さくらのクラウドでMylogStarを使ってクライアントの操作ログの収集と利活用(5) 操作ログから掴むメンタルヘルスのヒント
これまでの連載は「さくらのクラウド」上でMylogStar環境を構築し、「勤怠管理」を観点にMylogStarで取得できる「操作ログ」の利活用をMylogStarの機能で解説しました。
企業側としては社員のメンタルヘルスにも気を使うことが必要ですが、「テレワーク」や「在宅勤務」の普及によって直接顔色を見ることや「ザッソウ」のようなコミュニケーションが取りづらくなっている状況も増えているかと思います。
今回で最終回となりますが、「メンタルヘルス」についてMylogStarの「操作ログ」が利活用できないか、ヒントとなる事例を紹介します。
メンタルヘルス不調への気づき
職場でのメンタルヘルスケアで重要なものは「ラインによるケア」(上司による部下へのケア)になります。上司が部下のメンタルヘルス不調の気づきとなるものは「いつもと違う様子」になりますが、この「いつもと違う様子」は同じオフィス内で仕事を一緒にしていると気が付きやすいと思います。
「顔色が悪い」「言動が不自然」「作業のミスが増える」などがあれば、上司としても「少し変だな・・・」と思って色々とケアする方法を考えます。
「いつもと違う様子」が見えない
「テレワーク」や「在宅勤務」の普及により、オフィスで仕事を一緒にしていたときと違い、部下の顔色が見えづらくなりました。ちょっとした「雑談」も減った状況では「いつもと違う様子」が見えづらく、気がついたときには手遅れで休職や退職という状況になる可能性も高くなります。
MylogStarは利用ユーザーの様々な操作を「ログ」として記録しますが、一見無機質な「ログ」にも利用ユーザーの「いつもと違う様子」が見え隠れすることがあります。
ネガティブな思考や行動
もし自分がメンタルヘルス不調になったらどうするだろう・・・と考えてみると、やはり「ネガティブな思考や行動」に動くのでは?と思います。
勤怠の変化(欠勤や休日勤務、超過勤務の増加など)は前回の「勤怠管理」でフォローできる部分がありますので、それ以外だと・・・
- インターネットで「転職、休職や退職の方法」、「病気に関わるキーワード」を検索する。
- 「休職届」や「退職届」を作成する。
- 仕事に手がつかず、ミスも増えて効率が下がる。
という感じでしょうか。
まだ他にも「メールで知り合いに悩みを相談する」など色々あるかと思いますが、今回はこれらの「ネガティブな思考や行動」をMylogStarでフォローできるのか検討してみたいと思います。
ネガティブなキーワードのWeb検索
MylogStarでは利用ユーザーがアクセスしたWebサイトのURLやページタイトルなどを「ログ」として記録できます。
検索結果からアクセスされたサイトの「ページタイトル」はネガティブなキーワードの検索に有効だと思いますので、この検索を試してみます。
「MylogStar Server」上からWebブラウザを起動して「MylogStar Console」(http://localhost/mylogstar/)にアクセスし、特権ユーザー(Admin)でログインします。
「ログ表示」から「Webログ」をクリックします。
「Webログ」の「絞り込み条件」で「詳細検索」をクリックします。
「検索期間」では「14日前から」を選択し、「ページタイトル」に「転職 退職 休職 病気」(半角スペースで区切る)と入力して、ドロップダウンリストから「いずれかを含む」を選択します。選択と入力が終わったら「検索」をクリックします。
いくつか検索結果として抽出できましたが、ページタイトルを見る限りではWeb上のニュースを見ていただけなので大きな問題はなさそうです。
気になる結果がある場合はURLリンクをクリックすると、その時にアクセスしていたWebサイトを開けます。
今回は紹介しませんが、検索画面からキーワードを入れて毎回検索するのは大変なので、「検索条件の保存」やその保存した「検索条件」を使った定期的なCSV出力、該当するログに「アラートタグ」を付けてメールでシステム管理者に検索結果の情報を送信するのも可能です。
「休職届」や「退職届」の作成
休職届や退職届などは各企業で用意されたドキュメントがあるかもしれませんが、自分で作成した場合でも恐らくそのファイル名には「退職届」や「休職届」のような文字列が含まれると思います。
先程の「Webログ」の検索と同じように「ファイルログ」の「ファイル名」で検索することで、未然に退職や休職を防ぐことができるかもしれません。
仕事のミスの増加
こちらも業種業態によって異なるかと思いますが、例えば何らかのドキュメントをコンピューターで作成する仕事であれば「キー入力のミス」の増加が考えられます。
MylogStarでは「アプリケーションログ」の表示項目に「ミスタイプ数」があります。これは「アプリケーション内でのキー入力ミスの回数」となり「文字入力が行われた後BackSpaceキーやDeleteキーが押下されたカウント」が表示されます。
この数値の確認や比較をすることで、「普段よりもキー入力ミスが多いので疲れているのかな・・・」と推測できるかもしれません。
実際に「アプリケーションログ」の「ミスタイプ数」を確認してみましょう。ドキュメント作成でのキー入力ミスを想定して「Microsoft Word」(winword.exe)を抽出してみます。
「ログ表示」から「アプリケーションログ」をクリックします。
「ミスタイプ数」は既定では表示されていませんので表示対象として追加します。
「表示項目」をクリックします。
右側の列にある「ミスタイプ数」の「+」をクリックします。
「ミスタイプ数」が左側の列に移動するので任意の順番にドラッグして移動し、「送信」をクリックします。
「アプリケーション」ログに「ミスタイプ数」の表示項目が追加されました。
次に「アプリケーションログ」から「アプリケーション名」が「winword.exe」のログを抽出しますので、「詳細検索」をクリックします。
「検索期間」では「14日前から」を選択し、「アプリケーション名」に「winword.exe」と入力し、ドロップダウンリストから「いずれかに一致する」を選択します。選択と入力が終わったら「検索」をクリックします。
いくつか検索結果として抽出できました。「アクティブ時間」に対して「ミスタイプ数」が多いものが要注意ですが・・・16分程度のドキュメント作成で60回もキー入力ミスをしている人がいますね。作業時間も超過勤務時間帯なので注意が必要です。
MylogStarでは他にも「マウス移動距離」や各キー別の「キーボード打鍵数」、「マウスの右/左クリック数」などの情報も取得できます。
業務としてドキュメント作成が多いはずなのに、「キーボード打鍵数」が少なく「マウス移動距離」が異常に多い場合は「仕事をしているように見せかけて、ひたすらWindows上でマウスをクルクル動かしているだけ」かもしれません。それはそれでメンタル的な問題がありそうですが・・・。
おわりに
最終回として「メンタルヘルス」を観点にMylogStarで取得できる「操作ログ」で利活用できないか考察してみました。
メンタルヘルス不調になる悩みや疲労は人それぞれで、一緒にオフィス内で仕事をしていてもなかなか「いつもと違う様子」に気づくのは難しいと思いますが、今回いくつかの事例として紹介した内容を参考に「ログ」を利活用して少しでもメンタルヘルス不調の防止のヒントになれば嬉しいです。
複数回の連載にわたって「機密情報の情報漏えい対策」「勤怠管理」「メンタルヘルス」について解説しましたが、「ログ」は他の目的にも使える「価値のあるビッグデータ」です。
単純にMylogStarを導入するだけでは、「セキュリティ事故が発生した際の証跡確認」でしか使われず、普段何もなければ「MylogStar Console」にも触れることはないので、とても「もったいない」と思います。
必要な情報を定常的に抜き出してそれぞれの企業で利活用することで、より付加価値の高いアプリケーションに昇華しますので、是非皆さんには「操作ログ」製品に興味を持っていただき社内に導入してもらえればと思います。