さくらインターネットでは、小学校でのプログラミング教育が必須となる動きに合わせて、2016年からプログラミング教育の支援活動を行っており、現在は「さくらの学校支援プロジェクト」として活動しています。その活動をお伝えするために、7月8日(水)の夜に「さくらの夕べオンライン 小学校プログラミング教育ナイト」を行いました。イベントでは同プロジェクトのメンバーから3人が登壇し、各自の取り組みの紹介や、それを通して考えたことなどをお話ししました。イベントの模様をレポートします。

小学校プログラミング教育 さくらインターネットができたこと、できないこと

最初の発表者は、さくらの学校支援プロジェクトのシニアプロデューサーを務めている朝倉恵です。朝倉はかつて幼稚園の先生をしていたという経歴を活かし、北海道石狩市(当社の石狩データセンターの所在地)におけるプログラミング教育支援を担当しています。

さくらの学校支援プロジェクトの目標は、当社が情報活用能力育成に対する支援や相談を受けられるようにすることにより、石狩市や北海道への地域貢献につなげるというものです。最終形は学校の先生がプログラミング教育を実施することですが、それに至る過程として「先生に広める」「先生と考える」「先生が実施」「地域で続ける」の4つの段階があると考え、それを約3年間かけて実践してきました。

具体的には、まず「先生に広める」活動として、石狩市内の小学校への出前授業や「こどもプログラミング通信」の発行を行いました(出前授業についてはさくナレでも「『出前授業』を覗いてみよう」という記事で詳しく紹介しています)。「先生と考える」は、小学校の先生方による研究会に参加して授業の内容などを一緒に考え、研修を行いました。その成果として、小学校の先生が主導する形での授業、つまり「先生が実施」も行いました。

一方、当社ではできない、学校側でやってもらわないといけないこともあります。教員が主体となって教材やカリキュラムを研究したり、授業や研修の時間を確保するといった「教科の中でプログラミング教育を深める」こと、プログラミング教育に使用するICT機器を学校側で整備する「プログラミング教育ができる環境を整える」こと、石狩市だけでなく全国の教員、さらに教員を目指す学生もプログラミング教育を学べるようにする「教員全員がプログラミング教育をできるようにする」ことです。

最後に、この活動において大切なこととして、プログラミング教育には複雑で解決の難しい問題がたくさんあると認識すること、観察していると課題解決の適任者はいるものなので、その方とつながり協力し合うことを挙げ、子どものために一番良いことは何かを最優先で考えていきたいと述べました。

この発表についてさらに詳しく知りたい方は、朝倉の発表資料をご覧ください。



改めてプログラミング教育を考える

2番目に発表したのは、大阪府門真市での支援活動を担当している芳浦卓司で、「なぜプログラミング教育が必要なのか」について自身が考えていることを話しました。

はじめに、新型コロナウイルスの影響で高校野球の全国大会が中止になったことを例に挙げ、「高校球児は甲子園に行けなくなりましたが、野球をする目的は『甲子園に行くこと』ではないはずです。ここで軌道修正し新たな目標を設置するという問題分析能力や解決能力が必要で、それがプログラミング的思考です」と述べました。そして、プログラミング教育とはデジタル機器の使い方を教えることではなく、プログラミング的思考を身につけることであるという考えを示しました。

次に、プログラミング教育に関する世界と日本の状況を知る資料として、まずOECD加盟国(37か国)の生徒(15歳児)の学習達成度調査を紹介しました。それによると、日本の生徒は数学・科学リテラシーは最高レベルですが読解力が低いという結果が出ています。また、授業でデジタル機器を使う時間は加盟国で最下位です。ところが、ゲームやチャットなどの娯楽にデジタル機器を使用する時間は、日本がダントツで1位なのです。

理科の授業でデジタル機器をどれぐらい使うかの調査結果。日本は最下位(出典:OECD生徒の学習到達度調査(2018年))

ゲームで遊ぶためにデジタル機器を使うかの調査結果。日本は1位(出典:OECD生徒の学習到達度調査(2018年))

また、教育におけるコロナウイルス対策フレームワークの資料も紹介しました。こちらの資料では、オンラインでの学習環境について生徒に尋ねた調査結果が報告されているのですが、多くの質問で日本が下位に低迷しており、最下位になってしまった設問も複数みられます。教師のスキル、教師の準備時間、サポート要員、学習プラットフォームなどが特に不足しているようです。

「教師が授業にデジタル機器を組み込むスキルを有すると思うか」という設問への回答。日本は最下位(出典:新型コロナウイルス感染症パンデミックへの教育における対策をガイドするフレームワーク)

これらの結果から浮かび上がるのは、日本の生徒はデジタル機器に慣れ親しんでいるのに、学校側(教員や機材など)が追いついていないという事象です。

芳浦はこれについて当初、学校が悪い、先生が忙しすぎる、お金がないなどと考えていたのですが、それはプログラミング的思考ではないとして考え直しました。そして、問題解決のためにはデジタル機器をもっと学校で利用することが必要で、そのためにはどうすればよいかを考えるようになりました。例えば、学校の先生はデジタル機器を積極的に利用しリテラシーを向上すること、保護者は先生や学校を信頼しトライアンドエラーをしやすい環境を作ることや家庭のネット環境を整備することなどが挙げられます。そして、エンジニアも技術だけが提供できるわけではなく、日頃からプログラミング的思考を行っていること自体が教えるべきことであるとしました。

芳浦の資料も公開されていますので、内容を詳しく知りたい方はご覧ください。



教員向け情報紙 こどもプログラミング通信 3年間の軌跡とこれから

最後のセッションは、さくらの学校支援プロジェクトで発行している「こどもプログラミング通信」について、編集長を務めている大喜多利哉(さくナレの編集部員でもあります)が発表しました。

こどもプログラミング通信は月1回発行の小学校教員向け情報紙(A4の紙1枚両面)で、2017年から発行しています。創刊の動機としては、とにかく学校の先生にプログラミング教育に関する情報が伝わっていなかったので、情報を提供しようということで始まったものです。当初はインターネットの会社らしくウェブで情報提供するつもりでしたが、「学校の先生方は紙じゃないと見ないよ」というアドバイスを受け、紙で発行することになりました。情報の受け手に合わせる形で情報提供を行ったことが功を奏して石狩市内の小学校では多くの先生方が読んでくださるようになり、「こどもプログラミング通信を読めば情報が入ってくる」という状況を作ることができました。

その後は同誌の3年間の軌跡が紹介されました。初年度にあたる2017年度は、出前授業の告知や実施報告に加え、まだプログラミング教育というもの自体が知られていなかったので、この分野の動向も紹介しました。2018年度は文部科学省から「小学校プログラミング教育の手引」が発行されたのが大きな出来事で、同誌でも数回に分けて紹介しました。2019年度にはプロジェクト名称がそれまでの「石狩市への小学校プログラミング教育支援プロジェクト」から現在のものに変更され、同誌で取り扱う内容も広がりを見せました。2020年度は門真市での配布を開始しました。最近の話題としては、GIGAスクール構想(小中学校における1人1台端末をベースとした教育環境の実現構想)に関することや、学校教育におけるICT活用に関する情報提供を行っています。

今後は、従来の紙で完結する記事だけでなく、オンラインイベントなどの動画をウェブサイトで紹介していくこともやっていきたいと考えています。

大喜多からはこどもプログラミング通信の制作工程も紹介されたのですが、印刷を伴うので締切が明確に定められています。これを毎月滞りなく遂行していく姿にプロジェクトメンバーたちの強い意志を感じました。

「こどもプログラミング通信」は、現在は紙だけでなくウェブでも見ることができます。さくらのプログラミング教育ポータルで公開していますので、関心のある方はご覧ください。また、大喜多の発表資料も公開しています。詳しく知りたい方はご参照ください。

おわりに

今回のイベントはオンラインで実施しYouTubeで配信しましたが、約70人の方にご参加いただいたようです。たくさんのご視聴ありがとうございました。イベントの動画も残っていますので、詳しく知りたい方はご覧ください。



今年度からは実際に小学校におけるプログラミング教育がスタートしています。しかし現段階では、朝倉の発表にあったような「教員全員がプログラミング教育をできるようになる」にはまだほど遠い状況です。だからこそ当社が支援できることもまだまだたくさんあるはずで、IT企業だからこそできる支援や情報発信をこれからも続けていきたいと考えています。その様子はさくらのプログラミング教育ポータルなどでご紹介していきますので、ご注目ください。

それではまた、次回のイベントでお会いしましょう!

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