はじめに

2020年度より開始される小学校プログラミング教育。本連載では、「自立できるプログラミング教育」を目指し、自治体・学校への支援を実施しているさくらインターネットの取り組みについてご紹介しています。第8回となる今回は、本プロジェクトの2018年度の振り返りと2019年度の取り組みについてお送りします。

重大発表

本プロジェクトは「石狩市への小学校プログラミング教育支援プロジェクト」という名称で、2017年度より活動をしておりましたが、このたび以下のようなスコープの変更をおこなうことになりました。

  • 従来通り石狩市への支援をメインとしますが、北海道全体への支援も視野に入れることとしました
  • 従来通り小学校への支援メインとしますが、中学校や高等学校とのつながり・連携を考え取り組んでいくことにしました

スコープの変更に伴い、プロジェクト名も「さくらの学校支援プロジェクト」に変更することになりました。

キーマンに訊く!

本プロジェクトの2018年度の振り返りと2019年度の取り組みについて、シニアプロデューサーの朝倉恵とプロデューサーの前佛雅人にインタビューをおこないましたので、その様子をお届けします。

── 2018年度の振り返りをお願いします。
朝倉:2018年度は3年計画(2017年度-2019年度)の2年目ということになります。1年目の2017年度はプログラミング教育を一部の先生方に知ってもらい、予想以上に興味をもっていただくことができました。2年目の2018年度はプログラミング教育を知った先生方が中心となって、各学校で自分たちが考えた指導案を元に実践しました。その結果石狩市内13校すべての小学校で実践事例を作ることができ、石狩市教育委員会が実践事例集というかたちで取りまとめ、発表会も開催されました。小学校個別の動きとして、来年度のカリキュラムにプログラミングを入れるための相談が1月頃から始まっています。それも今年度実践事例を作った先生とは別の先生から相談が来ています。(石狩市では)各学校でプログラミング教育をカリキュラムに入れることにすごく前向きで、まず何とかしてやってみようという思いが強いと思います。

また、中学校での実践を石狩市教育委員会の方に見ていただいたのがきっかけで、指針(どの段階で何ができるようになっているという前提)がないと、全部の中学校で新指導要領で求められるプログラミング教育を実施するのが難しいということを再認識しました。そこで実践事例集に年間指導計画の例示を加えた「石狩版ガイドライン」が具体的にイメージできるようになり、発行に向けたはずみがつきました。石狩市教育委員会による石狩市版プログラミング教育ガイドラインの作成と、石狩市の先生方による全校での実践、この2つは非常に大きな成果だったのではないかと思います。石狩市の先生方と石狩市教育委員会が「自分たちの足で歩き始めた」のが今年度で、来年度はさらに前に進んでいくことになると見ています。

また、今年の成果で大きいところとして、私たちのプロジェクトがIT業界に対して何をしていかなければいけないのかがわかった1年だったと思います。広報チームが機能し始めて、IT業界といいますか、エンジニアに向けたいろいろな発信ができるようになったことと、私たちがどんな情報を発信していかなければいけないのかという役割を見いだせるようになったのがすごく大きな成果だったと思います。

── 広報チームの2018年度の振り返りをお願いします。
前佛:さくらのプログラミング教育ポータルTwitterアカウントの開設、この2つが広報として取り組んだことになります。これにより、これまではイベントに来ていただいたり、自分たちで積極的に情報を取りに行く人でないと情報が得られなかったわけですが、より気軽に情報に触れられるようになりました。

また、必要と思われる情報を選別したり、意訳したりして届けたり、今はまだできていない部分もありますが、文部科学省から出てくるオフィシャルな文書のわかりにくい部分をわかりやすくして伝えるなどの部分が成果になると考えています。

── 先日の第3回小学校プログラミング教育を考える夕べで「手引の手引」が必要だという話が出ていました。(手引:文部科学省から出ている小学校プログラミング教育の手引のこと)

朝倉:「手引の手引」が必要な状況にはなっていると思います。やむをえない面もあって、文部科学省が出している手引というのは日本全国のいろいろな小学校で使われるものなので、あまり細かいことが書けないんですね。そういった面を補完する意味で「手引の手引」に相当するようなものが必要になってくるのだと思います。

── 2019年度はプロジェクトのスコープを北海道全域に広げるという計画がありますが、そのきっかけになった想いと現在の構想を教えてください。

朝倉:きっかけになったのは、石狩市での活動を口コミや北海道内のメディアで取り上げられるなどで「自分たちのところでもやってほしい」という声がでてきたというところですね。新冠町がその先駆けになりました。支援してほしいけど、どこに相談したらいいかもわからないというところが北海道の中には多いということがあります。それ以外に北海道の中でも石狩市に近い地域、例えば千歳市や江別市などでは、教育委員会は地域にある大学に相談し、大学側が(小学校プログラミング教育支援の)ノウハウがないということで、さくらインターネットの出前授業を見に来てくれて、それを各地域に持ち帰って参考にしようとしています。

あとは石狩市の先生方も不安に思っています。石狩市ではプログラミング教育ができる、やろうやろうという雰囲気になっているけれども、他の地域に転勤で行った場合に「状況が違うかもしれない」という恐れを抱いている先生が実際にいたりするんですね。石狩市は今すごくうまくいっているけれども、石狩市だけうまくいけばいいかというと、そうはいかないなというのを感じ取ったというのがきっかけですね。

あとこれはよくばりな考え方かもしれませんけれども、せっかく石狩市の先生方が一生懸命やってくれているので、そのことを伝えたいなと思います。他の地域にお手本にしてほしいと思っています。石狩市の先生方は自分たちのやっていることを伝えることで、明文化していくとか、他から意見をもらってブラッシュアップしていくことができる場を作りたいと思っています。

構想についてですが、基本的には「(北海道におけるプログラミング教育支援の)窓口」というように認識してもらえるようになっていきたいと考えています。北海道内で公教育に対するプログラミング教育支援をしている組織と横のつながりを持った連携組織を作り、ノウハウを集めて皆で利用できるようにしたいと考えています。これからプログラミング教育に触れる人が安心して相談できる窓口というものをつくりたいと思っています。プログラミング教育というキーワードで「ここにとりあえず連絡してみよう」と思ってもらえるようにしたいです。

── 広報チームの2019年度の計画を教えてください。
前佛:ひとまずは、ネット上に散らばっている情報の交通整理が必要だと思います。(プログラミング教育に関して)一から説明しなくても、誰もが(その意義と概要を)理解できる状態を作りたいと思います。さくらインターネットは(学校でもない、行政でもない、特定の業者・サービスでもない)中立な立場で、情報をかみ砕いて届けていきたいです。

「誰に対して情報を届けていくのか」という点に関しては、さくらインターネットの利用者に「さくらの取り組み」を知ってもらうことと、先生方や一般の方に「(学校での)プログラミング教育」について知ってもらうことを考えています。

また、プログラミング教育の現場で扱われることが多い教材として「minecraft」「micro:bit」「scratch」の3つの動向やニュースについても追っていき、届けていければと考えています。

── 東京とそれ以外の地域での情報格差というのはあるものなのでしょうか。

朝倉:生で有識者に会って情報を得るということは北海道だと難しくはなります。特に北海道の場合は、情報があったとしても札幌に集中してしまうということもあって、北海道内の各地で、有識者を呼んでイベントを開催したいと思っています。私が情報を持ってきて間接的に伝えるだけでなく、この分野の有識者をお招きして、北海道内の先生方、教育委員会の方に生でお話を聞いていただけたら、もっと本気で取り組んでいただけるようになるのではないか…と考えています。

── ありがとうございました。

まとめ

2017年2月に発足した「石狩市への小学校プログラミング教育支援プロジェクト」は、2年間の活動を経て、「2020年のプログラミング教育必須化までに、石狩市内の全小学校の授業で、プログラミング教育が行えるようにする」という目標達成に大きく近づくことができました。

この取り組みを石狩市だけでなく、北海道に広げていくことが、石狩市の先生方のためになると考え、このたび「さくらの学校支援プロジェクト」とプロジェクト名を改め、スコープを拡大することとなりました。

本プロジェクトの取り組みによって、北海道の多くの地域でプログラミング教育への準備が進むこと、また、学校の先生方や各地域の教育委員会の方、またIT業界・ITエンジニアに対しても、「公教育におけるプログラミング教育」について、多くの生の情報をお届けできるよう、引き続き励んでいく次第です。