します。
石狩DCには現在1号棟と2号棟があり、ツアー初日は1号棟を見学しました。3号棟は現在建設中で、2017年春ごろに利用開始されるそうです。

冷却用の水を作る熱源機械室

データセンターといえばまっ先に思い浮かぶのはラックに収納されたサーバー設備ですが、その前にそれらサーバーの安定稼働を支えるインフラ設備を見学します。
熱源機械室は、サーバー空調のための水を作ります。
ただし、北海道石狩地方はもともと涼しい地方なので、この冷房機を利用する機会はあまり無いそうです。「インバーターターボ冷凍機」と書いてありましたが名前がかっこいいですね。

高圧電気室

電力会社から石狩DCへ供給される電圧は66,000Vですが、サーバールームに供給する電圧400Vに下げるために特別高圧電気室高圧電気室にて電圧を降下させます。高圧電気室に入ると、かすかに「ブーン」という何かが動いている音がします。部屋の中もほんのり暖かいです。万が一の火災のために消火設備が設けられていますが、水で消化するとショートして危険なので、水ではなく窒素による消火設備を備えています。
この消火設備が煙を検知する精度は高く、データセンター敷地外の野焼きの煙が風でDC室内に入ってくるだけで検知して警報が鳴るとのことです。

外部フィルター、外気取り込み口

建物の外に出て、外気を中にとりこむためのフィルターを見学しました。
北海道の冷涼な空気をここから中にとりこみ、湿度や気温を調整してサーバールームへ送り込みます。
壁側に設置されているフィルターで、防塵除塩をしているそうです。

発電機室

不慮の停電にそなえて、DC内に発電機を装備しています。東京などの都市型データセンターでは省スペースで騒音が少ないガスタービン発電機を採用しているケースが多いそうです。しかし周囲に民家が少なく、スペースも贅沢にとれる石狩DCでは、ランニングコストが安く設置が簡単なディーゼル発電機を採用しています。48時間連続稼働できるそうです。

管理事務所

ここで建物全体の管理を行っています。現在の建物の稼働状況がどうなっているかがモニタで分かりやすく表示されています。PUEという指標がありますが、これは設備の効率性を示す数字で、1に近づくほど良いとされており、石狩DCでは1.10付近の値になります。一般的なデータセンターでは2.0以上になることもあるので、石狩DCはかなりエネルギー効率が良いデータセンターということになります。北海道の冷涼な自然外気を冷却に使えることがPUEの数値に大きく貢献しています。

いよいよサーバー室へ

1階の見学を終え、2階のサーバールームへ入ります。第1棟ではサーバー室は5つのゾーン(A〜E)に分けられており、さくらのサービスはそのうちA〜Cが使われています。
ゾーン区画ごとにサーバーの冷却方法が異なっています。石狩DC建設後、最初に稼働し始めたAゾーンの冷却方式は「壁吹出方式」ですが、その後に整備したBゾーンではさらに良い冷却方式を試すなどして、より効率の良い方法を絶えず模索しています。

1号棟Aゾーン

最初に見学したAゾーンは側面の壁から冷却用空気を取り込む「壁吹出方式」です。壁側にファンがいくつも並んでいるのが確認できます。
また、このゾーンは最初に構築が始まった区画ということもあり、配線の取り回しなどで試行の跡が見えます。

1号棟Bゾーン

Bゾーンは「天井吹出方式」を採用しています。これは、通路上の天井から冷却空気を出し、サーバーの真上に暖かい空気を戻す方式です。サーバーラックの上部に、温められた空気を戻すための銀色の筒が見えますが、これはダンボールで出来ています。ダンボールは低コストで優れた断熱材だそうです。

1号棟Cゾーン

Cゾーンホットアイルコンテインメント方式。天井から冷気を出すのは天井吹出方式と同じですが、熱をラックの真上から逃すのではなく、ラックを挟んだ反対側の通路(ホットアイル)に逃し、天井に戻します。


1号棟の見学を終えたあとは、会議室に戻ってプレゼンテーションを聞きます。
北海道で働くことについて」や、新しく増築する石狩DC3号棟についてのお話を聴きました。
この部分は詳細を別記事にまとめています。以下をご覧ください。
北海道で働くには?クリエイティブな仕事はできる?石狩DCツアーでの対談から

見学の行程をひととおり終えた17時すぎにはすっかり陽が落ちていました。バスに乗って札幌市内の懇親会会場へ向かいます。

懇親会で北海道の味覚を堪能

北海道の幸がふんだんに盛り込まれたビュッフェ形式の懇親会は、参加者とさくらスタッフの方が一同に会し和やかに交流がすすみました。ライトニングトーク(LT)大会では十数人の方のエントリがあり、盛り上がりました。
LTの様子は、先程紹介した別記事にて一部を紹介しています。

2日目は石狩湾の見学と石狩DC2号棟、超電導施設まで!

2日目は朝8時に札幌市内のホテルを出発し、最初にデータセンターが立地している石狩湾新港地域のバス観光をしました。
石狩湾新港地域のことを知り尽くす石狩開発株式会社の高島さんと浜田さんが、私達が乗る萌っ子ツアーバスに同乗してバスガイドをしながら約1時間半のバスツアーを楽しみました。

石狩開発株式会社の高島さん

建設中のLNGタンクや風力発電施設を見学

今回のDCツアーで初めての紹介となる、超電導施設

さくらインターネットが建設した太陽光発電所から、500m離れた距離にある石狩DCへの超電導直流送電が今年開始されました。それが今回のツアーの新しい見学ポイントとして盛り込まれました。

それに加えて、ツアー1日目の時点で要望が多かった、中部大学の山口教授を中心に研究を進めている超電導実験施設の見学もできることになりました。
ここでは、建物内にある超電導のための冷却装置や、建物の外に伸びている超電導ケーブルを実際に見せてもらうことができました。
ここに設置されている500mの超電導送電ケーブルは世界最長だそうです。最先端の実験設備の見学を特別に許可してくださり貴重な体験ができました。
そしてここで得られたノウハウを、太陽光発電所から石狩DCへの送電手段としてさくらインターネットで試用したということで、夢の技術だった超電導がすでに実用に近づいていることを知り感銘を受けました。

超電導実験施設の説明をする山口教授。緑のパイプが超電導ケーブル。

ケーブルは実験施設の外に向かって500m伸びています。この長さが世界最長だそうです。

太陽光発電施設の説明をする田中さん。ここから石狩DCまでの500mを、地下に埋設した超電導ケーブルで送電する実験が行われました。

参考サイト

データセンターへの超電導送電を開始 さくらインターネットプレスリリース
超電導 送電距離500メートルに 中部大が研究成果報告|中日新聞

石狩湾新港地域バスツアーを終えたあとは石狩DCに戻り、館内ツアーの続きを楽しみました。

MDF室(回線引き込み室)

建物外部からNTTKDDIなどの回線が引き込まれる部屋がMDF室です。それぞれの回線は別々の経路を通って引きこまれているので、すべての回線が一度に切断されてしまうような事故が起こる確率はかなり低いそうです。

2号棟の見学

石狩DCは現在1号棟と2号棟が存在し、双方ともほぼ同じ区画や設備構成になっていますが、1号棟での運用経験を活かした2号棟は、効率を上げる工夫が随所に見られます。
例えば、ゾーンとゾーンの間の扉は自動ドアにして段差を無くし、台車を使って機器搬入をしやすくしていたり、ラックの扉を取り外ししやすいものに変えていたり、空調のキャパシティに余裕があることからラックの集積度をあげていたりしています。

より集積度が高まった2号棟

自動ドアになって機器の搬入が楽になりました。ラックの幅は少しスリムになり集積度があがっています。

1号棟はほぼサーバーで埋まっていますが、2号棟のフロアはまだ余裕があります。一部のゾーンはまだ工事中でした。

休憩室

休憩室には畳の間があり、外の景色を眺めながらリラックスできるようになっています。
お菓子やジュースの在庫も豊富で、かなり居心地が良さそうです。

地方へ向けた、さくらのコミュニティ活動について

DC内見学を終えたあとの座談会では、今年からさくらインターネットが取り組んでいる、地域コミュニティを盛り上げるための活動が語られました。

さくらインターネットのユーザーコミュニティ「さくらクラブ」が今年立ち上がりました。6月に鹿児島で最初のさくらクラブ主催のイベント「スタートアップのお祭り startuphack Kagoshima」が行われ、起業意欲にあふれた多くの方が集まりたいへん盛り上がりました。

詳しくはこちらのレポート記事をご覧ください。
鹿児島のスタートアップがアツい! - 「熱量」の高いさくらインターネットのコミュニティが発足 「さくらクラブ」とは? | マイナビニュース

また、鹿児島にさくらハウス という地域のコミュニティ活動を支援するイベントスペースを作り、今後も地域のコミュニティを盛り上げるべく運営を継続支援するそうです。

そんなさくらクラブの今後のイベントはこちらで確認できます。
さくらクラブ(総合) | Doorkeeper

なごり惜しい最後のお別れ

楽しかった見学ツアーはあっという間に過ぎ、石狩DCを去らなければならない時間になりました。バスが見えなくなるまでスタッフの方に何度も見送っていただきました。「また会おうね」そんな気持ちを心に秘めつつ、帰路につきました。すてきな人がいるデータセンターでした。

以上が2日間に渡る石狩DC見学ツアーのレポートになります。
石狩DCだけでなく、周辺施設や北海道を堪能できる機会がいくつもあり、朝から晩までどっぷり楽しめたツアーでした。
このようなデータセンター内部の見学というのは滅多にできない体験ですし、あまり知識が無い方でも十分楽しめるものとなっておりますので、次回のツアー参加者募集があった時には、あなたも応募してみてはいかがでしょうか?

ツアー中のプレゼンテーションやライトニングトークのレポートは別記事にまとめていますので、よろしければ続けてご覧ください。
北海道で働くには?クリエイティブな仕事はできる?石狩DCツアーでの対談から

もっと詳しく石狩DCのことを知りたい方へ

以下に詳しい解説がありますのであわせてご覧ください。

さくらのナレッジに掲載している、昨年(第3回)と一昨年(第2回)の体験レポートです。

参加者の方のブログ

今回のツアーに参加された方のブログを紹介します。それぞれの視点で感じた石狩DCツアーが書かれており興味深いものとなっております。
リンクは随時追加していきます。